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絵を扱うということ (青森市役所で出店)

青森市役所(アウガ)にて出店しました。

恒例のライブペイントもしっかり。

絵を取り扱うということは、とても繊細で、心の奥にしまい込んでいるものまで、手に触れなければいけない時があります。描いてる時は勿論、販売をしている時も。本来、損得の感情とはかけ離れている存在である絵。それに値段をつけて売るということ、お金を出して購入するということ。当人同士でしか知り得ない、感情の揺らぎによって、取引されている、と感じることがあります。

この日は、特にそれを強く感じました。絵を販売するにあたり、僕が良く聞く質問があります。「絵は好きですか?」「描かれるんですか?」

それに対して返ってくる言葉は、本当に様々です。「昔描いていました」「美大に通っていました」「美術部です」「こんな絵を自分は描いてます」「これから絵で活動したいと思ってます」「将来は絵で働きたい」「趣味ですけどね」「見るのが好きです」「下手くそです」…本当に色々。スマホで色んな作品を見せて頂くことも結構あります。

こういう返答もあるんです。「子供が、知り合いが、描いてます。」


田舎の市役所なので、いらっしゃる方はご年配の方が多かった、今回の出店でしたが、その中でお一人、ジーーっと僕の絵を見ていらっしゃるお婆さんがいました。少し様子が気になって、僕は例の質問をしたら、返ってきた言葉が「息子が描いていました。」

少しずつお話をしていくうちに、息子さんがお亡くなりになったこと、それが辛くて、お部屋にあった絵を全部燃やしてしまったこと、それが三日もかかったくらい沢山描いてらしたこと、などをお聞きしました。

「貴方みたいな漫画の絵を描いてたんです。髪がこんなに長くって。貴方の絵を見たら思い出しちゃって。」

僕はそのお話になんと答えられたのか、覚えていません。ただ、お婆さんは涙目で、僕も勝手に目が熱くなってしまって、

迷惑承知で「どうか、僕の絵を一枚、受け取って下さいませんか?プレゼント致しますから」と伝えました。僕には子供がいたことがないから、お婆さんの気持ちを絶対わかり切ることなんて無いのはわかってるけど、せっかく話してくださったことに、何か答えたかった。

けれどお婆さんは「買わせてください」と仰って、僕の作品を3枚ご購入されて、御帰りになりました。


イベントも終了間近、人もほとんどいないので、この機会に、と自分のライブペイント(と言いつつ、お客さんもいないから、その練習)に没頭していた頃、黒くてシックな装いの方が、僕の絵をじっくり見にいらっしゃいました。僕が例の質問をすると、

「親戚が描いています。(私も趣味で)」

そこで、終了時間まで…と、まったりと雑談にふけっていたのですが、突然「純粋ですね…」と僕は言われました。少し面食らってしまった僕は、その理由を聞いてみると、僕がその方の服装を「素敵ですね。」と何気なく言ったことに対して、仰ったことが分かりました。

「社会には出来て当たり前、みんなに合わせて当たり前、浮いてる人は叩く。そんな場所があって、自分が今いる場所もそこなんです。」

そんな場所では悪口や嫌味を言われることはあっても、褒めてもらえる事なんてない。「素敵」は嫌味の言葉になってしまう。

僕が慌てて、「嫌味なんかじゃないです!黒が似合うのってカッコいいなって、思ったんですよ!」と伝えると、「同性から言われる【格好いい】は一番嬉しい」と伝えてくださいました。

「どうか、そのまま純粋でいて下さい。みつきさんは、とてもしっかりしていますよ。自分が寄ってきたら絵を描く手を止めて、タオルで手をしっかり拭いて、話しかけてくれた。けれど、自分の商品の押し売りはしなかった。心がちゃんとある方だから、自信を持って下さい。」

(僕、出店中はよく話しかけるんですけど、それは商売の為というよりは、ただ単にお喋りが好きなだけなんです…)

僕みたいな漫画チックな絵を扱っていると、白い目で見られたり、小馬鹿にするような言葉をかけられることも結構ある中で、こんなに褒めてもらえたこと、しっかりしていると言って下さったことが嬉しかったです。僕は抹茶クレヨンをお礼に渡し、彼女は抹茶オレを二つ下さいました。

「自分が今いる場所みたいな中で、ふと癒しをくれる人って、こういう純粋な方なんですよね。」と、黒シックな方は御帰りになり、そして僕はいそいそと閉店の準備をはじめました。


絵を扱うということ。とても繊細で、心の奥にしまい込んでいるものまで、時に、手に触れなければいけない。だからこそ僕はこれからも、色んな場所に絵を売りにいく。

僕の絵に惹かれてやって来る方々は、どの人にも絵にまつわるドラマがある。純粋な気持ち、コンプレックス、憧れ、トラウマ、過去、未来。
僕の絵は、足りないものばかりで、やぼったい。だけど、そんな絵だからこそ、必要な人がきっといる。

きっと心を込めて描いてる絵には、全てそんな力がある。


だから29日も同じ場所で出店するぜーーーー!!!!!!!!!!遊びに来い来い来い来い来い来いこおおおお!!!!!!!!!!


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