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ほのぼのとしたイラストと刺繍を施したアート作品で女性を癒すクリエイター【にのみやなつこさん】

イラストレーターであり、刺繍作家でもあるにのみやなつこさん。ユーモアを感じさせる挿絵カットやイラストレシピ、似顔絵、4コマ漫画、ロゴマークデザインなど、クライアントの要望に応えながら25年以上フリーランスで活躍しています。その一方、刺繍を施したアクセサリーやアート作品の制作・展示・販売や手芸ワークショップも開催。かたや平面、かたや立体的な創作活動で、独自の世界観を表現します。

|至極の一言|
心の赴くままに針を動かす刺繍技法で楽しんでいます。

アート作品としても映える、鮮やかな立体の刺繍ブローチ

崎谷:イラストレーターの仕事をしながら、刺繍作品も制作されています。イラストは平面ですが、刺繍は立体であざやかな色使いが多いですね。

にのみや:イラストの仕事は「こういうものを描いてほしい」とクライアントから依頼されて描くことがほとんどなので、それとは別に自発的に、欲しいもの、身に着けたいものを作りたいなと思って刺繍を始めました。本当は私、刺繍のような細かい作業を好むタイプではないのですが、ここ10年くらいはまってしまって・・・。規則正しい編み目やシンメトリーは苦手なので、幾何学模様の「こぎん刺し」などとは違う、心の赴くままに針を動かす刺繍技法で楽しんでいます。

崎谷:なぜ刺繍というものに至ったんですか?

にのみや:なぜでしょう?(笑)。もともと刺繍を施してある洋服や小物が好きで、刺繍を見ると反射的に胸がキュン!となります。洋服を縫うのも好きでしたが、刺繍だったらテーブルの隅っこの半径20~30cmのスペースでできる。ちょこっとやって、やめて、またやるということもできるという手軽さからだと思います。

崎谷:すごく細かいし、意外と大きな作品もありますね。グッズ販売もされているんですね。

にのみや:これは「Wishing Partciles:::希望粒子:::」というシリーズです。刺繍のひと粒(フレンチノットという技法)を物質の最小単位である素粒子に見立て希望を抱いて自由に存在を広げていく様子を表現したシリーズで、次はどこへ刺すか素粒子の気持ちになって針を進めています。風呂敷&風呂敷バッグの「寅の助」さんとのコラボ販売もしています。

崎谷:1個作るのにどれくらいの時間がかかるんですか?

にのみや:集中すれば1日に1個はできますが、イラストの仕事がメインなので、そちらをきっちりやらなければいけない。刺繍はその合間に、1日30分だけは絶対やろうと決めています。刺繍をするための時間をつくるために、仕事をがんばっています。あまり大きな声では言えませんが(笑)。


ネット環境があればできる仕事でフリーになって25年以上

崎谷:ムサビ(武蔵野美術短期大学)時代はどんな学生さんでしたか?

にのみや:キャンパスは小平で、上水本町、津田塾側の玉川上水の近くで一人暮らしをしていました。大学で刺激を受けまくって、ワーッ!!と言っている間に終わってしまいました(笑)。周りは個性的でおかしな人ばかりで、「私なんか普通過ぎる…」と打ちのめされそうになるところをなんとか背伸びをして戦うような日々でしたね。

崎谷:生活デザイン学科ではどんなことを学ばれましたか?

にのみや:生活にまつわるデザインですね。当時は「女子は短大で十分でしょ」っていう時代でした。1年目は基礎的なデザイン、2年目に編集コースとプロダクトコースに分かれて学ぶのですが、当時はディスプレイをやってみたいと思ってプロダクトコースに進みました。銀座松屋のディスプレイが素晴らしくて、憧れていたんです。今思えば、編集コースに行けばよかったのにって思いますが、楽しかったですよ。当時の友達とは今も制作活動をする上で刺激を受けています。

崎谷:卒業後は就職されたんですね。

にのみや:某ホテルが母体のンテリア建築設計会社に入りました。ホテルはもちろん、前回の東京オリンピックの頃に建てられたような、麻布や赤坂、広尾あたりの外国人向けマンションの内装の入れ替えなど、インテリア事業をやっている会社でした。バブルの頃は、インテリアコーディネーター的なこと、事務仕事にお茶出しと、なんでもやりました。20代は迷走していて、たいしたことはできなかったけれど、楽しかったです。

崎谷:ご主人もクリエイターの方なんですか?

にのみや:企画営業で、販売先と製造をコーディネートするような職種ですね。古い考え方かもしれませんが、私は学校から帰宅した子どもに「おかえりなさい」を言ってあげたいと思っていました。家でできる仕事があったらなと思っていたちょうどその頃に、家庭でネットとパソコンが使われるようになり、データ納品が可能になりました。たまたま依頼してくれる会社があって、それで仕事になったという感じでした。

崎谷:イラストのお仕事ですか?

にのみや:そうです。商店やお医者さん、工務店などにニュースレターの原稿を販売する会社と取引することができて、毎月コラムに添えるカットやイラストレシピを納める仕事でした。ありがたいことに今も、20年以上続いています。ネット環境があれば、海外旅行に行っている間にも納品が可能ですから、ありがたいですよね。

崎谷:ユニークなタッチのイラストも描かれますね。

にのみや:小学校のとき、教科書の端っこに先生の似顔絵とか、クラスメイトの変な顔とかを描いて友達に見せていました。「似てる~!」と言われて喜んで。その延長ですよ(笑)。やっていることはそのまんま、変わらないですね。

崎谷:編集やライターもそうですが、イラストレーターはフリーランスを続けていく上でリスクが少ない業種ですよね。それにしても、これだけ長年続けられたのはすばらしいです。

にのみや:たまたまです!!毎月いただいたお仕事をきちんと一定のレベルを保って納品し続けることでしょうか。


被災地支援にもなるワークショップ活動を引き継ぐ

崎谷:「ぐるっとブレスレットワークショップ」というものをやっていらっしゃいますね。

にのみや:寄付していただいた毛糸から、好きなものを6本選んでぐるぐる巻いてブレスレットを作るという簡単なワークショップです。縫い目を数えたりする必要がないので、おしゃべりしながら楽しくできる。小学校低学年から、器用な子なら30分くらいでできます。参加費は状況応じて1000~1500円ですが、そのうち311円(3月11日にちなんで)を東日本大震災などの被災地支援団体などに送金させていただいています。楽しみながら、ちょっといいことができる。そもそもは2012年から「アートマルシェ神田」というギャラリーが始めた活動ですが、そのビルがなくなりできなくなるというときに私が引き継ぎました。難しくないので、私も気が楽。気張らず、のんびり、ゆっくり、ずっと続けていきたい活動です。

崎谷:にのみやさんは色が好きなんですね。ブレスレットづくりはどんなところが楽しいですか?

にのみや:選んだ毛糸によって、全体の印象も色味も全く違うものが出来上がります。作りながら、「今度はあの色を使おう」とイメージが広がって、実は2個目からがおもしろくなるんですよ!作業は単純ですが奥が深い。この技法は世界中のいろいろな民族の人たちがやっているようです。他にもアイディア次第でいろいろなものが作れそうです。

Profile
武蔵野美術短期大学生活デザイン学科卒業。インテリア建築設計会社、商品企画会社勤務を経て、1997年結婚・出産を機に退社。フリーランスのイラストレーターに。ユーモアを感じさせる女性向けのイラストや、1コマ・4コマで女性のちょっとした出来事をおもしろおかしく伝えるイラストが好評。本業の傍ら、2011年より刺繍作品の制作・展示・販売をスタート。さらに手芸ワークショップやカフェの企画・運営等にも力を入れる。多摩市在住。

HP https://nino-natsuko.wixsite.com/2016

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