瓶底眼鏡から裸眼生活になりました〜ICL手術体験記②手術に至るきっかけ・後編

    前回の記事の続き。ICL手術に至るまでの話は今回で終わりです。

「ICL手術をするか悩んでいる」と話すと、周囲から反対ばかりされる毎日。その中でひとり、背中を押してくれる人がいました。
   それが、私の母親です。
   お金もかかるし自分の身体にメスを入れるICL手術。相談したら誰よりも反対しそうなのが両親だと思うのですが、私の場合は背中を押してくれたのが母でした。
 何を隠そう、私のド近眼は母親からの遺伝です。母は私よりも視力の悪い最強度近視の人でした。60と数年の人生の若い時代を瓶底眼鏡で過ごし、コンタクトレンズが使い捨てではない煮沸消毒の時代から使っている人です。眼鏡よりもうんと視野の広がるコンタクトの恩恵を大いに受けた人であることは間違いなく、老眼が始まるとコンタクトの上から老眼鏡をかけたこともありました。
    近視が強いため白内障が始まるのも早く、身近に居る存在だからこそ、いずれ自分も母親のような視力の経過をたどるのだと思っていました。
 手術について悩む私に、母は「確かに手術のお金はかかるかもしれないけど、それで何十年もコンタクトの手入れから解放されるならやってしまえばいいじゃない」と言ったのでした。
「これから何十年もコンタクトの手入れをするのは大変だよ。お母さんの時代はそういう手術も何もなかったから……」という言葉に60云年の重みを感じ、手術か眼鏡生活かで揺れていた頭の天秤が一気に手術への傾きました。
 いままで「もう眼鏡生活にしたら?」と言ってきた人はみんな、眼鏡やコンタクトレンズを使っているとはいえ、私より視力の良い人ばかりでした。
    けれど私と同じかそれよりも強い近視の人にとって、日常生活でコンタクトレンズが使えなくなるのは死活問題。母がその気持ちを汲み取ってくれたのです。

 その後適応検査の日になり、長い時間をかけて視力測定をはじめ細かな検査を行いました。角膜の厚みなどを正確に計るため、検査前から指示された期間はコンタクトレンズの着用禁止。通常は数時間で元に戻る眼底検査も、2~3日は効果が持続する散瞳剤を使用します。
    目に風を当てて眼圧を計る機械や気球を見て視力を測る機械など、さまざまな機械を使って検査をし、○が欠けたところを答えていく視力測定では近眼のみと乱視を含めた度数をそれぞれ計測し……午後一番からの検査がいつのまにか日が暮れる頃になり、さすがにヘトヘトになりました。
「こんなに検査したのはじめてです」と検査技師さんに話すと「たぶん人生でこれが一番多いと思いますよ」と言われたので、将来白内障手術を受けたときはもっと……少ないといいな。
 最後にまた院長先生の診察を受け、手術可能と説明を受けます。
 ICL手術は角膜の縁を3mmほど切開し、その中に小さく畳んだレンズを挿入して目の中で広げ、固定します。場所は「茶目」の後ろ。縫合を行わないため術後は感染症に注意しなければならず、1週間は目をこすらないように就寝時も保護眼鏡をかけて生活する必要があります。感染症予防のためにお化粧やアイメイクも数日間制限があり、その説明もありました。
 何より心配だった角膜内皮細胞の減少は、レンズの改良により改善されたことを知ります。もし術後になにかしらのトラブルが起きても病院がちゃんとケアをすることなど、インターネットでは調べきれないことも質問すればちゃんと教えてくれます。
    術後に心配だったことの一つに過矯正もありました。視力を良くしすぎたせいで眼精疲労が起き頭痛などの症状が出てしまうと、長時間原稿とにらめっこする身としてはやはり辛い。ICLのレンズはコンタクトレンズほど度数の刻みがないため、適応検査でも相当慎重に検査をした上で、1.0〜1.2くらいを目指したレンズを使う予定とのことでした。
「多少の乱視はあるけど、これくらいなら近眼のみのレンズで大丈夫だね。手術するかどうか、決まったら連絡してもらえるかな?」
「手術、やりたいです」
 と、その場で手術を決定。
    ICLレンズは取り寄せのためすこし時間がかかることと、人気の病院のため手術もすぐに行えず、二ヶ月後に手術することになりました。
    手術当日と翌日は通院と安静が必要なためお休みが必要。三日目から仕事も可能ですが、洗髪ができるのは4日目以降のため、美容室で洗ってもらうなど工夫が必要です。術後は翌日、一週間、三ヶ月、半年と検診があるため、翌日と一週間後の検診もここで予約。
 私の通った病院の場合、予約をしたときに前金の33万円を支払い、手術日に残りの33万円を支払います。当日は保護眼鏡の購入もあるので3000円ほども必要になります。 初診は保険が使えましたが、適応検査は自費の5000円。トータルで67万円弱が必要になりますが、手術費用については医療用ローンを組むことができます。さらにレーシックやICL手術は医療費控除の対象になるため、私は年末の予約日と年明けの手術日の二回に分けて支払いをすることにしました。
 手術が決まれば前日までコンタクトレンズの使用が可能とのこと。術前4日前から点眼する抗生剤を受け取ると、あとは手術日まで通院をする必要がなくなります。
    この時点で手術まで約二ヶ月。
    次回はいよいよ手術のお話です。


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