ワインの沼へ

私がワインにハマったのは学生時代、今から20年以上前のことです。当時、ワインは今ほど身近なお酒ではありませんでした。私の周辺でワインを日常的に飲んでいる人は皆無でしたし、ブログもSNSもサービス自体がまだ存在しておらず、情報も今と比べてずっと少ない時代でした。いまは至る所で開催されている一般消費者向けの試飲イベントも、当時はほとんどありませんでした。

そんな状況でワインにハマるきっかけを作ってくれたのは、当時の家の近所にあったお酒のディスカウントストアです。街の中心から少し離れた場所にあったため店内は広々としており、世界中のいろいろな種類のお酒や輸入食品が多数並んでいました。そのお店は特にワインに力を入れており、店内の奥に照明や空調を管理したワイン専用の売場スペースが広く設けられていました。

当時はよく友人を家に招いて飲み会をしていました。私はいつも買い出し担当で、飲み会のお酒や食べ物を調達するのに、そのお店を利用していたのです。飲み会用に調達するのはビールですが、店内を見ているうちにだんだんワインが気になり始めました。

最初は、ワインの入門書を読んで、そこで紹介されているワインを探して買っていました。少しずつ飲み進めていくと、店頭に並んでいる他のワインが気になりだし、飲んでみたいワインが雪だるま式に増えて行きました。

例えば、キャンティというイタリアの赤ワインがあります。昔のワイン入門書には必ずと言って良いほど、藁苞に包まれたフィアスコ型のボトルの写真が載っていたものです。実際にお店で見てみると、キャンティだけでも非常に多くの生産者がいて、価格にも幅があることに気付きます。その違いがどのように味に反映されるのか興味が湧いて、キャンティばかり飲んでいる時期がありました。

いま思えば、キャンティは玉石混交で品質のばらつきが大きく、ワイン初心者が何の情報もなしにランダムに買って飲むのは大変危険なのですが、どうやら私の場合は、美味しいかどうかよりも、ワインを理解したいという欲求が勝っていて、ハズレを掴んでも挫けなかったのだと思います。ちなみに、フィアスコ型のボトルも買ってみましたが、強烈に劣化していました。透明の瓶なので劣化しやすいのです。今となっては笑い話で、若かった頃の良い思い出です。

こんな感じで、ワインに入門した学生時代は、周りにワインを教えてくれる人はおろか、ワインが趣味という人もおらず、飲んだワインをSNSでシェアすることもなく(SNS自体がまだなかった)、独りでひたすらワインにのめり込んでいきました。


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