2014年11月『乙女が奏でる恋のアリア』

──お願い……私の歌姫になって!


・共通

 海外留学中に図らずも得た休暇で帰国した主人公は、家族との連絡の行き違いで家がリフォーム中。家族はその間旅行しているといい、一ヶ月の間、家なき子となってしまう。アルバイトもみつからず、公園で歌っていたところ、その歌を見込まれ、深皇学園で行われる学園祭のメインイベント、歌姫救出譚(プリンチペッサ・プレギエーラ)の主役、歌姫(ディーバ)を依頼されて……

 オススメは西條綾香→雪代ことり→二ノ宮美琴→輝堂楓→天承院千影

・西條綾香

──若い男女が同じ部屋、何も起こらないはずもなく……
歌姫として守られる「僕」、騎士として守る「私」
女装バレもないし、とても平和ではあった。だが、終わらせ方が雑。

・二ノ宮美琴

西條綾香ルートでは、歌姫として守られる「僕」、騎士として守る「私」だけであったが、こちらでは一転、女の子を守る「僕」、男の子に守られる「私」という対比もしっかりしていて良かった。
ただ終わりに近づくと他の登場人物が空気と化すのはどうなんですか?
でも西條綾香ルートのぶつ切り感とは違い、ちゃんとけじめをつけて終わったので○

・雪代ことり

 やはり彼女も騎士であるので、 歌姫として守られる「僕」、騎士として守る「私」という対比が作品としての根底にはある。しかし二ノ宮美琴のそれとも違い、ここでは、先輩(お姉様)として慕われる「僕」、お慕い申し上げる「私」という構図もある。キャラクターの設定、世界観の設定というものをしっかりと生かせている。
 また文章もシナリオも一番優れている。ちゃんと最期にけじめをつけて、さらにもう一歩進めたのもセンスのかたまり。
お前が優勝雪代ことり。


・輝堂楓

 ここでは学園内での「姫と騎士」ではなく、街で出会った「男の子と女の子」として交流を深める。「つまり、二人きりでいちゃいちゃしながら街を散策し、楓とっておきのあの和菓子屋で、仲良く並んで縁台に腰を掛け、桜餅を食べたと」つまり「ナンパされた楓が、司くんとデートしてお持ち帰り寸前まで行った、OK?」
 純和風乙女(≠大和撫子)にしては意外と性に寛容。日頃から桂様に胸を揉まれてるだけありますね?

画像1


http://www.ensemble-game.com/10.otokana/gallery.html
 これはプレイ順が良かったわけだが、今まで騎士(女の子)と僕(歌姫)を散々やってきたところで一番凛々しい(騎士然とした)輝堂楓でそれをやらずに純粋に「男の子と女の子の恋愛」を描くの、天才か?
 それでも騎士(刃)であって歌姫(鞘)なんだよな。鞘がなければ刀(抜刀術)は相手を斬れない。
 こんなんズルじゃん輝堂楓。

・天承院千影

 名前の格好良さ全一。「かげ」を景ではなくさんづくりの影にしたセンスよ。
「私は最優秀騎士(ブリランテ)になって、叶えたいことがあるの」
 でもこれを言うなら他ルートでもっと活躍してもいいのよ。
「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう」「僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸いのためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」だから、だからこそ決めたはずなのに、同じ過ちを繰り返すことはしたくない。私は……。私は、どうすればいいのだろう……。
 そういう心情描写が一番綺麗に描かれていた。と言うよりも全ルートの中で一番文章がいい。西條綾香と二ノ宮美琴は90点くらいの文が並んでいる感じ、雪代ことりはよくある文章にもかかわらず決めるべきところできっちりと瞬間風速400点の文にして桐谷華の演技力で500点にブーストして殴ってきた。輝堂楓は予想を裏切られたという点で100点の分を隙間なく並べた。これを越えることはないだろうと思っていたところに天承院千影。ところどころ120点の文を挟み込みつつ「あるべきところにあるべき文がある」から読んでいて負担にならない。最高。
 グランドヒロイン天承院千影。

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