2021年11月『創作彼女の恋愛公式』
もう一度、君と翔ける、恋を、創作を、青春を──
・総評
DL版にはreadme.txtを入れろ。
全体として誤用、重言、表記揺れ、矛盾、不適切な助詞の使用が多い。一番ダメだと思うのが、「小説媒体とゲームシナリオでは文章の書き方が全く違う。大きく違うのは情景描写の文章量だ。小説媒体は基本的には文章で全て表現しないといけない。そのため登場人物はどこにいるのか、どういう表情なのか、どういう服装なのかを全て書かなければならない。しかしゲーム媒体は上記の様相は全て画面に表示される。そのことから情景描写は最低限のものとなり、主に会話文をメインとして進行していく。そのことからシナリオライターが小説媒体で描いた場合、情景描写が足りなくなってしまうことが多々ある。もちろん逆もある。混同は情景描写が多すぎて情報高荷なりテキストのテンポを阻害してしまうということも多々あるのだ」とかいっておきながら所々に「画面に表示されている」「情景描写」があるところ。
次にダメなのが主人公が「百聞は一目にしかず」とか言ったゆめみに対して「百聞は一見にしかず、な」とか直す癖に(主人公も含め)他のキャラの誤用は一切直さないところ。(しかも散々言われてる誤用も出てくる。体験版に3カ所あった(これは修正された)「穿った見方」とか「喝を入れる」とか)
あとこの世界には線路を走らない電車とか消化を制御できる人間とか男女でくくれない人間が相当数いるとか帆船じゃなくて傘船とか。
一番面白かった間違いはシナリオコンペのテキスト量指定を200kBじゃなくて200kbにしてたところ。200キロビットなら1日あれば書けるだろ。12500文字だぞ。
あとシーン1つでいいから紫音ルートと、他ヒロインと同レベルの結菜ルートは必要だろ(これはアペンドに期待)。
なんか最後の解釈は設定資料にあるらしいけど本編にないのがアレよ。
・共通ルート
終わりよければすべてよしとは言うけれど、終わりが良くなかったのですごくすごく残念。別れの前のキスシーン、しかも横顔は個人的な性癖(誤用)としてはぶっ刺さりなんだけど「わたしの最初で、最後の恋した人」が気になって気になって。「わたしの恋した人」と「最初で最後の恋」を合わせると「わたしが最初で最後の恋をした人」になると思うんだよな。
あと見送りなら空港まで行くだろ。もうちょっと上手くごまかせ。
・月見坂桐葉
まぁ唯一の友人と初恋相手を失った2人がくっつくのはいい。でも1stシーンで「もっと一緒にいよう」からの次のシーンでベッドに押し倒されてるのは違うだろ。それは3回目の立ち回りなんだわ。しかも「今夜は帰りたくない」「ならどこかで夕食でも」みたいな返答をしてる主人公がコンドームを持ち歩くなって。せめて備品を使えよ。
しかもそこから秒で3回目のシーンまで行くし。しかも3回目は3回目で同じCGを使い回さないで欲しい。(これは他ヒロインにも言える)
序盤に「声優も週刊誌に狙われる時代」とか言ってたからスキャンダルが起きるのは分かる。でも他の学生から「お前どうやって月見坂桐葉と知り合ったんだ」「弱み握ったのか」とか言われるのは違うだろ。学生主体ADV製作コンペの結果だってペンネームじゃなくて実名で公表してたし明らかにそこだろ。「ノベル科の学生だけじゃなく他の科の学生も結果発表に集まるくらいには注目度が高い」って設定はどこ行ったんだよ。
あとこれは他のルートでも共通することだけど逢桜が留学するからASから降りるってのは無理ない? 直接会えなくて擦り合わせが難しいってのは一理あるけどこいつら普通に電話してるし、桐葉のスキャンダル騒動で芽衣は事務所社長とオンラインで(≠電話で)対応話し合ってたし。もうちょっと上手い言い訳考えろよ。
「クリエイターの心を動かすのはいつだって創作物」とか言わせるし主人公実行してるけどお前それエレナ相手には分かってなかったからな。そこに関するカバーは必要だろ。
あとなんで最後のシーンで「今はいない親友」とか言ってんの。このライターのことだから「今ここにいない親友」の意味の可能性もあるけど。
・凪間ゆめみ
僕はヤッてほしい。
桐葉の時は個別EP1でシーン3つだったけど今回は個別EP2に3つなのな。なんか申し訳程度の「描けない問題」が出てくるのはなんだったのか。だったら序盤にそれを持ってきて描けなくなったゆめみを必死になって奮い立たせる主人公に惚れるとかだった方がマシ。
全体的に声優の強さがあるだけで桐葉ルートより面白くない。
マジで桐葉の時も気になったけど一年後に彩瀬逢桜死んでない?って思う。今回は「逢桜に約束した」だし。(「逢桜と約束した」なはず)
・雪妃エレナ
僕は恋に破れた女の子が一人で泣くシナリオは嫌いです。やるなら恋破れた女子sによる残念女子会とか楽しげな雰囲気でやって欲しい。
ってか一世一代のキスした男から別の知ってる女と付き合うことにしたとか聞かされる逢桜はどんな気持ちだったんだろうねって。
あと雪妃エレナを評価する言葉「稀代の天才」、姉は「きたいのてんさい」で姫子は「きだいのてんさい」なの統一して欲しい。
シーンは相変わらず3番目が往復だし。
シーン消化後のシナリオでエリカがプロデューサーになった経緯で「妹が初めて書いたという小説を読んでさ、ギリギリで保っていた糸が切れたように、筆を折ることを決意したんだ」って言ってるけど前の文章までの流れなら「妹の才能をみて筆を折ることにためらいは無かった」になるんじゃねぇの。
あとやっぱり逢桜どうしたんだよ。ロシアまで行けるんだったらフランスの逢桜にも会いにいけるじゃんね。
・彩瀬逢桜
ルートロックされてるヒロイン。魅せてくれ。
主人公も主人公でフランスくらい行ってこいよ。学校休みだろ。まぁ行ってたら完全な徒労なんですけどね。バッドエンド至上主義者め。
桐葉が「もし私が声が出なくなったら〜」って言ったとき、これに対応するのは「治すための特効薬は〜」じゃなくて「なにも生み出さない私は死んでいるのと同じだから私を殺して」だと思うんだよ。当然桐葉ルートを踏まえてるんだけどこれはない。
悠真がキレた「それは、生きることよりも大切なことなのか?」ってのはクリエイターもののありふれたお題目なんだよな。でも「命が無ければ、物語だって書けない!」に対しての答えは「でも、一作は書ける」ではない。「たった一文でいい。最高の文章が書けたら、それでいい」なんだよ。
これはたぶんタイトルにも関わってる部分なんだけど「このキャラクターを理解した時、公式を解くようにして私という人間を理解するだろう」いいたいことは分かるけどおかしいんだよな。「公式で解く、公式に代入して解く」んであって「公式を解く」んじゃないから。まぁ『創作彼女の恋愛定理』じゃないだけマシだが。あとルビ振るなら公式じゃなくて解だと思うんだよ。公式だし。だから「俺と彼女が紡いだ──公式なのだから」じゃなくて「俺と彼女で導き出した、公式なのだから」だと思います。
ただ桐葉の「恋愛に公式なんて無い」は正しい。
他の三人のルートだと明らかに逢桜死んでるんだけど自分がヒロインのルートだとどうなんだろうね。僕は死んでない(≠生きている)と思うけど。「私が最後にハッピーエンドを書けるなんてね」だし、「奇跡のない物語を終わらせよう」だし、「俺は、君とこれからも物語を生み出していく。──君の声も。──君の笑顔も。──君の作った物語を胸に(略)」だし。これが「──君の声と。──君の笑顔と」だったらまた解釈変わるわけだけど(尚このライターの助詞の使い方は信用できない)。
ただ大学進学してる桐葉と最後の主人公のシーンは時間軸がズレてる。ストレートに解釈すれば主人公がまだ逢桜と過ごした時間に捕らわれてるって事だけど、だってこのゲームは「もう一度、君と翔ける、恋を、創作を、青春を──」でしょ。「もう一度、君と翔ける。恋を、創作を、青春を──」なら違うけど「君と翔ける、恋を(略)」なら「もう一度」は「翔ける」「恋」「創作」「青春」にかかるわけだから。
この最後の2段落の解釈によってこの作品は評価が変わる。まぁどっちしろ合格点ではないんですけど。
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