2015年6月『乙女が奏でる恋のアリア 君に捧げるアンコール』

 アンコールの幕が、いまあがる──


・西條綾香

 アンコールというものは得てして演者と観客の間で暗黙の了解的にあるものではあるけれど、これをやりたいがために本編をあそこで終わらせたというのなら、それはセンスがない。と言うよりもここまでやって初めて終わり。もちろん『君に捧げるアンコール』の発売を見越して本編を作っては居るのだろうけれど、これは本編でやるべき内容だった。これは「アンコール」ではなく「フィナーレ」

・二ノ宮美琴

 一転、こちらはちゃんと「アンコール」である。「どこの国で見ても、空の青さはそれほど変わらないだろうけど」という文が作品冒頭にある。これは主人公があまり空というものを重視していないからこそ出てくる発言なのだが、それを踏まえて「空って、一つしかないでしょ? 地球のどこにいても、空は繋がっているから。離れていても一緒だよ、って……そういう意味をこめて、同じ時間に見上げられたらいいな」を見ると、主人公が「繋がっているもの」としての「空」に価値を見いだしている。そういう心情の変化を描けるのが優れた物語ですよ。優秀なライターが書いたらしいな? どうしてそれを本編でできなかったんだ。
P.S.「主人公の発言がおっさんみたいになりがち」はあるあるだと思うんですけど、ヒロインがそうなるのはどうなんですかね。

・雪代ことり

 翌年もプリンチペッサ・プレギエーラの歌姫として深皇学園に招聘された和泉司。一年ぶりの再会である。どちらかというと「アンコール」よりは「再演」とでも言うべき内容。
 たしかにキャラクターの魅力というものは表現できているが、それは桐谷華の演技ありきの魅力であり、本編が良かっただけに見劣りしてしまう。(「ダメ」「ひどい」と言う事はないし、一般的な求めるレベルには達している。あくまで「あの本編を踏まえて」という事である)
「あ、私は、手紙が好きなので、送って欲しいです。外国の切手、いっぱい貼って下さいね」を書いたライターは何処へ行ってしまったのか。

・久遠佳

 これは『君に捧げるアンコール』で追加されたルート。そりゃあ輝堂楓ルートであの立ち回りしていれば人気投票1位になりますよね佳様。
 でも個人的には男であることがバレて誤魔化そうとしている時に「嘘に嘘を重ねるなよ」とか一瞬キレても良かったと思います。男の嘘に付き合うのもいい女だけど、男の嘘を窘めるのもいい女です。
 さすがに人気投票1位のキャラクターなだけあってそれなりにしっかり書けている。「歌姫」と「騎士」、「下級生」と「上級生」そして、「男の子」と「女の子」。その女の子は学園内で最優秀騎士として人気があるけれど、それはどちらかというと王子さまに向けられるような感情。そんな求められる役割を演じるけれども、同時に女の子としても見てもらいたい自分。
 でも、いざ付き合ってみるとちょと「あれっ?」と言う感じ。「佳様」と「佳」のギャップで攻めたいのかもしれないけれど、久遠佳は自分と、その自分を第三者視点で見ているもう一人の自分を持っている人物でしょう。だから「ギャップ」も計算ずくであるはずなのに、それを「素」と言ってしまうのはおかしいなと。
 学園の最後のシーンでは、ちゃんと第三者の自分がいるから、「ぼろぼろに泣いてしまうから見送りはしない」とそれまでの佳様に戻っている。ライター変わったのか? 別れとしては高評価だけど雪代ことりの別れには勝てませんよ。

・輝堂楓

 なんか最初の3文だけ文章が飛び抜けて良い。でも「主人公に女装させたい」「既存キャラを使いたい」ってだけでわざわざ日本に帰国させなくてもと言う感じ。他のヒロインが日本での話なのだから、一人くらいは外国でもね?
 ただ佳様と違ってヒロインとしての輝堂楓の解釈は完全に一致。「通路側だった筈の楓は、窓際が良いと主張し、僕の席に陣取った」あたりは特に。それから暴走気質。
 ラストにCGを持ってくるのは良いけれど、そのCGで言ってることが「来年も女装しない?」なのは違うのでは?

・天承院千影

 いい女がもっといい女になろうとするのは凄く凄く良い。でもその努力を相手に見せるのは違うんじゃないかなと。本編が良かっただけにこういうことをされるとすごく残念。
 でもウェディングドレス論は120%同意できる。だからなんでそれを他のものにも適用できないんですか???
 でもやっぱり天承院千影がグランドヒロインです。

・城ヶ﨑奏

 何があったかは知らないけどパティシエになってた。CGは可愛かったですよ。

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