検証をすること1

いろいろあって、本を出すことになったと前回の記事で話した。
私が出す「本」というのは、自費出版の資料集である。
なかなか気が遠くなるような作業なので、
作業の工程を少しずつ記録に残していきたいとおもう。

資料本は割と煩雑で、初心者向けの所謂「ファンタジーを書く人のためのよくわかる◎◎!」みたいな本の次が、いきなり各分野の専門書になってしまうし、文字ばっかりになる。私が過去に描き、また常に目指しているのは、専門書と入門書の丁度中間のガイドブック的なものだ。

普通の本を書くことと資料系の本を書くことの一番の違いは、
最後になるまでオチを決めて書くことができないということだ。
最初に始めるのは、常に資料集めだが、
結論ありきの資料集めはかならず集め方に恣意や作為が入る。
自分がこうなったらいいなという内容が書いてある本ばかり読んで、
自分が出した結論と同じ内容に満足し、まちがった確信を深めていく。
最悪の場合宇宙人が建設したピラミッドから発信する電波で
現在も地球にやってくるUFOが牛だの人だのを攫うのに怯えながら
真実を公表しないNASAを呪って生きていくことになりかねない。
それを防ぐにはどうするか。
資料の検証をするのである。

そのためにはまず、似たような内容の本や論文を大量に用意しなければならない。たとえば、

「古代オリエントの歴史」
「古代の歴史:オリエントの文明」
「メソポタミア文明」

みたいな題名の総括本を、10も20も取り寄せる。
それを全部読んで、重なる記述と異なる記述を分け、
それがどこから引用されているのか調べるのだ。
詳しい個々の研究所に入るのはそのあとである。

「研究結果は最新が望ましい」
という考えが、多分おおくの人にはある。
もちろん、それはまちがっていない。
例えば、ぶどうの原産国は長い事ギリシア周辺だと思われていたが、
2017年にグルジアでの大規模プランテーションの痕跡がみつかって、
これにより世界最古のワイン発祥の地はグルジアであるとわかった。
現在出版されている多くの本にはまだ「ワインの原産国は地中海地域」と書かれていて、これはおいおい改められる記述であろう。

しかし、こと歴史系の資料において、「過去の研究を参照する」「原典にあたる」というのは非常に重要な意味をもっている。
過去に起こった出来事そのものはもう二度と起こらない。
もしかしたら明日どこかの独裁国家で民衆が蜂起して、
それはフランス革命と同じ様に無辜の市民の解放を求めて
牢獄を開かせるところから始まるかもしれないけれど、
フランス革命そのものは18世紀に終わってるし、
三百年前に生きてた人たちはもうみんな死んでる。
似たようなことは同じことではない。
であれば、当時何が起きたかを知るには当時の記録とそれについての研究を調べるよりほかにないのだ。

今日はここまで。
具体的な作業についての話はまた後日。


これはおひねり⊂( ・-・。⊂⌒っ