【654/1096】専門家との話②
専門家のもとには
きみと同じくらいの子たちが
話をしに来ている
予約の入れ替わりで
すれ違うことがあって
どんな感じなのか
きみのそれと比べたりしている
きみは見た目にはしっかりしていた
こんなにまともにしゃべれるのか
と驚くほど
理路整然と話をしていた
その様子にまた
安心してしまったのだが
理路整然と話していることが
不自然だったようだ
感覚的なワードでないことが
変化の現れだと気づいたのは
きみがもういなくなってから
親のくせに…
と何度思ったところで
きみは戻らない
専門家はいろんな人の話を聞いている
たくさんの人と触れる中で
出てくる話には傾向があって
きみもそれに当てはまっていた
ジャンルもそうだし
捉え方や距離感なども似ていた
素人のわたし達には
わからないことがある
当たり前なのだけど 腑に落ちた
専門家と触れ合っていたきみには
救われる道がないわけではなかった
とその人はいう
誰にも言えずに
ひとり抱えこんでいたのでなく
専門的に対処してくれる人が
何人かはいたのだ
親のサポート不足も
もちろんあったけれど
病気であるなら
医者にかかるのが通常で
きみにはそれがあった
だからこそのわからなさも
あるのだという
"幸せの話はだいたい同じで
悲しみの話はみな違う"
という言葉を聞く
亡くなるまでの道のりは
みなそれぞれ異なる
どうして と思うことの内訳も違う
もういないきみのことばかり
ずっと考えてしまう
考えが偏るから専門家と話をしてきた
誰かに話せることは
大切なことだった
今後もきみのことを考えいくよ
変わらずずっと
今日もありがとう
残された者の日々