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才能研究コラム

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株式会社TALENTの才能研究チーム「TALENT RESERCH CENTER」が運営するコラムです。 学術的研究(心理学や哲学、経営学などの分野)をもとに、「才能」について紐…
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2024年2月の記事一覧

「理想の自分」の追いかけ方 #研究コラムVol.8

理想と現実のギャップ突然ですが、あなた自身が才能を発揮している状態を思い浮かべてみてください。 現在の自分自身の姿を思い浮かべるよりも、今以上にスキルアップしていたり、まだ取り組めない大きなチャレンジをしていたりといった、さらに成長した自分の姿をイメージする人が多いのではないでしょうか。仕事でより成果を上げている自分、周りの人に頼られている自分、競技でパフォーマンスを発揮している自分、などなど。 今回の研究コラムでは、このようなときにイメージされる「理想の自分」と「現実の

人目があると頑張れる?頑張れない? #研究コラムVol.7

他者の存在と才能発揮株式会社TALENTのTalent Research Center (TRC) では、才能を「動機づけられた、自分が価値があると認めている行動や思考」と定義して、才能発揮のメカニズムや条件を研究しています。これまでの研究コラムでは、上記の定義を心理学をはじめとした関連領域の学説や実証研究と結びつけながら、欲求や動機づけ、学習といったテーマについて取り上げてきました。 「動機づけ」や「価値」という概念を考えるにあたり、他者や社会の存在は無視できないものと考

No pain, no gain 〜痛みなくして得るものなし〜 #研究コラムVol.6

「主観的価値」をもう一段階深めてみよう前回の研究コラムでは、どのようなときに学習が起こりやすいかを、レスコーラ=ワグナー・モデルという学習心理学の理論を紹介しながら解説しました。前回のお話では「報酬予測誤差」がキーワードとなっていました。報酬が予測を上回る「サプライズ」が起きたときには、報酬の原因となる行動がより頻繁に行われるようになり、反対に予測を下回る「期待外れ」が起きたときには、行動の頻度が減少します。また、サプライズや期待外れはその後の報酬予測に影響するため、ひとつひ

サプライズと期待外れが行動を変える #研究コラムVol.5

才能研究を拡張するキーワード前回の研究コラムでは、「学習」をテーマに、行動の維持や中止に関する理論を紹介しました。心理学の世界では、学習は経験によって行動が長期的に変化することを指します(渡辺, 2013など)。そして、行動の結果として報酬(うれしいこと)が増えたり、罰(イヤなこと)が減ったりすると行動の頻度が増え、反対に報酬が減ったり罰が増えたりすると行動の頻度が減るという「オペラント条件づけ」の考え方が、学習を考えるときの基礎的な理論として使われていることを前回は紹介しま