マガジンのカバー画像

才能研究コラム

13
株式会社TALENTの才能研究チーム「TALENT RESERCH CENTER」が運営するコラムです。 学術的研究(心理学や哲学、経営学などの分野)をもとに、「才能」について紐…
運営しているクリエイター

記事一覧

才能発揮できる環境を自らつくりあげるには #研究コラムVol.13

前回の研究コラムでは、株式会社TALENTのTalent Research Center (TRC) で行っている才能研究についてまとめました。 研究の土台に据えている才能発揮理論では、才能が発揮されている人の特徴を「欲求と行動の一致度」「期待と結果の一致度」「社会的評価」の3つの軸で表現しています。つまり、欲求と一致した行動をとれていて、その行動の結果が自分の期待していたとおりであり、さらにその結果が他の人にも評価されている状態が、高いレベルで才能が発揮された状態といえる

才能研究の軌跡 #研究コラムVol.12

株式会社TALENTのTalent Research Center (TRC) がお届けしている「才能研究コラム」は今回で12回目です。月刊なので、連載開始から1年が経ったことになります(早いものです)。 節目となる今回は、既存の学術知見ではなく、TRCが現在進行系で取り組んでいる才能研究について紹介したいと思います。これまで「研究コラム」で取り上げてきた学術的な知見との関わりや、実際に調査を行って得られたデータにも触れつつ、才能研究の今をお届けします。 「才能」の定義を

経験を知識に変える内省の力 #研究コラムVol.11

自身の才能発揮を考えるうえで、自らの価値観や欲求を自覚したり、これまでの経験を棚卸ししたりと、自分について考えを巡らせる取り組みは必要不可欠なものです。 過去2回の研究コラムでは、自分自身について注意を向けたり考えたりする「自己注目」をテーマに、考えるときのスタイルや、自分のどの側面に注意を向けるのがより建設的かについて、社会心理学の学術知見を中心に紹介しました。 今回は、自身の「経験」について振り返り、考えを深める「内省」に焦点を当ててまとめたいと思います。内省は、経験

私を構成する、複数の私 #研究コラムVol.10

株式会社TALENTのTalent Research Center (TRC) で研究テーマとしている「才能発揮」は、自分自身が何をしたいかという欲求や、これまで培ってきた経験と切っても切り離せないものです。そのため、才能の発揮の仕方を考えるときには、自身に向きあい、内省する取り組みが必然的に生じます。 前回の研究コラムでは、自分自身について注意を向けて考えを巡らせる「自己注目」をテーマに、善玉の「省察」と悪玉の「反芻」の2つのスタイルがあることを紹介しました。 今回は、

自分に向き合うときの2つのスタイル #研究コラムVol.9

自分の内面や存在意義について思索をめぐらし、ときに悩み苦しむ営みは、古来より人類の間で行われてきました。歌詞や文章が「痛みの作文」と呼ばれることもあるように、内省や自己探求は苦しみを伴いながらも、芸術や哲学的な考察に昇華することも少なくありません。 これまでの研究コラムでお届けしてきたように、「才能発揮」は自分自身の欲求や経験と不可分なものであり、発揮の仕方を考えるにあたっては、自身に向き合い内省する営みが必然的に伴います。その過程では、前回のコラムで取り上げた理想自己と現

「理想の自分」の追いかけ方 #研究コラムVol.8

理想と現実のギャップ突然ですが、あなた自身が才能を発揮している状態を思い浮かべてみてください。 現在の自分自身の姿を思い浮かべるよりも、今以上にスキルアップしていたり、まだ取り組めない大きなチャレンジをしていたりといった、さらに成長した自分の姿をイメージする人が多いのではないでしょうか。仕事でより成果を上げている自分、周りの人に頼られている自分、競技でパフォーマンスを発揮している自分、などなど。 今回の研究コラムでは、このようなときにイメージされる「理想の自分」と「現実の

人目があると頑張れる?頑張れない? #研究コラムVol.7

他者の存在と才能発揮株式会社TALENTのTalent Research Center (TRC) では、才能を「動機づけられた、自分が価値があると認めている行動や思考」と定義して、才能発揮のメカニズムや条件を研究しています。これまでの研究コラムでは、上記の定義を心理学をはじめとした関連領域の学説や実証研究と結びつけながら、欲求や動機づけ、学習といったテーマについて取り上げてきました。 「動機づけ」や「価値」という概念を考えるにあたり、他者や社会の存在は無視できないものと考

No pain, no gain 〜痛みなくして得るものなし〜 #研究コラムVol.6

「主観的価値」をもう一段階深めてみよう前回の研究コラムでは、どのようなときに学習が起こりやすいかを、レスコーラ=ワグナー・モデルという学習心理学の理論を紹介しながら解説しました。前回のお話では「報酬予測誤差」がキーワードとなっていました。報酬が予測を上回る「サプライズ」が起きたときには、報酬の原因となる行動がより頻繁に行われるようになり、反対に予測を下回る「期待外れ」が起きたときには、行動の頻度が減少します。また、サプライズや期待外れはその後の報酬予測に影響するため、ひとつひ

サプライズと期待外れが行動を変える #研究コラムVol.5

才能研究を拡張するキーワード前回の研究コラムでは、「学習」をテーマに、行動の維持や中止に関する理論を紹介しました。心理学の世界では、学習は経験によって行動が長期的に変化することを指します(渡辺, 2013など)。そして、行動の結果として報酬(うれしいこと)が増えたり、罰(イヤなこと)が減ったりすると行動の頻度が増え、反対に報酬が減ったり罰が増えたりすると行動の頻度が減るという「オペラント条件づけ」の考え方が、学習を考えるときの基礎的な理論として使われていることを前回は紹介しま

行動が変われば結果が変わる、結果が変われば行動が変わる 〜学習理論への招待〜 #研究コラムVol.4

行動を継続する仕組み過去3回のコラムでは「欲求」と「動機づけ」について、学術研究の知見を才能研究とのつながりとともに紹介しました。欲求と動機づけは、どちらも行動の発生と深い関連があるものです。しかし、才能を考えるにあたり、単発の行動を考えるだけでは限界があります。「筋肉をつけたい」という思いのもとにトレーニングをしたとしても、1日だけでは効果がなく、2日、3日と継続することで行動の成果が形となってきます。今回の研究コラムでは、こうした行動の継続と深い関連がある「学習」をテーマ

「自分からやる」内発的動機づけを追う #研究コラムVol.3

動機づけ、内から出るか?外から来るか?前回のコラムでは、どのような欲求によって支えられているかによって、動機を1次的動機と2次的動機に分ける分類を紹介しました。動機づけに関しては、他の軸を使った分類も提唱されており、そのなかでもよく知られているのが「内発的動機づけ-外発的動機づけ」という分類です。 私たちの日々の行動の中には、明確な目的や具体的な報酬がないものがあります。たとえば、ソファにねそべりながら動画を見たり、キャンプに出かけて焚き火をしたりといった行動は、金銭的な報

動機づけのフロンティアへ #研究コラムVol.2

前回のおさらい前回の研究コラム「才能研究の出発点」では、「欲求」をテーマとし、その分類や才能を考えるうえでの位置づけ、欲求を起点に才能を考える利点などをお届けしました。 簡単に前回の内容をおさらいしましょう。 株式会社TALENTのTALENT Research Center (TRC) では、才能を「動機づけられた、自分が価値があると認めている行動や思考」と定義しています。この定義にしたがうと、才能は「何かをしたい、せずにはいられない」という欲求を起点とする行動や思考で

才能研究の出発点 #研究コラムVol.1

さあ、「才能」を研究しようこのメディアでは、株式会社TALENTのTALENT Research Center(以下、TRCという)で研究している「才能」について、学術的な観点から理解を深められる情報をお届けします。具体的には、現代社会を生きる人間にとって「才能」とはいったい何なのか?ひとりひとりが才能を発揮するためにはどのような実践が有効なのか?といった問いに対して、心理学や哲学、経営学などの分野から、関連する学術研究を紹介していきます。 一言で「才能」と言っても広い意味