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古いアウトライナー使いから見たWorkFlowy

最近になってアウトライナーに触れた人には想像しにくいかもしれないけれど、アウトライナーというジャンルは長い間「絶滅危惧種」と言ってもいいものでした。

アウトライナーは数あるPC用ソフトの中でも長い歴史を持つもののひとつです。今日見るようなアウトライナーとして最初のものであるThinkTankが発売されたのは80年代のはじめ。最初のビジネスソフトと言われるVisiCalcに次ぐくらいの歴史を持っているのです。

80年代後半から90年代にかけての時期には一種のアウトライナーブームのようなものがありました。新しいアウトライナーが次々と登場し、アウトライナーを扱った書籍が何冊か並んでいたり、雑誌にアウトライナーの特集が組まれるなどということもあったのです。私がアウトライナーフリークになったのはこの頃です。

しかしその後、パーソナルコンピュータはますます普及していったにもかかわらず、アウトライナーというジャンルは廃れていくことになります。理由ははっきりしません。Wordの普及のせいだと言う人もいるし、PCの役割が文字通りの「パーソナル」なものから仕事の生産性向上へと移ったせいだと言う人もいます。

アウトライナーの歴史の話については、このマガジンでも改めて触れたいと思うけれど、とにかく90年代半ばからアウトライナーは衰退期を迎えます。

私がアウトライナーの本を書こうと思い立ったのは2003年のことです。それ以来構成も考え続けていたし、原稿も書きためていたけれど(そして今はなき「Happy Outlining !」として公開もしていたけれど)、いつもネックになったのは、誰にでも安心して勧められる(そして実例として使える)アウトライナーが存在しないということでした。

世界でいちばん普及しているアウトライナーは間違いなくWordのアウトラインモードだったけれど、これはあくまでもドキュメント作成を念頭に置いたもので汎用のアウトライナーとしては勧めにくいものでした。

Windowsの世界では私の思うような使い方ができるアウトライナー(今「プロセス型アウトライナー」と呼んでいるもの)自体が少数派でした。Macの世界むにはOmniOutlinerやOpalがあったけれど、今よりもずっとシェアが低かったMacの中でも更にマイナーな存在でした。

そんな状況を変えてくれたのがWorkFlowyの登場だったのです。私自身がWorkFlowyに触れたのは2013年頃だった思います。ウェブアプリがこんなに速く滑らかに動いていることに、複数のデバイスで使っても同期の失敗がほとんどないことに、そして何よりも、誰もが使える本物のプロセス型アウトライナーがこんな形で実現したことに驚きました。

2015年に、それまで書きためた文章をまとめて『アウトライン・プロセッシング入門』という電子書籍を作りました。それはWorkFlowyの存在なしにはあり得なかったのです。

WorkFlowyはモダンなアウトライナーの新しい歴史のスタート地点になったと思います。プロセス型の思想を極限まで押し進めればこうなる、というワンアウトライン思想。アウトライナーの伝統を受け継ぎつつ、ハッシュタグや共有アウトラインなどの新しい地平を切り開いたこと。WorkFlowyが無ければDynalistはもちろん、次々と登場している新しいアウトライナーも、話題のLogseqもおそらく存在しなかったはずです。

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