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春の陽気に野球(映画)観戦

 昔からスポーツをやったり見たりすることは苦手でして。いつしかボールがうまく捕れなくなったり、周りにやじられたり、そもそも学校の体育の時間というのはよろしくありません。中学を越えると特に、部活やってる連中との体力差がはっきりしてきますからね。それに体育教師の……と書いてやめておく。そんなことを書きたいわけでもないのだ。それでもスポーツ映画は好きですね。特にポンコツが最後に勝利、あるいはそれに近い達成感を得られるものがいいのです。その代表格といえばやはり『ロッキー』になると思うのですが、年齢を重ねると、シリーズ史上でワーストと言われてる『ロッキー5』がまた、味わい深かったりするのです。

 そんなスポーツ映画の新作『野球少女』を休日に見に行ってきました。こちらも前回の戦隊映画と同じく、うっかりしてると上映期限が迫っていたのです、今月公開なのに。

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 物語は女子で唯一の女子野球部員スインが進路に悩み、周囲の反対を押し切ってプロを目指す、というお話。日本でも女子のプロ野球リーグは存在していますが、韓国ではまだ厳しいようで、女子の野球部員というだけでも珍しいのに、その上プロを目指すなんてことはありえない、と言われています。もう就職するか、その速球を投げる肩の力でハンドボールに転向しなさい、と学校や親から言われ続ける。それでも練習に参加し、プロを目指すスヨン。その姿に、かつての自分を見たのか、はじめは反対していたコーチも、限りなく低いプロ入りの手がかりを作るべく助力するようになる。野球といえば魔球で特訓ですよ、『巨人の星』や『侍ジャイアンツ』みたいな派手さはないけど、速球で勝負できないなら、ナックルで勝負しろ、とナックルボールをマスターするための地道な特訓が続く。音楽に乗って短いカットバックで描かれる特訓シーン、これはもうスポーツ映画の定番シーン。うさぎ跳びで階段を上って、ガッツポーズの『ロッキー』オマージュもある。

 そしてプロ球団のトライアウトへ。やはり、ここでも女だからとだれもが皆スヨンをバカにした目で見ている。そんな中、もう一人、アメリカのアマチュア球団にいた女子選手が。プロの試合でもない、シーズンオフの球団テストがクライマックスの地味な展開だけど、これが熱い。男とか女とか関係ない、あるのは野球だけ。スヨンのナックルに、徐々に、周りの目の色が変わっていく、そしてかけられる声援! スポーツものの盛り上がるポイントを抑えつつ、それでもドラマは、『女だから』現実と向き合うスヨンの姿を描く。そして……。フィクションだけど、実在の女子野球部員をモデルに描かれているらしい。ここで女性が、男性が、と今流行りの論調になるのは、筋違いだし、自分はそっち方面で雄弁に語れる人間ではない。『野球は誰にもできる、女性か男性かは長所でも短所でもない』というスインの言葉がすべてを表している、ように思う。好きなこと、やりたいことに性別なんかないのだ。

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 しかし女子野球千選手にゴリラがプロ球団入りする『ミスターGO!』と、韓国映画界が徐々に『野球狂の詩』に近づいてきている。いっそ韓国で映画化してほしい。というか、水島新司先生の先見の明がすごいだけなのか。

 自分の未来のために周囲の雑音を無視してひたすら野球に打ち込む、スイン役のイ・ジュヨンのクールな佇まいもよかったですよ。

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