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その鉄拳に見合う説得力を、彼は持っている

 先日、『悪魔の植物人間』を見に行ったのに、印象に残るのはガスマスクの植物人間と、なぜかマ・ドンソク。アジア映画に強いシネマート心斎橋は新作公開に合わせてマ・ドンソク作品をリバイバル特集するらしい。ろびにーにこんなごっつい立て看板が立ってたら、いやでも印象に残ってしまう。

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 スポーツやトレーニングで鍛えてできたのではなく、生まれつきそうだったんじゃないか? と思わせるナチュラルなごつい肉体に、いわゆる『ゴンタ顔』な強面、だからこそ、時折見せるコミカルな面とのギャップがすさまじく大きい男。彼の映画を本格的に見たのは去年の京都みなみ会館の『悪人伝』『犯罪都市』『ファイティン!』の連続上映からですが。あんなおもろい体型の人間が出ている映画がつまらないわけがない。いずれの作品でも、こちらのご期待に添うように、許せないもの、悪い奴らをそのごっつい腕と拳で叩きのめしていく、という役柄。その後で見た『新感染』でもゾンビ相手だろうとひるまずぶん殴っていました。あの体型だからこそ、そのパンチに説得力があるのです。

 そして先日、彼の新作『ザ・バッド・ガイズ』を。シネマートではなくMOVIX堺で鑑賞。以下、内容に触れる記述があると思います。

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 囚人護送車が何者かに襲われた。逃走する囚人、そしてその背後にある黒幕を突き止めるために、囚人だけで編成された特殊捜査班が動き出す! 毒には毒を、悪には悪を、の構図は『ワイルド7』を思わせるし、ならず者がチームを組んでミッションに挑む、というのは洋の東西を問わず好んで使われる題材なのです。

 マ・ドンソクの役柄はもちろん捜査班の一人で懲役28年の雇われヤクザ。のそのそと彼が動くだけで、敵は慌てふためき、さっと右手を上げるだけで、条件反射的に相手の動きが止まる。それでもなりふり構わない相手には、その鉄拳をくらわすだけ。ワルだけ根はいい奴、いつものマ・ドンソクである。今回もヤクザ者相手に大立ち回りを見せることしばしば、負ける気がしない、ちっとも動じないその態度にこちらも安心して彼の活躍を見ていられる。

 主要キャラかと思ったら途中退場したり、わかりにくい回想シーンが入ったりと複雑な構成になっていたけど、元々『ザ・バッド・ガイズ』はテレビドラマだったとのこと。日本でもよくある劇場版、というやつだった。

 クライマックス、雲霞の如くおし寄せるヤクザの群れにも動じないマ・ドンソクと捜査班の面々。それよりも、途中参加のマ・ドンの子分『幽霊の足』の、華麗な足捌きと蹴りの連打に魅了される。

 警察の腐敗、ヤクザの進出と、たぶんおそらく現実をディフォルメした内容に公道上の護送車襲撃のスペクタルと格闘アクションを混ぜ合わせてエンターテインメントに仕上げるのはさすが韓国映画。コミカルだけど、血糊の量と暴力描写は遠慮がないのもいつものこと。いわゆる寸止め感がないので、見ているこおっちもストレスをためずに見ていられる。リアルな現状にトゲトゲ付きのメリケンサックを使うヤクザ、という『それはないやろ』な漫画的な描写が同居しているのもまた、韓国映画っぽい。

 続編を匂わせる引きで物語が終わったが、またいつか、マ・ドンソクのぶっとい鉄拳を拝めることができるのだろうか。立っているだけで面白く、何かを期待してしまう俳優さんであります。



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