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交通違反と前例踏襲と業務改善と。

表題だけ見ると、「なんのこっちゃ」ですが、実は全て繋がっています。

先日、右折禁止の場所で右折をしてしまい、いわゆる「青切符」を切られました。その際に「ああ、これ、いろんな組織でいまよく言われることだわ」という経験を反則金を支払うことでできましたので、ここに書き記しておきたいと思います。

どんなシチュエーションだった?

場所は函館市の交差点。ここで僕は指定方向外進行禁止(以下この文書では「右折禁止」)の標識を見逃し、右折をしてしまいました。

道路を曲がってすぐに、踏切がある場所なのですが、踏切を越えたところで、サイレンの音。

「前の車止まってください。」

ああ、かわいそうに、誰か捕まったんだな・・・って、前の車おれじゃん

・・・

一時停止もしたし、速度違反もしてないし、なんだろう。勘違いされてるのかな?と思いながら、道路脇に車を止める。お巡りさん、パトカーから降りてくる。

『運転手さん、なんで止められたかわかりますか?』
「いやあ、シートベルトもしてるし、なんでしょう。」
『あそこ、右折禁止なんすよ』

えw

この道も幾度となく走っていますので、あまりにも馴染み過ぎて標識を見逃してしまったのでしょうか。とはいっても、そんな普段は見逃すことないんだけどなあ。でも、見逃してしまったことは事実。注意力が散漫しているときに交通事故が起きるわけですから、気を引き締めなければなりません。そう、考えていたのですが・・・

・・・

みんなやっちゃうんですよ

『交差点に入る手前に標識あったの見えませんでした?』
「いやあ、ちょっと気がつかなかったです。すいません。」
ああ、そうですか。やっぱり。
ここ、右折禁止なのに、みんなやっちゃうんですよ。

え?やっぱり?みんなやっちゃう??

お巡りさんから言われたその一言が、僕の心に火をつけます。しかし、まず、ルールはルール。粛々と手続きを行って行きます。通行禁止違反、不注意による確認義務不履行、道路標識等の表示による禁止制限場所、反則金7,000円。あああああゴールド免許が。

『運転手さん、次からは気をつけてくださいねー』

と、全ての手続きが完了し、お巡りさんの中ではめでたしめでたしとなった案件となりましたので、ここで、僕が感じた疑問を投げかけてみました。
みんな、なんでやっちゃうのか。意図的に違反してるってこと?

・・・

なぜみんなやっちゃうのか

全部手続きが終わっていますし、覆ることないのに、なんでこの運転手はこんな質問をしてくるんだろうと怪訝が顔をされましたが、ちゃんと質問に答えてくれました。

「すいませんでした。ところで先ほど、『みんなやっちゃう』と話されていましたが、なんでみんなやっちゃうんですかね?」
うーん、どうも標識が認識しにくいみたいですね

ほうほう。標識が認識しにくいと。たしかに、僕も気がつかなかったから右折してしまった。

「人によるとは思いますが、きっとそうなんですよね。僕も見逃しちゃいました。」
やっぱりそうですか。なので取り締まりしてるんですよ

あれ?なんか、おかしく無いかな?お巡りさん、認識しにくいのがわかっているのに改善せずに、取り締まりしている?

本当はもっと聞きたいことがあったのですが、ある種、僕の趣味に付き合っていただくのは、お仕事の邪魔になってしまいますのでこの辺でお話し終了。お巡りさんも

「安全運転でよろしく!」

と笑顔でわかれました。

・・・

なぜそのルールが必要なのかを考えているのか

さて、ここで、考えて行きたいと思います。そもそも、この場所の右折禁止はなんのためにうまれたルールなのでしょうか。

推測とはなりますが、ここは、右折をした先に、すぐ踏切がある交差点です。また、ここは国道5号線で交通量もそれなりにある。このため、踏切がおりている瞬間に、南から左折車、北から右折車、そして東から直進車が来ると、交通渋滞が発生してしまうことからこのような形になったと想像できます。

あくまでも渋滞を起こさないためのルール。いわば予防のためのルールです。

先日は自分も違反をしてしまったという心理状態もあり、冷静じゃなかったかもと思いましたが、改めて道路を走行し、標識を注意しながら見てみましたが、ここの交差点においては交通標識が認識しにくい。

「まるで隠し看板のようだ。」というわけではなく、やけに風景に馴染んでしまっていて認識しにくいと言った感じでしょうか。そして、これはお巡りさんの発言からも多くの人がそうであるということを物語っています。

やっぱりそうですか。なので取り締まりしてるんですよ
と言っているくらいですから

きっと、警察としては、取り締まりをすることで、違反者を増やさないというロジックなのでしょうが、「予防のためのルール」という概念を考えると、いささかアプローチの仕方が効率的ではないようにも思えます。

・・・

アプローチの手法

僕の推測では、この場所で解決したい課題とそれに対するアプローチは以下のとおり。

渋滞を起こさないようにしたい
1.右折を禁止にすることで渋滞緩和できそう
2.右折禁止のルールを作ろう
3.ルールを守ってもらうのに道路標識を掲げることで人々の動きを変えよう

しかし、このルールを作ったのに、違反をしてしまう人が続出しているようです。
それに対し、警察が現在行っているのは、取り締まり(待ち伏せ)をして違反者を捕まえることによりルールを守る人を増やすというアプローチ。ただ、私自身20年強車を運転していますが、この場所が右折禁止だったということに気がついたのはつい先日です。ということは、

取り締まりをして違反者を捕まえても、その違反者に対しては効果はあるが
それ以外に対する周知力は無いに等しく、効果が薄い

と考えられます。

・・・

そもそもこの「取り締まり(待ち伏せ)」という行為は

3.ルールを守ってもらうのに道路標識を掲げることで人々の動きを変えよう
4.道路標識などによりルールを広く周知(そしてみんながルールを把握)
5.運転者が、ルールを認識しているのに無視する
6.ルールを無視する悪質運転者取り締まり罰する

ためにあるものと考えられます。しかし、先ほどのお巡りさんの考え方はどうでしょうか。

3.ルールを守ってもらうのに道路標識を掲げることで人々の動きを変えよう
4.道路標識などによりルールを広く周知
5.違反者が続出。話を聞くと標識が認識しにくく、みんながルールを把握できていない可能性があることを知る
6.認識しにくいのはとりあえず横に置く
7.違反した運転者を捕まえルールを伝える(反則金と共に)

こんな状態です。
本来は「ルールを守ってもらう」ことが重要なのですが、ルール把握できていない事実を知っているにもかかわらず、それを改善せず、「違反者を捕まえる」という行為が目的化しているように感じられます。

「取り締まる」という時間が2時間あったとすれば、その時間に「右折禁止ですよ」という掲示をして路上に立っていた方がもしかしたら効果的なのかもしれません。

現在の状況、ある意味これはマッチポンプであるとも言えます。

しかし、なぜこんな状況になってしまっているのでしょうか。
適正な思考が組織内にあれば、そこまで深く考えずとも「道路標識の出し方がまずいのではないか?」と考えつくようなものですが、なぜかそれができていない。この状況、どこの組織でも同じようなこと、言えませんか?

前例踏襲

そうです。前例踏襲。
僕は地方公共団体内部しか知り得ませんのでn=1の話ですが、少なくとも僕の知る限りでは地方公共団体もかなりの前例踏襲主義であり、「なぜそれをやっているのか」自体を考えることがかなり少ないと感じます。

ただ、この、前例踏襲は悪かと言われれば、そうでは無いとも思っておりまして、往々にして組織とは「効率化」を図っていくものですから、「絶対的にうまくいった前例」があるのであれば、それを踏襲した方が効率的かつ効果的なはずです。

しかし、世の中は変化するものです

先程の件、ルールを施行した当初では、もちろんちゃんとした標識を出しているつもりですから、違反者として取り締まりをしていたはずです。「ここは違反が多いから重点的に取り締まること」として言われ、疑いもなく取り締まりをしているはずです。

でも、どこかの時点で確実に「認識しにくい」という声は上がっていたと思われます。

やっぱりそうですか。なので取り締まりしてるんですよ
と言っているくらいですから

しかし、ここで

「そうか、ここのルールとしては渋滞を作らないために右折をさせないが目的なので、標識が認識しにくいのは本末転倒。工夫しよう。」

と、誰かが行動を起こしてくれれば変わっていたのかもしれませんがー・・・結果として現在まで前例踏襲がされていたと考えられます。
いや、もしかしたら、中には変化させようと頑張った人がいたのかもしれませんが・・・

改善に使うカロリーはコストでは無い

ここまでの内容、現在DXをする上でどの組織でも言われていること、そのものだと思いませんか。そうなんです。DXをやる前に機運醸成と言われているのはまさしくここで、組織全体において「変化すること」を意識していかなければなりません。

組織が大きくなればなるほど、数多くの前例踏襲があるとは思いますが、まずはその全てを「本当にそれでいいんだっけ?」と考えてみることが必要かもしれません。

確かに、考え、そして実践することは多くのカロリーを消費します。しかしそのカロリーはコストではなく、新しい時代に向かっていくために必要なものでもあります。

「私以外の誰かがやるでしょう」ではなく、みんなで考える。
そして、今の当たり前に問いを立て、もう一度生活や行動をリデザインする。

そんなことが、今まさに必要になっているのかもしれません。
みんなで、いっしょに考えて行きたいものですね!

P.S.
ちなみに、先日とある場所でお話しをしたのですが、その際の資料を公開したところ意図せず人気がでました。きっと、わかりやすいのかもしれないので、ぜひ見てみてください。
ただし、わかりやすさを重視していますので、その筋の人たちが見れば「厳密にいうとそこ飛ばしすぎじゃね?」という部分もあったりすると思いますが、意図的にやっていたりする場合もありますので、ご了承ください。


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