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緊急事態宣言と育児休業について

コロナウイルス感染のリスクをさげるために育休を延長したいけど、後述する厚労省のQ&Aを読んでもよくわからない、会社が育休の延長を認めてくれない、といった意見を多く頂きました。私自身未就学児が2人いる親として、そして弁護士として、なるべくわかりやすく解説したいと思います。

1.保育園の休園と自粛要請

4月15日現在、緊急事態宣言の対象となっている多くの都府県の自治体で、保育園についても休園ないし医療従事者等や警察官等勤務が必要不可欠な場合以外は登園の自粛が要請されています。

2.育児休業の「延長」と「繰下げ変更」(コロナの前からある話)

育児休業の期間は、原則として子どもが1歳までですが、1歳の時点で保育園に入所できない場合に、子どもが1歳6か月まで延長でき、1歳6か月の時点でも保育園に入所できない場合には、子どもが2歳まで取得できます。これを「延長」といいます。
他方、それぞれの育休の期間内で1度だけ育休終了予定日(すなわち、翌日が会社に復帰する日となる。)を繰り下げることができます(たとえば、子どもが2019年6月生まれで2020年4月に復帰する場合に、同年5月に復帰を繰り下げたいなど。)。これを「繰下げ変更」と呼んでいます。繰下げ変更は、1歳までの育休期間においては終了予定日の1か月前までに、1歳6か月までと2歳までの期間については、それぞれ終了予定日の2週間前までに会社に申し出る必要があります。それぞれの期間において、1度ずつ「繰下げ変更」をすることができ、会社は拒むことはできません(すなわち、会社の承認は必要ない。)

3.コロナウイルス対策による変更(育休の延長・再取得が可能に)

コロナウイルス対策によって新しく変更になったのは、育休の主な延長事由である「保育園に入所できない場合」という要件に、「保育園が休園した場合や、登園を控えるように要請された場合」もこれに含まれることになったことです(令和2年3月26日の育児介護休業法施行規則改正)。
以下の記事では、育休を「延長」できるとあります。1歳の時点での「延長」や育休期間中の「繰下げ変更」の申出期間を切った場合の「延長」はもちろんできますが、育児休業から一度復帰している場合も、子どもが1歳までであれば、再度の育児休業(一度育休が終了して会社に復帰した場合の「延長」)も可能になります(個人的には、一度復帰した場合に「延長」というとややこしいので、「再取得」という方がわかりやすいですが。)。
たとえば、一度保育園の入所が決まって復帰したとしても、今回のように保育園が原則休園となった場合、「保育園に入所できない場合」と同じように扱われることとなり、育児休業の延長(再取得)が可能となります(ただし、1歳6か月までの期間についての育休の延長(再取得)は、1歳の時点で育休中であることが要件となり、2歳までの期間についての育休の延長(再取得)は、1歳6か月時点で育休中であることが要件となります。)。

4.まとめ

現在育休中で、お子さんを保育園に入園させるのが心配であったり、お子さんの面倒を見ながらテレワークは困難という方は、育休期間の「繰下げ変更」を、一度復帰している場合や、繰下げ変更の要件を満たさない場合は、育休の「延長」(再取得)を検討してみてはいかがでしょうか。以下の厚労省のQ&Aもご参考まで。

新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)より引用

<育児休業から復職予定だったが、保育所への登園自粛を要請された場合等の育児休業の延長>
問6 保育所に子どもを入所させて復職する予定でしたが、市区町村等からその保育所への登園自粛の要請を受けたため、当面子どもを保育所に預けないこととしました。こうした場合、育児休業の延長ができるのでしょうか。 

<子どもが1歳までの場合>
現在育児休業中であれば、事由を問わず、1回に限り育児休業の終了予定日の繰下げ変更(最長1歳まで(※1))を申し出ることができます(※2)。法令上は1か月前までに申し出ることとなっていますが、労使で十分に話し合ってください。また、育児休業から一度復帰している場合も、再度の育児休業(最長1歳まで(※1))を申し出ることができます。
(※1)両親がともに育児休業をする場合、一定の要件を満たせば最長1歳2か月まで(パパ・ママ育休プラス)
(※2)1歳から1歳6か月までの休業、1歳6か月から2歳までの休業それぞれについても同様に繰下げ変更の申出が可能。

<子どもが1歳又は1歳6か月になるときの場合> 子どもが1歳又は1歳6か月になるときに、引き続き育児休業をしたい場合には、1歳からの休業であれば最長1歳6か月まで、1歳6か月からの休業であれば最長2歳までの育児休業を申し出ることできます。これらのいずれの場合についても、事業主は、労働者からの申出を拒むことはできません。また、育児休業給付金は支払われます。

(参考)育児・介護休業法に基づく育児休業の要件○育児休業をすることができるのは、原則として子が1歳に達する日までです。
○子が1歳に達する時点で、次のいずれにも該当する場合には、子が1歳に達する日の翌日から1歳6か月に達する日までの期間について、育児休業をすることができます。
①子が1歳に達する日において、労働者本人又は配偶者が育児休業をしている場合
②保育所に入所できない等、1歳を超えても休業が特に必要と認められる場合
○さらに、子が1歳6か月に達する時点で、次のいずれにも該当する場合には、子が1歳6か月に達する日の翌日から子が2歳に達する日まで育児休業をすることができます。
①子が1歳6か月に達する日において、労働者又は配偶者が育児休業をしている場合
②保育所に入所できない等、1歳6か月を超えても休業が特に必要と認められる場合


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