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【2020年度診断士試験】コロナ禍で合格者を増やしたのは○○な人々だった

2020年度中小企業診断士試験の最終結果が1月5日に発表されました。
合格された方、おめでとうございます。
今年はコロナ禍で状況が今までと異なる中、試験対策は色々と大変だったかと思います。
また、これから始まる実務補習や診断協会のイベントなども今までと異なり、混乱が続くと思います。
従って、まずは出来るところから手を付けられると良いと思います。

さて、先日の私のブログでは、診断協会から発表されている1次試験の統計情報を見てみました。

今回のブログでは、2次試験(筆記+口述の最終結果)の統計情報を見てみたいと思います。
なお、前回、統計資料は2013年度から公開されている、と私は書きましたが、正しくは2004年度から公開されていました。お詫びいたします。
今回は2004年度からのデータを使っています。

辞退率

試験を申し込んだにもかかわらず、会場に来なかった人の割合です。

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例年にない高い辞退率で、2020年度の1次試験と同様の傾向でした。
今年は筆記試験を辞退した場合、2次試験受験の権利が来年に自動的に移行しますので、辞退を選んだ人が多かったのだと思います。

では、コロナ禍でどういった属性の方が合格者のシェアを伸ばしたでしょうか。
属性毎に、2019年度までのシェアと、2020年度のシェアを比較することで、2020年度に何か特別なことが起こったのか推測することにします。

今年は、在宅勤務の実施や、1次試験から2次試験までの日数がいつもより長い、など、合格者のシェアを変化させる要因がいくつかあると考えます。

合格者シェア

(1) 男女別

男女

1次試験と同様、女性のシェアが上昇中です。女性シェアは近年増加傾向であり、コロナの影響は少ないと考えます。

(2) 年齢別

年齢

昨年比で、20代、30代のシェアが増加、40代、50代のシェアが減少しました。これは2020年度1次試験と全く同じ傾向でした。
30代以下の方々の健闘が目立ちますね。

(3) 受験地区別

受験地区

受験地区別は2006年からデータとなります。
昨年比で、東京のシェアが増加、大阪のシェアが減少しました。これは2020年度1次試験とは逆の結果です。大阪地区は2019年度にシェアを伸ばしましたが、今年は平年並みに戻った、ともいえそうです。

(4) 勤務先別

勤務先

このグラフだけ縦軸を対数にしています。
2020年度は政府系以外の金融機関勤務者のシェアが増えています。シェアが2桁になったのは7年ぶりです。
一方で学生層は、2020年度1次試験のシェアが昨年比で2倍でしたが、2次試験では昨年比1.7倍に落ち着きました。

1次試験との相関

2次試験合格者のシェアは1次試験合格者のシェアの影響を受けると考えられます。そこで、1次試験と2次試験の相関係数を見てみたいと思います。
相関係数は2つの数字の動き方に関連があるのか無いのかを見る指標で、1に近いと強く相関、マイナス1だと反対の相関、ゼロは無関係、となります。

なお、2次試験は前年度の1次試験合格者の一部も受験するので、厳密には前年度1次試験合格で次年度2次試験受験者のシェアを反映させる必要があるのですが、このデータは公開されていませんので、便宜的に同じ年度同士の合格者シェアを比較しました。

(1) 年齢別の1次試験と2次試験の相関

まずは2004年度から2019年度まで、1次試験と2次試験の年齢別のシェアについて、相関係数を計算してみます。

相関-年齢

20代~60代で相関係数が大きくなっています。
つまり年齢別では、1次試験合格者シェアが多い年は、2次試験もその層のシェアが多くなるといえます。

30代だけグラフ化すると以下のようになります。

相関-30代分布

相関が強い場合は上の図のように直線近似が有効です(回帰分析といいます)。この近似を行うと1次試験の結果から2次試験の結果が予想できます。
ここで、2次試験のシェアについて
 ・2019年度までの結果から2020年度の結果を予想した値
 ・実際の値
を比較して、2020年度が特異な年だったのかどうかを見てみます。

2020年度2次試験合格者シェア

相関-年齢予測

結果は、
・20代と30代は、予想されるシェアより増(それぞれ4.6ポイント、3.8ポイント)
・40代、50代、60代は予想されるシェアより減 (それぞれ4.4ポイント、2.2ポイント、1.6ポイント減)
となっています。

今年は、1次試験で奮起した30代以下の人たちが、2次試験でもさらに加速し合格者シェアを増やした、という状況に見えます。

(2) 受験地区別の1次試験と2次試験の相関

1次試験と2次試験の相関は以下の通りです。

相関-地区

  ほどほどの相関があるのが、札幌、仙台、東京、広島
  相関ほぼゼロが、大阪と名古屋
  中間が福岡
という結果になりました。
(受験地区は沖縄もありますが、1次試験だけなので除外しました)。

大阪と名古屋の結果は不思議です。1次試験合格者のシェアが上がっても下がってもその年の2次試験合格者のシェアには無関係、ということになります。

1次試験と2次試験の相関がある4地区のみ、予想シェアと実際のシェアを比較してみます。

2020年度2次試験合格者シェア

相関-東京

やはり、東京地区は1次試験のシェアから予想される結果よりシェアを伸ばしているようです

前回のブログでご紹介したとおり、東京の1次試験合格者のシェアは2020年度は前年比で減少していました。2020年度の2次試験では逆にシェアを増やしていますので、東京地区の人々は2次試験で挽回したように見えます。

(3) 勤務先別の1次試験と2次試験の相関

相関-勤務先

1次試験と2次試験の相関係数は小さく、関連がないように見えます。

先ほど述べたとおり、政府系以外の金融機関勤務のシェアは2020年度は2ケタに乗せましたが、1次試験のシェアが増えたから、と言うわけではないようです。

まとめ

上記の結果からは、コロナ禍での診断士試験で健闘したのは、

1次試験でいつもの年よりシェアを取り、2次試験でさらにシェアを伸ばした、30代以下の人々
1次試験のシェアを下げながらも、2次試験で挽回しシェアを伸ばした、東京地区の人々
2次試験のシェアを2桁にした政府系以外の金融機関勤務の人々

といえそうです。
この結果はコロナとどのような関係があるのかは、憶測になりますが、

東京の30代以下の人々(特に政府系以外の民間金融期の方)がコロナ禍を強く意識して勉強を強化し、いつもより長い2次対策の時間を有効に活用して合格を勝ち取った
それ以外の層はコロナの影響が少なかったか、あるいはむしろ今回は辞退に回った

のように見えます。
来年の試験結果が出てから今年と比較してみると、何かがはっきりするかも知れません。

IT系企業に所属する企業内診断士です。