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【診断士試験】2次試験の受験者増加は○○な人たちにチャンスを与える

2021年度中小企業診断士試験の結果が2月2日に発表されました。コロナ禍で大変な中、合格された方、おめでとうございます。

これで、2021年度の診断士試験がすべて終わりました。

今年は合格者数が1,600人となり、統計が取れる2004年以来、過去最高の合格者数となりました。
ただし、合格率はここ最近と同程度の18.3%でしたので、相変わらず厳しい試験だったと思います。

なお合格率は、2015年頃から19%前後で推移しています(最近はむしろ合格率は低下気味です)。

合格率は変わらないので、合格者が増えたのは、母数が増えた、つまり1次試験を突破し、2次試験の受験者数が多くなった結果、と言えます。

1次試験の合格者が増え2次試験の受験者数が増えるような環境下では、合格者の特性は何か変化が見られるのでしょうか。

診断協会から統計情報として、受験者の属性毎の合格数が公表されています。具体的には、性別・年齢・受験地区、勤務先が公表されていますので、合格者の特性を調べることが出来ます。

過去にこのデータを利用して、何が分かるのか、いくつかブログを書いています。

https://note.com/takuya_miyazaki/n/n612bb1d9e916

ブログでは、年ごとの合格者属性を「シェア」という概念で見ています。

ある属性の合格者数が増えたのは、単に合格者全体が増えたからなのか、他の属性の人たちよりも頑張ったのか分かりません。一方、シェアを見ることで、何か特別なことが起こったのか見ることが出来ると考えています。

では早速見てみましょう。

合格者シェア

■男女別

女性シェアが急上昇し、2021年度は10.8%となりました。
統計が取れる2004年以来、最高値です。

例年とどのくらい異なっているか視覚的に見るため、シェアのヒストグラムを作ってみました。

ヒストグラムとは、測定値を階級毎に区切って、その階級に属する数を積み上げていったグラフです。横軸が階級の区間、縦軸がその測定数になります。excelの「グラフ作成機能」で簡単に作ることが出来ます。
2021年の女性のシェアは、以下のヒストグラムの赤印の階級に属します。

ヒストグラムを見ると、2021年の女性のシェアは、明らかに今までの傾向とは異なっていることが見て取れます。
2次試験受験者数の増加は、女性シェアの増加につながったと言えるでしょう。

■年代別

中小企業診断士試験は、もともと30~39歳の合格者シェアが多い試験です。
30~39歳の2021年度は、昨年から引き続きシェアを増加させています。

さて、30~39歳の合格者シェアに注目してヒストグラムを作ると2つの山が見えました。
左側の山は2013年以降、右側の山は2012年以前のシェアでした。
つまり2013年を境に30~39歳のシェアがはっきり低下していると言えますす。

ちなみに2013年に起こった出来事をネット検索してみると、

「2020年夏季オリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決定」
「アベノミクス始動」
「日銀黒田総裁就任・金融緩和策実施」
「円安ドル高が進む」

などのキーワードが見つかりました。どんな年だったか思い出しましたか?

この年あたりから30代シェアが低下している(つまり他の年代の人が頑張り始めた)ことと何か関係あるのでしょうか。

さて、2021年に戻って30代のシェアを見てみると、左側の山の中でも一番右側ですので、30代のシェア復活の兆しと言えるかもしれません。

■受験地区別

受験地域別では一時的に低下していた東京のシェアが復活しつつあるように見えます。

ここでは仙台に注目し、ヒストグラムを作ると以下のようになります。

仙台のシェアのヒストグラムの山は2.2%~2.8%あたりにあるのですが、2021年のシェア4.9%はヒストグラムの右端で山から離れおり、いつもと違う傾向の年だったように見えます。

■勤務先別

相変わらず民間企業勤務のシェアが60%台と高くなっています。
(見やすいように、このグラフだけ縦軸を対数にしています)

ここで学生に注目してヒストグラムを作ってみると以下のようになりました。

2021年は学生の合格者が36名でシェアが2.3%と増加しています。
学生のシェアは、1%近くに大きな山があり、1.8%前後になだらかな山を持つ分布だったのですが、2021年度は一番右側に位置しています。やはり例年と異なっている傾向が見て取れます。

まとめ

合格者の属性をシェアの観点で見てきました。

いつもの年と変わらない点もありましたが、その中でも、女性・仙台・学生のシェア増加が目立ちました。

大都市在住で民間企業勤務の30代男性が圧倒的だった中で、このような合格者が増えることは、1次試験を突破し2次試験の受験者数が増えることは合格者の多様性に寄与しているといえます。

多様な属性の方々が合格し、診断士として活躍されるチャンスを得ることは良い傾向なのではと思いました。


IT系企業に所属する企業内診断士です。