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緊急事態宣言下にある地域の人々が、どの地域にどのくらい訪問したのか、V-RESASなら簡単にわかる

前回のnoteでもチラッとご紹介しましたV-RESASのお話です。

V-RESASとは、ざっくり言うと新型コロナによる経済活動の変化が見えるサイトです。グラフも表示できますし、データのダウンロードも出来ます。

このサイトの中にある、「都道府県を跨いだ移動」の情報は、スマホから得たGPSデータもとに作成されており、どの地域に住む人がどの地域へ訪問したか分かります(株式会社Agoopの流動人口データ(GPSデータを元に推計した人口換算値)を元に集計)。

こんなデータが無料で利用できるとはすごい時代になったものです。

一時支援金を受けるために必要な情報

さて、緊急事態宣言下にある地域の人々が、どの地域にどのくらい訪問したのか、ですが、実は「中小法人・個人事業者等」の「旅行関連事業者」が「緊急事態宣言の影響緩和に係る一時支援金」を受けるために必要な情報になっています。

資料のリンクはこちら

https://www.meti.go.jp/covid-19/ichiji_shien/pdf/summary.pdf

この資料から抜粋すると、支給を受けるためには、

所在市町村が、2021年1月以前から公開されている2016年以降の旅行客の5割以上が宣言地域内から来訪している市町村等であると分かる統計データ

が必要です。
言い換えると、以下の統計データを用意する必要があります。

その地域に訪問してきた人のなかで、緊急事態宣言を受けた以下の地域
栃木県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県
から来た人数が半数を占めることを証明する2016年以降の統計データ

元々これらの地域からの訪問者が多いので、新型コロナの影響を多く受けているにちがいない(顧客が減少している)、という理屈なのでしょう。

どうやって統計データを用意したらよいのか途方に暮れると思いますが、もちろんV-RESASから簡単に取得できます。
実は、一時支援金の説明資料にもV-RESASを使った情報の取得方法が書いてあり、さらに、自分でV-RESASを使うまでもなく、既に結果が出ています。資料の以下のページに載っています(緊急事態宣言の影響緩和に係る一時支援金の詳細、のP33)

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このページ自体を証明する書類にして良いそうです。

実際にV-RESASを使ってみる

前置きが長くなりました。今回のnoteでは、V-RESASを実際に使ってみて、緊急事態宣言下にある都道府県の人々が、どの地域にどのくらいの訪問したのかを見てみたいと思います。

V-RESASからダウンロードできる情報は47都道府県が分離しているので、まずは全都道府県ををくっつけたものを作ってみました。

V-RESASはどの都道府県から人が訪問してきたか、その比率を出力できます。訪問元を緊急事態宣言が出された地域に絞って、訪問先の都道府県を表示するexcelを作りました。

訪問先は上部のプルダウンメニューから選べるようにしています。例として長野県を表示させてみるとこんな感じです。

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人数は1週間毎の集計になっています。コロナの影響が今より少なく、年末年始の特殊要因もない期間として2020年2月1週を選びました。宣言地域からの訪問者の比率が全訪問者の中で65.5%でした。中でも、東京都、神奈川県、愛知県からの移動者の比率が多くなっています。
比率が50%を超えているので、長野県の旅行関連事業者は一時金支給の対象になります。

では宣言地域からの訪問者の比率はどのように変動をしたのか、V-RESASで取れる全期間分を全都道府県分、表示してみます。

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縦軸は宣言地域から訪問者の比率で、都道府県毎にグラフを描いています。
全部の都道府県が入っているのでグラフがごちゃっとしていますが傾向はつかめるかと思います。

去年4月の緊急事態宣言が出た直後、多くの地域で宣言地域からの訪問者の比率が下がっています。逆に東京都(グラフの一番上)はあまり比率が下がることはなく、減少したのは昨年末です。逆に昨年末は多くの地区で宣言地域からの訪問者の比率が上がっていて、この傾向は今年のGWでも見られました。比率が多いからと言って感染者数も多いとは限りませんが、感染防止にはあまり良くなかったと考えます。

ダウンロードはこちらから。

凡例のプルダウンから表示する都道府県を選べるようにしています。

さて、全期間の傾向をつかむために宣言地域からの訪問者比率の平均値を取ってみます。上位10位と下位10位はこちらです。

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トップはなんと言っても東京都ですね。自分自身も宣言地域ですが、周辺の神奈川県、千葉県、埼玉県も宣言地域なので、宣言地域からの訪問はどうしても多くなります。2位は茨城県、3位は群馬県と続きます。茨城県は首都圏からの訪問が多く、群馬県は特に宣言があった埼玉県からの訪問が多くなっていました。
下位3県は、岩手県、福岡県、島根県でした。福岡県は訪問者数自体は多いと思うのですが、宣言下にない九州地域内からの訪問者の比率が多いことが影響しています。

次に、宣言地域からの訪問者の比率が大きく変わった地域を見るために、宣言地域からの訪問者率の期間の分散を見てみたいと思います。分散が大きいほど訪問者率が激しく変化している、つまり2020年から人の流れの変化が大きかったことになります。

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トップ3は、石川県、新潟県、鹿児島県でした。
特に石川県はダントツの変化でした。緊急事態宣言で訪問者の構成比がガラッと変わったことを意味しています。これが観光客の減少だとすると、旅行関連事業者は困難な状況だと思います。
下位は、愛知県、大阪府、岐阜県でした。分散が小さいので、期間内で宣言地域からの来訪者の比率が大きく変わらなかったことを意味します。愛知と岐阜は両方とも宣言地域で、相互に行き来する人が多く、宣言下でもこの流れは変化しなかったようです。おそらく仕事などでどうしても行き来する必要があったのと思います。大阪府が高いのは、同じく宣言地域の兵庫県からの訪問者が多い影響です。

さいごに

今回、V-RESASで人の移動について調べてみて、日本の中でも濃淡があることがよく分かりました。診断士として全国の企業に関わる可能性もあると思いますが、まずはV-RESASでその地域の概況をつかんでみるのがよいのではと考えました。

IT系企業に所属する企業内診断士です。