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メトホルミンの抗ウィルス活性:糖尿病以外での新たな可能性

 メトホルミンは長年にわたって2型糖尿病の治療に使用されてきましたが、最近の研究により、その利用可能性が大幅に広がりつつあることが示されています。特に注目されているのは、メトホルミンが持つ抗ウイルス活性です。これらの効果は、世界中で発生している様々な感染症に対する新たな治療法としての可能性を秘めています。

 COVID-19パンデミック中、研究者たちはウイルスの蔓延を抑えるために様々な治療法を試しています。その中で、メトホルミンはその安全性プロファイルと広範な利用可能性から、注目されるようになりました。研究によると、メトホルミンはウイルスのRNA複製を阻害することにより、SARS-CoV-2のウイルス負荷を著しく減少させることが可能です。この作用は、メトホルミンがmTORパスウェイを抑制することによってウイルスのタンパク質合成を低下させることで実現されると考えられています。この機序を簡単に言うとウィルスはヒトの細胞が増殖する機能(mTOR経路)を利用してウィルス自体を増やす機序のことでメトホルミンはそのmTOR経路の活性化を抑制するのでウィルスが増えなくなるんじゃないか?という理論みたいです。今回紹介する論文で明らかになった事の一つに多少体調が悪くてもメトホルミンは比較的安全に内服できるって事が示されたのは良いことだと思います。コロナに感染して発症してから内服開始してますし。メトホルミンの副作用に乳酸アシドーシスってのがあって体調悪い時に服用すると危ないよって言われていたので。

 最近の研究では、メトホルミンが心血管疾患のリスクを減少させる効果があることが示されています。これはメトホルミンが血糖レベルを低下させるだけでなく、血管の健康を向上させる作用があるためです。また、メトホルミンは、特定の心血管疾患のリスク因子であるインスリン抵抗性の改善にも寄与します。

 加えて、認知機能の保護という面でもメトホルミンの可能性が研究されています。アルツハイマー病を含む認知症のリスクを減少させる効果が観察されており、これはメトホルミンが脳内の糖代謝を改善し、炎症を抑制することによると考えられています。このような作用は、メトホルミンが神経保護作用を持ち、神経細胞の損傷を減少させることからも派生しています。

 抗老化研究の分野では、メトホルミンが寿命を延ばす可能性についても研究が行われています。カロリー制限と似た生理的効果を持つことから、メトホルミンは老化プロセスを遅らせ、健康寿命を延長する効果があると考えられています。これはメトホルミンが細胞のエネルギー効率を高め、ストレスに対する抵抗力を向上させることにより実現されるとされています。

 これらの研究結果は、メトホルミンがただの糖尿病治療薬以上のものであることを示しています。糖尿病の管理だけでなく、心血管病の予防、認知機能の保護、さらには健康寿命の延長という広範な健康問題に対して有効な手段となる可能性があります。これらの効果を踏まえ、メトホルミンの使用を考える際には、その多面的な利益を理解し、医師と相談しながら適切な用途を見極めることが重要です。


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