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メトホルミン:糖尿病治療薬から多面的健康サポーターへ

 メトホルミンは、長年にわたって2型糖尿病の治療に使用されてきた薬剤ですが、最近の研究により、その利用可能性が大幅に広がりつつあることが示されています。特に注目されているのは、メトホルミンが持つ抗ウイルス活性です。この効果は、世界中で発生している様々な感染症に対する新たな治療法としての可能性を秘めています。

 COVID-19パンデミック中、研究者たちはウイルスの蔓延を抑えるために様々な治療法を試しています。その中で、メトホルミンはその安全性プロファイルと広範な利用可能性から、注目されるようになりました。研究によると、メトホルミンはウイルスのRNA複製を阻害することにより、SARS-CoV-2のウイルス負荷を著しく減少させることが可能です。この作用は、メトホルミンがmTORパスウェイを抑制することによってウイルスのタンパク質合成を低下させることで実現されると考えられています。

 最近の研究では、メトホルミンが心血管疾患のリスクを減少させる効果があることも示されています。これはメトホルミンが血糖レベルを低下させるだけでなく、血管の健康を向上させる作用があるためです。また、メトホルミンは、特定の心血管疾患のリスク因子であるインスリン抵抗性の改善にも寄与します。

 加えて、認知機能の保護という面でもメトホルミンの可能性が研究されています。糖尿病は、心臓や腎臓などの臓器に悪影響を及ぼすだけでなく、脳にもダメージを与えて、認知症のリスクを高めることが知られています。認知症は、記憶や判断力などの認知機能が低下する病気で、アルツハイマー病などの種類があります。

 最近の研究では、メトホルミンが認知症の予防にも効果的である可能性が示されています。カリフォルニア州の医療組織に所属する4万人以上の糖尿病患者を対象にした研究によれば、メトホルミンを早期に中止した患者は、メトホルミンを継続した患者に比べて、認知症の発症率が1.21倍高かったということです。この結果は、血糖値やインスリン使用などの要因による影響を調整した後でも変わらなかったとのことです。これは、メトホルミンが認知症の予防に有効である可能性を示唆しています。しかし、メトホルミンが認知症に対してどのようなメカニズムで作用しているのか、また、その効果が誰にとっても同じであるのかどうかなど、まだ解明されていない疑問も残っています。

 メトホルミンの抗老化効果についても注目されています。メトホルミンは、カロリー制限と似た生理的効果を持つことから、老化プロセスを遅らせ、健康寿命を延長する効果があると考えられています。これはメトホルミンが細胞のエネルギー効率を高め、ストレスに対する抵抗力を向上させることにより実現されるとされています。

 このように、メトホルミンはただの糖尿病治療薬以上のものである可能性が示されています。糖尿病の管理だけでなく、心血管病の予防、認知機能の保護、さらには健康寿命の延長という広範な健康問題に対して有効な手段となる可能性があります。これらの効果を踏まえ、メトホルミンの使用を考える際には、その多面的な利益を理解し、医師と相談しながら適切な用途を見極めることが重要です。いつから飲むのか?どのような人が飲むのがいいのか?どれくらい服用すれば良いのか?その作用機序は?などを考慮すると現時点ではやはり糖尿病の診断がついてから服用するのが良いと思います。もしくは随時血糖値が高い方も対象としても良いかもしれません。
 ただ、臨床試験の結果を待っている間にも確実に年齢は進んでいくのでどこで折り合いをつけるのかは難しいと思ってます。

https://www.medscape.com/viewarticle/metformin-drug-all-diseases-2024a10003s3?form=fpf


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