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本の紹介12冊目 栗下直也さんの著書『人生で大切なことは泥酔に学んだ』

今回紹介するのは、栗下直也さんの著書『人生で大切なことは泥酔に学んだ』です。

本書では、過去の偉人達(作家、政治家、俳優、スポーツ選手など)のしくじった泥酔エピソードを紹介しています。


以下で著者についてと特に勉強になったポイントをお話ししたいと思います。

【著者の栗下直也さんについて】

著者は大学院を卒業後、経済記者のかたわら、書評サイト「HONZ」や週刊誌、月刊誌などでレビューを執筆しています。

HONZでは新橋ガード下系サラリーマン担当を自認しており、紹介する本は社会科学系、人文系、ルポ、お酒の本が中心となっています。

【太宰治さんのエピソード】

太宰さんは、1936年に創作に専念するために熱海の温泉宿にこもっていました。

そこで、太宰さんの妻から滞在費を届けるように頼まれた檀一雄さんを巻き込んで、高級天ぷらを食べたり、遊女屋に行ったり、朝から居酒屋に行ったり、とにかくお金を散財していまいます。

太宰さんは、滞在費をあっという間に使い果たし、

「檀君、菊池寛さんの処に行ってくる。
明日、いや、あさっては帰ってくる。君、ここで待っていてくれないか?」

と言って檀さんは不安ながらに宿舎に残り、太宰さんは出かけていきます。

しかし、太宰さんは何日経っても帰ってこないので、檀さんは、しびれを切らした小料理屋のオヤジさんと一緒に太宰さんを探しに行くことになります。

そこで、まずは太宰さんの師匠筋である井伏鱒二さんの家を訪れます。

檀さん、は井伏さんの妻に太宰が最近こなかったかと訊くと「いますよ」との反応が返ってきました。

檀さんは障子を開け放って激怒しました。

「何だ、君。あんまりじゃないか」と。

なんと、太宰さんは井伏さんと将棋をさしていました。

そのまま、檀さんの怒声にパラパラと駒を盤上に崩してしまうのでした。

指先は細かに震えていた、血の気が失せてしまった顔だった。オロオロと声も出ないようである。

と語られています。

太宰さんは、檀さんののことを熱海に放置して将棋していることに絶望します。

そこで著者は、

泰然自若としていれば救いがあるが、見つかるとオロオロするあたり、やっぱりショボい。おまけに、若干、気持ちが落ち着いたのか、井伏が席を外した隙を見計らい、檀にこう囁くから始末に終えない。
「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね。」 
ちょっと格好良い台詞に聞こえるし、それっぽいことをいっているように聞こえる。ぜひ、恋人とのデートをすっぽかしてしまったときや、酔って知人をどこかに置き去りにして、後日、糾弾されたときにはこの台詞を使ってみてほしい。間違いなく切れられます。

このように、太宰さんは世間の印象とは違ったエピソードがあることを語られています。

【中原中也さんについて】

本書では、

人の人生も変えてしまうほどの酒乱の中原だったが、夭折したことも手伝い、教科書などで見かける写真からは繊細そうなイメージを受ける。とてもビール壜など振り上げそうもないが、嵐山光三郎の『文人悪食』(新潮文庫)によると、美少年として知られるこの写真は複写され、レタッチされた結果、本物の中原とはまるで別人になってしまっているという。
当時を知るものによるとしわくちゃのオッサン顔だったとの見方が支配的だ。

と語られています。

私たちがイメージしているような、中原さんと実物とはかけ離れていて、お酒で酔っ払うとビール壜で人を殴るような酒乱の方でした。

【最後に】

本書では、過去の偉人たちの泥酔にまつわるエピソードを紹介しており、私自身もお酒で苦い経験をしたことがあるので、少しでも前向きになれる本となっています。

ぜひ読んでみてはいかがでしょうか!

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