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本の紹介48冊目 『なぜ世界は存在しないのか』

こんにちは、TAKUです。

今日紹介するのは、マルクス・ガブリエルさんの著書『なぜ世界は存在しないのか』です。

この本では、「あらゆるものは存在するが世界は存在しない」という「新しい実在論」の原則を説明しています。

豊富な具体例を元に「なぜ世界は存在しないのか」を解き明かしていく一冊です。

【著者のマルクス・ガブリエルさんについて】

1980年生まれ。哲学者。ボン大学教授。

著者は、後期シェリング研究をはじめ、古代哲学における懐疑主義からヴィトゲンシュタイン、ハイデガーに至る西洋哲学全般について、一般書も含めて多くの著作を執筆しています。

「新しい実在論」を提唱して世界的に注目されています。

【3つの区分について】

「新しい実在論」を説明するにあたり、まずは「形而上学」「構築主義」を知る必要があると言います。

1.形而上学とは?

この本では、

形而上学が説明すべきことは、現実に世界がどのように存在しているのかであって、わたしたちにとって世界がどのように見えるのか、わたしたちにたいして世界がどのように見えるかは問題ではありません。

と語られており、人間の視点が無くても存在する世界観のことです。

2.構築主義とは?

構築主義については、

およそ、事実それ自体など存在しない。
むしろわたしたちが、わたしたち自身の重層的な言説ないし科学的な方法を通じて、いっさいの事実を構築しているのだ、と。

このように、あくまで人間から見た世界についての理論です。

3.新しい実在論

新しい実在論については、

この本では、

わたしたちの思考対象となるさまざまな事実が現実に存在しているのはもちろん、それと同じ原理で、それらの事実についてわたしたちの思考も現実に存在している、ということなのです。

と語られおり、これは形而上学と構築主義の良いとこ取りをしたようなイメージです。

【3つのヴェズーヴィオ山】

例えば2人がそれぞれの場所からヴェズーヴィオ山を眺めているとします。

この場合、形而上学ではただヴェズーヴィオ山そのものがあり、ここで存在している対象はたった一つだけです。

一方、構築主義では2人から見える2つのヴェズーヴィオ山があると考えます。

つまり、それぞれの視点でヴェブーヴィオ山が存在しており、現実の対象は存在していません。

そこで、新しい実在論ではヴェズーヴィオ山のそのものが存在していることに加え、2人の視点から見た思考対象も存在していることになるので、3つの対象が平等に存在すると考えられます。

【なぜ世界は存在しないのか?】

まず「宇宙」とは、自然科学(星や人体など、物理学)のことであり、これは宇宙とよばれるべきものであると言います。

そこで、「世界」全体の中に、宇宙・フィクション・芸術などが含まれていると考えます。

ここで大切になるのが、「意味の場」という考え方で、これは何かを考える際に「大きな思考の枠組みにおける視野」のことです。

そして意味の場にあらわれることを「存在する」といいます。

ここで、「世界」が存在するためには、世界があらわれる意味の場が必要になります。

ですが、世界は全てを包摂するはずなので、世界があらわれる意味の場はまた更に大きな世界の中になければならなくなり、世界は存在しないということになります。

わたしたちが生きている世界は、意味の場から意味の場への絶え間ない移行などの動きとして理解することができます。

なので、それらを包摂したひとつの全体は存在しないということです。

【最後に】

この本は、現代世界における「新たな実在論」をドイツ哲学界の新星が豊富な具体例を用いて紹介している一冊です。

ぜひ読んでみてはいかがでしょうか!

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