VOL.12「15分でわかる社会起業の一歩!その2!地域社会人大学院開校レシピ”一年間の軌跡”

2-5 第6回目

一つ目の大きな変化は、落合第一地域センターでの開催でした。我々のエリアでは、落合第二地域センターが最も便利なのですが、長期に渡りワクチン接種会場となり、施設利用がかなり不安定になってしまっていました。そこで少し距離はあるのですが、落合第一地域センターの施設を利用させていただくことにいたしました。

そしてもう一つの嬉しいことは、会の参加者から、新しく講師のご推薦、ご紹介をいただいたことです。この集まりに信用がなければ知人を紹介することはないはずです。地元で新参者が少しずつ信用をいただき始めたことを感じた出来事の一つでした。

1. 会場が変わることの不安

会場が変わると、使用設備も異なり、同じ区の施設でも少しルールも異なります。

例えば、落合第二地域センターでは、入館に際して、コロナ対策として検温活動を行ってくれています。私もその認識で参加者への「安心」を謳ってしまいましたが、実は検温をその場で行うのではなく、各自が事前にすることになっている施設でした。プロジェクターなどの機種も異なり、準備に思わぬ手間が発生したりします。またその日の講師が場所を第二地域センターと間違えて、ギリギリ間に合ったということもございました。何が起こるのか、まさしく「想定外」が起こりえます。

2. 生徒さんからの講師のご紹介

先ほど申し上げましたが、これはとても嬉しいことでした。私は基本方針としては、マスに対して特別な告知活動をするのではなく、参加者が参加者を呼んでくれて、そして自然な流れのなかで「講師をしてみたい」というふうになっていただくことを目指しております。

無理なく、「口コミ」でゆるやかに広がるのが本当の意味で長く続く良い組織であると思っております。

今回ご紹介いただいた方は日本ワイン会の権威の方で、もし仮に講座に参加したならかなり高額の参加費や講師代が必要な方であったかと思います。それを二つ返事でボランティアでやってくださり、本当にありがたかったです。これこそ人とのつながりのおかげで、まさしく“ソーシャルキャピタル”の経済効果であると思います。

1. 整理収納アドバイザーデビュー

もう一つの嬉しい発見は、整理収納アドバイザーという資格を取ったばかりの方のお話でした。一回の講義予定の振り分けとしては、基本的にジェンダーなどのバランスをよくするために、例えば、女性と男性、地域若手と地域ベテラン、固い講義と柔らかい話し合いなどかなり工夫をこらしております。

正直2時間のクラスの中で、どんなに良い話でも一方的に聞くだけのものは辛いし、また自由に好きに話す時間ばっかりでも、インプットが少なく、家に帰ってからの気づきが少なくなる懸念もあります。「今日はたくさん話せて楽しかったけど、あれ何勉強したんだったっけな?」インプットとアウトプットのバランスが肝要なのです。

「ワインのかなり専門的なお話」、そして「新人の整理収納アドバイザーの奮闘」(誰にも身近な話題である収納という世界についての講義)を掛け合わせることにより、会全体の満足度を意識しました。

ちなみにこの講師の方は、昔からのPTA卓球の仲間で、正直あまり人前で話すことが好きではなく、とても緊張する方でしたので最初はかなり不安でした。しかし講義でのお話を聞いていますと、入念にご準備をされていて、自信を持って素敵に話されていました。(最初は緊張したけど、途中から調子が出てきて楽しかったって言っていただけました!)

慣れないPCのパワーポイントを一生懸命に学習、作成し、その準備に至る過程は本当に感動ものでした。人の成長を間近でみられることは、この上なく幸せです。

「話すことなんてないよ〜」これは私が講師をお願いする際に必ず言われる言葉の一つです。しかしながらこのような講義をみると、「誰でも人に話すことがある」という大テーマは間違っていないと確信できます。話のうまさではく、誠実さは必ず聞いている人には伝わるものなのです。

2-6 第7回目

7回目は、次のことを意識して行いました。まず1つは、この活動を立ち上げてから知り合いになって、今は一緒にいることも多い「みんなのリビング」という西落合の団体代表者の方のお話、そして2つ目は、新宿区社会福祉協議会の部会でテーマに挙がった3つの地域議題を住民で考えようと、グループでのワークショップを開催しました。

1. 近隣の地域活動の方のお話

第一限は、「みんなのリビング」という地域活動のお話です。“誰でもいつでも気楽に立ち寄れるリビングのような場所を提供する”というコンセプトで、地元で活動を行っている団体です。

最初講師の方に依頼した時のポイントとしては、①自分の簡単な経歴、地元との関わり、②今の活動について、③これからの活動についてなどお願いしましたが、全てのお話が参加者の胸に刺さるものでした。自分の過去と現在の活動へのつながりを自身の体験を踏まえ、お話をいただき、訥々とお話しされたのですが、みんながその世界に引き込まれている様子がわかりました。評論家ではない“当事者の言葉”には力があります。

毎週土曜日のご飯のお裾分け、月に一度のパントリー、高齢者の見守りなど福祉活動を行っているのですが、「どこでやっているの?」「ぜひ私も参加したい」という問い合わせが多くあり、やはり人々の心に響く活動であることが実感できました。

また同時に、地域で素晴らしい活動をしている方とどんどん知り合いになり、つながってきました。そこでこの地域大学院の場を活用して、それぞれの活動のご紹介や代表者の想いを伝える場、交流プラットフォームとしての役割を意識して取り組むことを決意しました。

2. 住民の意見やアイデアの吸い上げの場としての役割

第二限は、新宿区社会福祉協議会の部会のテーマに挙がった地域課題について、大学院の生徒さんに意見交換、解決方法のアイデア出しをしていただくことにしました。

テーマは3つで、①「地域に住んでいるそれぞれの世代の状況についてわからない」②「困ったことが起きた時に、どこに相談していいのかわからない」③「地域住民が地域の中でお互いに声をかけていけるような仕組みがあると良い」でした。

このテーマをグループごとに、付箋に個々の意見を書いていただき、まとめ、そして発表をしていただきました。

目的は、市井に暮らす住民のお知恵を引き出し、地域課題の解決に役立つことがもちろんですが、裏ゴールは、参加者が地域大学院を通じて、「地域の課題」を把握すること、そしてそういう課題があることを認識することで、より自然とその場に直面した際に自覚、気づくことができると考えております。

人は自分の意識がないことは、認識さえできません。視界や記憶にも残らないものです。

以前もお話ししたかもしれませんが、私は自分の子供を授かるまでは、産婦人科や小児科のある病院が家の近くにこんなにあることを知りませんでした。毎日のように何年もその前を通っていても、子を授かり当事者になることで「初めて」気がつくことができました。

私が地域大学院メインのターゲットにしている方は、「地域や福祉に関心が薄い現役ビジネスマン」です。(もちろん、これは絞り込んだペルソナで他の属性の方のご参加も大賛成です。)私も含め、そういう方は社会で一般的に比較的恵まれている人生を歩んできたので、あまりそういう機会を考えないで(考える機会もなく)歳を重ねて参ります。

一方、女性はPTA活動などを通じて、他の地域に生まれ育ったとしても、地元地域とのつながりを持ち始め、地域でのコミュニケーションスキルも(処世術?)学習して参ります。しかしながら悲しいかな我が男性群は、リタイアするまで会社組織で多くの時間を費やすことがあまりにも長く、急に「地域社会の暗黙のルール」みたいなコミュニティにはどうしても違和感が出てしまいます。(会話もビジネスマンぽい、すぐに結論からいうと、みたいな)

そこでまずは地域大学院の参加を通じて、引退後の本格的な地域デビューの前に、少しずつ非営利そして会社看板を持たない人間関係、そしてビジネススキームではなかなか解決できない“制度の隙間的な課題”の存在に慣れていっていただければと思っております。

ちなみにこの意見交換のとりまとめは、社会福祉協議会の方がきちんとした体裁に整理してくださり、次回の部会で報告、共有をする予定でございます。

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次回は3/28の配信予定しております。

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