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【MTG】「神河:輝ける世界」NEOリミテッド環境詳解

0. はじめに

 「神河:輝ける世界」(以下、NEO)の主にドラフト環境についてまとめる。シールド環境については、ドラフト環境についての知識が役に立つため、先にまとめた内容を下地として最後に軽く触れる。なお、リミテッドの主力はアンコモン以下のカードであるため、基本的にアンコモン以下のカードについて言及する。

1. 環境概要

 NEO環境を一言でまとめると、「2ラウンド制の、テンポの大事なアドバンテージ環境」となる。これは、低マナ域から機能する「忍術」のメカニズムが優れていることと、緑のクリーチャーのサイズ感が良く、同時にアドバンテージ獲得手段が豊富に存在することが主な要因である。序盤の盤面干渉手段を持たない場合、忍術で好き勝手に動かれて大きな不利を抱えることになり、一方で後半のリソース勝負ができない場合、サイズとリソースの緑に押し潰されることになる。

環境定義

 そのためNEO環境では、以下の3つの中からいずれかの方針を選ぶのが基本になる。

[1] テンポ良く忍術で攻める。
[2] 序盤を凌いでリソースやサイズの緑で押し潰す。
[3] 上記2つに対抗できるデッキを構築する。

 なお、NEO環境は「テンポの大事な環境」ではあるが、「従来のテンポ環境」とニュアンスが異なる点には注意してほしい。
 「従来のテンポ環境」は、マナを無駄なく使い切りつつ、マナコストの軽い除去で相手よりもテンポアドバンテージを取って攻め続け、そのままライフを削り切ってゲームを終わらせる、というアグロ環境を指す場合がほとんどであった。
 しかし、NEO環境ではライフを詰めることよりも、リソース有利や盤面掌握の土台としてテンポが重要になる。その根拠になる「忍術」について、次章で確認する。

2. 忍術

 まず、忍術持ちは以下の通りである。

忍術持ち一覧

 これらの効果を大別すると以下の3つに分けられる。

・アドバンテージ獲得(リソース、ライフ、テンポ等)
・除去
・打点向上

 忍術は一度展開したクリーチャーを手札に戻す性質上、通常のクリーチャー展開に比べて、ゲームを通しての合計打点が伸びない場合がある。例えば、パワー2のクリーチャーを戻してパワー2の忍者を出す場合、余計な展開コストのぶんキルターンは伸びる。
 つまり、その本質は打点の向上以外のところにあるということで、特にコモンベースで実現できる以下のようなリソース有利を取る動きはゲームの勝敗に大きな影響を与える。

NEO環境の凶悪コモンムーブ

 2ターン連続パスはこのような動きをされるリスクを抱えるということであり、序盤もしっかり戦えるようにデッキを組むのがNEO環境の基本になる。この時、盤面に干渉できない英雄譚の2ターン目設置がリスクを孕むことも確認しておきたい。

河童 vs 英雄譚

 ただし、忍術にも弱点は存在する。それは、忍者のサイズが全体的に小さいということである。忍術持ち一覧を確認して貰えば分かるように、基本的にタフネス4の突破が難しいため、守備側はタフネス4の定着を目指すことになる。また、タフネス1の忍者も多いため、1/1クリーチャーを配置しておくだけで充分な牽制になる場合もある。

3. クリーチャーのサイズ感

3-1. 色別集計による確認

 概要で「緑のクリーチャーのサイズ感が良い」と述べたが、これは環境のクリーチャーのスタッツを色別で集計することで確認できる。また、忍者を止められるクリーチャーについても併せて確認しておきたい。
 以下、コモンの地上クリーチャーについて、マナ総量・色別で「平均パワー」と「平均タフネス」を集計した結果である。

コモンの地上クリーチャーの平均パワー
コモンの地上クリーチャーの平均タフネス

※補足
 このデータは集計用に一般化したものである。例えば、着地時に+1/+1カウンターを置いたりトークンを生成したり場合はそのぶんサイズに加算する、といった補正を行っている。このやり方は個人個人でブレのあるものであるため、集計結果には揺らぎが存在することを知っておいて貰いたい。

 この集計結果で特に注目すべきは4マナ以上のサイズである。平均パワーについては緑が他の色に比べて1ランク上のサイズになっている。平均タフネスについては、緑は4マナ域こそ最大値ではないものの、5・6マナ域で最大サイズになっている。
 また、「パワー4」の重要性も併せて確認しておきたい。以下は同様に、コモンの地上クリーチャーについてマナ総量・色別で「最大タフネス」を集計した結果である。

コモンの地上クリーチャーの最大タフネス

 上表から、青・黒は3マナ域から、白・赤・緑・無色には4マナ域からタフネス4のコモンクリーチャーが存在していることが分かる。ここで、改めて「平均パワー」の表を見てみると、緑だけがこのタフネス4集団を安定して突破できると言える。
 以上のことから、特に4マナ以上の緑のクリーチャーのサイズ感が優れていることが確認できた。具体的には下図が緑4マナ以上のクリーチャーで、いずれも緑の主力カードであるということは覚えておきたい。

緑4マナ以上のクリーチャー

 また、「最大タフネス」の集計結果から、パワー3以下の多い忍者は主に4マナ域以降の勝負で止められがちになると言える。環境概要で述べた「2ラウンド制」とは、3・4マナ域のタフネス4クリーチャーの定着、特にサイズ感に優れる緑によって引き起こされるものであるということもここで押さえておきたい。

3-2. 忍術や緑以外のクリーチャーについて

 NEO環境のクリーチャーについて考える際、上述のように「忍術を止められるか」という観点と「緑のクリーチャーと戦えるか」という観点を持つことが重要である。
 ところで、白赤の侍や、青赤や赤黒のアーティファクト・クリーチャーといった中速クリーチャー群は、環境のツートップに対して中途半端なサイズになっている。
 忍術をさせないためには、仕事を終えた1/1や2/1をブロックできることが必須である。そのため、低タフネスクリーチャーを主力とすることは基本的に許されない。逆に、忍者相手に攻勢に出る際にも、低タフネスであることは足枷になるだろう。

忍術に対するNGパターン

 では、対忍術を意識して高タフネスクリーチャーを多く採用すると、今度は緑のサイズ押しに対して弱くなる。アグロから遠ざかるほど緑のゲームスピードに飲み込まれやすくなるという点は注意が必要である。

緑に対し不利になる高タフネス構成

 このように、「忍術に対して強くすると緑に対して弱くなる」といった現象が今環境では発生する。構築戦でも「環境のデッキAとデッキBについて、一方に強くするともう一方に対して弱くなる」という現象がしばしば起こるが、類似の現象がNEO環境リミテッドでも発生していると捉えて問題ない。

4. 除去

4-1. クリーチャー除去

 クリーチャーのサイズ感を確認できたので、関連して環境の除去を確認する。まず、クリーチャーのスタッツに依存する除去は以下の通りである。

スタッツ依存除去

 また、広義の確定除去は以下の通りである。

広義の確定除去

 これらの一覧から、以下のポイントを確認できる。

・白はシステムクリーチャーに触りにくいが、種類は多い。
・青は除去の選択肢がほとんど無い。
・黒は確定除去が豊富で、低マナ域の攻防で使用できる除去も多い。
・赤は軽い火力が多いものの、ファッティにほとんど対応できない。
・緑は種類こそ少ないが、サイズに優位性があるので格闘2種は悪くない。
・エンチャントやアーティファクトが比較的多い。

 なお、タップ、バウンス、接死、生贄要求といった、確定性の低いその他除去は以下の通りである。青の除去の多くはこちらに該当し、テンポプレイを目指す場合のタップやバウンスが多いことは確認しておきたい。

確定性の低いその他除去

4-2. 《解呪》系除去

 リミテッドの環境分析をする際、アーティファクトやエンチャントの除去をメインボードに採用するべきか、という議論がしばしば行われる。置物系除去が比較的多いことは確認済みだが、それに加えて今環境はアーティファクト・クリーチャーやクリーチャー・エンチャントが非常に多いので、それらに対処可能な《解呪》系除去は複数枚採用しても問題ない。なお、アーティファクトとエンチャントの一方にしか対処できないものについてはサイドボード向きである。
 以下、今環境のアンコモン以下のアーティファクト・クリーチャー、機体、クリーチャー・エンチャントを色別で集計した結果である。

アンコモン以下のタイプ・色別クリーチャー数

 分布的には青と赤にアーティファクト・クリーチャーが多く、白と緑にクリーチャー・エンチャントが多い。両方に対処できる《解呪》系の除去が実質的なクリーチャー除去として機能しやすいことを確認できるかと思う。
 ここで、アーティファクトやエンチャントに対処できる広義の《解呪》系除去は以下の通りである。

広義の《解呪》系除去

 注目すべきは緑である。アーティファクトやエンチャントを追放できる《古代への衰退》がコモンから存在しており、アンコモンにも《機械壊しの河童》という優秀な忍者を保有している。緑は除去札においても環境適性が高いと言える。
 白も対処札の多さで目を引くが、両方に対処できる確定除去はアンコモンに限られる。そもそもクリーチャーにも対処可能な除去であるため、加点要素にはならない。

5. 打ち消し

 リミテッドにおいて、除去の少ない青は打ち消しで除去不足を補う場合がある。今環境の打ち消しは以下の通りで、特に能力も打ち消せる《鏡殻のカニ》の存在は覚えておきたい。

打ち消し一覧

 ただし、NEO環境の打ち消しの立ち位置は悪い。理由は3つある。
 1つ目の理由は忍術の存在である。1ターン目のクリーチャー展開から忍術経由でクリーチャーを出される場合、基本的に打ち消しは間に合わない。《鏡殻のカニ》の魂力で忍術能力を打ち消しても、場のクリーチャーが手札に戻るだけである。
 2つ目の理由は英雄譚の存在である。リミテッドは通常だとクリーチャー戦になるため、《本質の把捉》のようなクリーチャー限定の打ち消しが刺さりやすい。しかし、今環境は英雄譚がクリーチャーに変身してくるため、構えたターンが無駄になってしまうということが起こり得る。
 3つ目の理由は「魂力」の存在である。《鏡殻のカニ》であれば打ち消せるものの、他のカードは能力を打ち消せない。コンバットトリックとして優秀な魂力能力は多く、それらに対応できない問題がある。
 このように、打ち消しに対する裏目が常に存在しており、打ち消しを構えること自体にリスクが発生することは覚えておかなければならない。ただし、《鏡殻のカニ》に限っては有効な場面が多いため、クリーチャーとしてキャストすることも視野に採用する場合は他の打ち消しに比べると多い。

5-1. 魂力

 「魂力」についてもここで確認しておく。魂力は、それを捨てることをコストに含む起動型能力である。魂力能力持ちは以下の通りである。

魂力一覧

 効果を分類するとおおよそ以下のようになる。

・クリーチャー生成
・クリーチャー強化
・除去
・打ち消し
・リソース関連

 緑と青に多く存在しており、黒には存在しない。傾向としては、重いクリーチャーに使いやすい魂力能力が付いているものが多い。本来性能と魂力能力の両方がプレイアブルなものが多く、状況に合わせて使い分けられる点が優れている。

6. 環境のアドバンテージ獲得手段

 続いて、NEO環境におけるアドバンテージ獲得手段を確認する。なお、忍術関連の既に触れた部分は割愛する。

6-1. 英雄譚

 NEO環境には3章でクリーチャー化する英雄譚が収録されている。

英雄譚一覧

 クリーチャーになるまでに2ターン掛かるぶん、クリーチャー面のスタッツや能力は同マナ域のクリーチャーに比べて高い傾向にある。
 英雄譚の1章・2章は以下のような効果を持っている。これらの効果を有効活用できれば、直接的・間接的にアドバンテージを獲得することができる。

・手札の質向上
・リソース追加
・クリーチャー強化
・クリーチャー除去
・ライフ有利

 つまり、通常よりも高性能なクリーチャーにメリット能力が付いている、というのが今環境の英雄譚であり、これらの活用を意識したデッキ構築が求められる。例えば、クリーチャー強化の効果を持つ英雄譚を採用しているのであれば、それよりも前にクリーチャーを展開しておくことが必須である。また、クリーチャー化するまでに時間が掛かるため、それまでに盤面を維持する方法も別途用意しておくことが重要である。

6-2. ETB能力、死亡時能力、LTB能力

 アドバンテージ獲得手段として、場に出た時(Enters the Battlefield; ETB)能力や死亡時能力の活用は重要である。上述の英雄譚もある種のETB能力と言えるだろう。NEO環境ではそれらに加え、場を離れた時(Leaves the Battlefield; LTB)能力が存在しており、忍術と組み合わせて活用できるようになっている。

# 6-2-1. 再利用手段

 まず、ETB能力、死亡時能力、LTB能力を再利用する方法は以下の通りである。忍術については既に述べたので割愛する。

能力の再利用手段

 注目すべきは、ドラフト時のデッキ再現性を支えるコモンについてである。各色について確認してみると、青と緑に使いやすいものが揃っていることが分かる。これに忍術持ちが加わるため、青・黒・緑は能力再利用の手段が豊富であると捉えられる。
 また、アーティファクトかエンチャントに限った再利用がいくつか存在する点も確認しておきたい。具体的な再利用候補を見ていく際に、アーティファクトかエンチャントのいずれかである場合には加点対象となってくる。

# 6-2-2. 忍術の種候補

 ETB能力やLTB能力を持っていて、かつ低マナや回避能力持ちのクリーチャーは忍術の種になりやすい。具体的には以下が該当する。

忍術の種候補

 忍術のメインカラーは青黒で、上図の通り種になるクリーチャーも青黒に多い。しかし、無色のクリーチャーを種として忍術を狙えるのも今環境の特徴で、青黒以外のデッキで強力な忍術持ちが取れた際にはこれらを意識的に集めておくと良いだろう。

# 6-2-3. その他の有力なETB・LTB能力持ち

 上記以外の、実戦で活用する機会の多い有力なETB・LTB能力持ちは以下の通りである。ピック中はこれらを活用する組み合わせを意識したい。特に、アーティファクトとエンチャントの両方のコントロールが必要な《恐るべき秘密の神》については、アーティファクトとエンチャントをそれぞれ8枚程度確保する意識でピックする必要があるだろう。

有力なETB・LTB能力持ち

 以上、NEO環境のアドバンテージ獲得手段を確認した。ETB・LTB能力の再利用手段の豊富さの関係で、青・黒・緑がアドバンテージを獲得しやすくなっており、5色のうち3色が含まれることからアドバンテージ勝負が発生しやすいことがイメージできたかと思う。

7. 環境的に弱いメカニズム

 ここまで、クリーチャーサイズやアドバンテージ獲得といった観点でNEO環境を確認してきたが、それらの説明に該当しないカード群・メカニズムについても確認しておく。これらは環境的に弱いメカニズムという扱いではあるが、どういった問題点を抱えているのか確認しておくことは環境理解の助けになるだろう。

7-1. 機体

 NEO環境には、搭乗時にパワー+2補正のかかる「操縦士」や、搭乗以外の方法で機体をクリーチャー化する手段が用意されている。しかし、下図の機体サポート系カード一覧から分かるように、継続的なクリーチャー化を狙えるものはアンコモンに限られる。

機体サポート

 そもそも「機体」は、搭乗者と機体を同時に盤面に揃えておく必要があるコンボチックなメカニズムである。搭乗コストの高い機体はリミテッドにおいて引きの影響を大いに受けてしまう。逆に搭乗コストが低いと性能も低くなりがちで、コンボ要素のあるメカニズムを使用する理由が弱くなる。

機体一覧

 また、今環境の2トップに対して弱いという問題が特に大きい。「忍術」に対しては機体を出すターンに隙が生じやすく、「緑軸」に対しては《古代への衰退》等によって機体を除去されてしまう可能性が高くなっている。「アーティファクトである」という点をメリットと捉えて数枚採用する場合がある、程度に考えておくと良いだろう。

7-2. 侍(単独アタック)

 侍は横展開と単独アタックを組み合わせるメカニズムである。しかし、リミテッドにおいては「横展開した後にフルパンチ」のほうがライフレース面で効果的な場合がほとんどで、侍のメカニズムは合理的ではない

侍メカニズム

 強いて言えば、これらの侍は《解呪》系除去に当たりにくいシステムクリーチャーであるため、除去に偏りのある相手には除去耐性がある。ただし、《解呪》系除去を多く採用してくるのは緑系デッキであり、クリーチャーサイズの章で述べた通り、一回り大きいサイズのクリーチャーに立ち向かわなければならない、という不利を抱えている。

7-3. 改善

 装備品やオーラ、カウンター等で強化されたクリーチャーを参照する「改善」メカニズムは主に赤、次いで緑と黒に存在している。赤黒だとアーティファクト・クリーチャーが増えるため「換装」による改善達成を狙いやすくなり、赤緑だと+1/+1カウンターによって改善達成する場合が多くなる。改善を参照するカードは以下の通りである。

改善参照一覧

 改善の問題点は、手間に対して得られる恩恵が小さいところにある。改善を参照するカードは改善未達成時のカードパワーが全体的に低めで、改善達成後にカードパワーが高めになるように調整されている。そのため、改善達成を前提とした構築が必要で、ピック難易度が高く、プレイ中も引きに左右されてしまう。
 また、改善参照カードが基本的に盤面掌握に繋がる効果のものばかりで、リソース獲得手段ではないことも弱点である。メインカラーが赤である都合、緑のファッティを除去する術が限られており、緑と睨み合いになるとリソース負けになりやすい。

7-4. 換装

 上記の「改善」に関連するメカニズムとして、「換装」が存在する。今環境はサブタイプに「装備品」を持つクリーチャーが存在しており、これらのクリーチャーは換装能力によって装備品の状態とクリーチャーの状態を切り替えることができる。換装能力持ちは以下の通りで、赤・青・黒に多く存在している。

換装一覧

 おおよそ基本サイズのクリーチャーに装備品という選択肢が追加されているというもので、「改善」の達成を狙ったり、足りない打点を稼いだり、柔軟性の高いメカニズムになっている。
 ただし、換装には2つの弱点がある。
 1つ目の弱点は、換装コストの重さである。忍術絡みのテンポゲームをしている間は換装している暇が無く、相手のメリット持ちクリーチャーと対峙する必要が出てくる。換装後にクリーチャーの頭数が減ってしまうため、追加のブロッカーが必要になる、という点もコストに含まれる。
 2つ目の弱点は、全てがアーティファクトということである。《解呪》系除去が刺さってしまうため除去耐性が低く、特に換装コストを支払った後だと大きなテンポ損をすることになる。特に《解呪》系除去が緑に多いため、ロングゲーム指向のメカニズムであるにも関わらず、同じくロングゲーム指向の緑に不利が付きやすいのは大きな弱点である。

8. 単色評価

 以上のことを踏まえ、単色での評価を行う。

白 … ○
 ○ システムクリーチャーに触りにくいが除去の種類は多い
 ○ アドバンテージ獲得手段は並程度にある
 △ メカニズムが弱め

青 … ○
 × 除去が弱い
 ◎ アドバンテージ獲得手段が多い
 ◎ 忍術のメインカラー

黒 … ◎
 ◎ 除去が強い
 ◎ アドバンテージ獲得手段が多い
 ◎ 忍術のメインカラー

赤 … △
 ○ 軽量火力は多いが、ファッティの除去が厳しい
 △ アドバンテージ獲得手段が少ない
 × メカニズムが弱い

緑 … ◎
 ◎ サイズに優位性がある
 ○ 《解呪》系除去がクリーチャー除去も兼ねており、除去範囲は広め
 ◎ アドバンテージ獲得手段が多い

 順位付けすると、以下のようになる。

黒 ≧ 緑 > 青 ≧ 白 > 赤

9. 各色のデッキサンプル

 各色のデッキサンプルを掲載しつつ、その色で有効な戦い方を確認していく。以下のリストはMTGAプレミアドラフトでおおよそダイヤ帯以上で7勝したもので、17Landsで公開されたものを使用している。
 なお、本来は筆者自身のリストを掲載するほうが望ましいが、白赤等の明確に避けている色のサンプルが不足していたり、ランク帯不明の完走リストが含まれていたりするため、記事の精度を優先している。

9-1. 白青

 白青は「機体」が割り当てられている色だが、「機体」は弱いメカニズムである。そのため、このリストは英雄譚を中心としたアドバンテージ獲得を狙う構成になっている。ブリンク系の再利用手段が多数用意されており、クリーチャー化した英雄譚を繰り返し使用できる点が特徴的である。

9-2. 白黒

 白黒は、アーティファクトとエンチャントの両方をコントロールしている場合のメリット能力(開発中は「調和」や「均衡」と呼ばれていた)が存在しており、このデッキは両方の枚数を確保できるような構成になっている。
 搭乗1の《蜻蛉鎧機》が4枚採用されているのが特徴的で、《神憑く相棒》や《ウイルスの甲虫》のような優秀なクリーチャーを攻撃的に運用することを含め、様々な工夫がされている。

9-3. 白赤

 白赤の侍能力は弱いメカニズムである。そのため、このデッキは侍に偏らせず、《実験統合機》等のアドバンテージ獲得を意識した構成になっている。なお、《鏡割りの寓話》は今環境の赤のボムレアで、このキキジキ能力を有効活用できるようにETB・LTB能力持ちが採用されている。

9-4. 白緑

 白緑はエンチャントを中心としたアーキタイプである。このデッキでは14枚のエンチャントが採用されており、《気前のいい訪問者》の強化能力を誘発させやすくなっている。また、《魅知子の真理の支配》も優秀なカードで、大幅な打点上昇で勝利することを目指せる構成になっている。

9-5. 青黒

 青黒のアーキタイプは忍術である。青黒忍術はコモンベースで組めるためドラフトでの再現性が高いが、その中でもこのデッキは特にレアリティが低く、同じカードが複数枚採用された完成度の高い構成になっている。
 《当世》で捨てたカードを《隔離用構築物》で再利用できるようにも構築されており、アドバンテージの獲得が容易である。また、クリーチャーサイズの章で「タフネス4」の重要性について述べたが、それに対する回答として《装身》が用意されており、常に攻撃的に振るまえるようになっている。

9-6. 青赤

 青赤はアーティファクトを中心としたアーキタイプである。赤の軽量火力で序盤の攻防を有利に進め、ゲームが長引いてきたところで換装を絡めながら押し切る、というプランを狙えるように構築されている。
 アドバンテージのゲームにしにくいため、いかに押し切るかを考える必要があり、《鉄蹄の猪》が最後の押し込み手段として重要な役割を担っている。青の回避能力持ちを自然に採用できるので、それらを活用してライフを削っていくゲームになりやすい。

9-7. 青緑

 青緑は忍術と緑軸の両方の強みを活かす構築になる。環境的に忍術と緑軸が強いことを踏まえてピックを進め、黒が取れなかった場合にこの色になることが多い。青も緑もアドバンテージ獲得手段が豊富で、物量で押し潰すゲームプランを狙える。ただし、除去を充分に確保できない状況が発生しやすいため、相手のシステムクリーチャーに困る場合も多く、攻撃とリソース確保の切り替えが非常に重要になってくる。

9-8. 黒赤

 黒赤はマルチカラーアンコモンの《鬼流の金床》を中心としたデッキになりやすい。これを2枚設置できると毎ターントークンが増えていくため、盤面を固めつつライフレースで優位に立つという動きが狙える。生成されるトークンが1/1であるため一見すると緑のファッティに弱そうだが、トランプル持ちが少ないため意外と突破されにくい。
 除去が優秀な色で、赤の軽量火力で序盤を捌き、黒の確定除去でファッティを除去して、こちらのシステムを稼働させて勝つというコントロールのような振る舞いが可能である。また、豊富な除去で盤面をこじ開けて殴り切る攻撃的な形に組むことも可能で、赤黒は構築の幅が広い。

9-9. 黒緑

 黒緑はアドバンテージ獲得手段が豊富な緑軸に確定除去が追加された、緑軸のミラー勝負における最強のアーキタイプである。特に《地熱の神》によって《ねじれた抱擁》を回収する動きが強力で、そういったゲームになるとほぼ負けない。「緑軸」の中にもメタゲームが存在し、再利用可能な確定除去を採用できる黒緑が抜きん出ていることは意識しておくべきだろう。

9-10. 赤緑

 赤緑は主に+1/+1カウンターの改善アーキタイプである。《活力の温泉》によって改善済クリーチャーが速攻を持つため、ライフレースにおける奇襲性が高いという特徴を持つ。デッキの方向性としてはライフを素早く削り切ることを目指したいため、アドバンテージ獲得系のカードは少なくなりやすい。《神の火炎》でブロッカーを排除しながらライフを詰めていく動きは一貫性がある。
 なお、赤緑は緑のファッティに対する確定除去を持たないため、「緑軸」のメタゲームの中で最弱のアーキタイプである。サイズ押しの戦術も緑軸に対して刺さりにくく、いかに押し切るかが鍵になる。

10. シールド環境

 NEOドラフト環境では「テンポが大事」と述べたが、シールドではテンポプレイのできないカードプールが割り当てられることも多い。そのため、シールドでは「アドバンテージ環境」の側面が強くなる。
 アドバンテージについては前述の内容に加え、枚数の増えるレア・神話レアを加味する必要がある。色拘束の強いものやタッチしたいものが多いため、以下のような色マナサポートを活用する機会が増える。

色マナサポート ※2色土地は10種存在

 特に緑の色マナサポートカードが多く、元々の緑の環境優位性と合わさって、緑軸のデッキを構築することはシールドにおいて肯定されやすい。
 ただし、あくまでそういう傾向にあるということであり、プール次第で臨機応変にデッキを構築する必要があることは忘れてはならない。多色化することが目的になってデッキパワーが落ちる、という本末転倒な事態にならないように気を付けたい。
 なお、BO3の場合は話が少し変わってくる。アドバンテージの獲得を強く意識した構成に寄せると、序盤に隙が生じやすくなる。そのため、サイドボード後に突然アグロデッキに切り替える手法が有効になる。MTGAだとサイドボードの作業が大変という問題はあるが、可能であればサイドボード用のデッキも検討しておくと良いだろう。

11. まとめ

・NEO環境は、テンポで優れる「青黒忍術」と、サイズで優れる「緑軸」で定義される。両者の共通点は、アドバンテージ獲得手段の豊富さにある。

・「青黒忍術」と「緑軸」が上位勢力であるということを意識し、それらを使うのか、あるいはどう対抗するのか考える必要がある。特に「緑軸」に対しては除去の性質が重要になってくる。

 あくまでこれらが環境の基本であり、ドラフトでは席の奪い合いが発生することを忘れてはならない。強いアーキタイプを狙い過ぎると共倒れになるため、他の色の要所を押さえて柔軟にピックすることが望ましい。

12. おわりに

 今回の記事執筆にあたり、MTG Decklist Viewer 17Lands.com を活用させていただいた。感謝申し上げる。
 私の過去の記事を読まれた方はご存じかもしれないが、私はリミテッド記事が増えることを期待し、詳細な有料記事を書かれる方のモチベーションに影響しない範囲で環境の概要をまとめることが多かった。
 ただ、非常に我儘な話で、私が満足できる記事がなかなか見つからないという問題に今度は衝突した。個人の感覚や17Landsの統計のみが根拠のものが多く、合理的な説明が置き去りにされていると感じることが多かった。
 今回の記事執筆の動機は、自分が納得できるラインの記事はどの程度のものなのか、ということを明確にすることにあった。また、記事執筆によって何が得られるのか、ということを確認することも含みにした。
 今のところ、2週間の執筆から解放された充足感以外を感じられない状態になっているので、後日改めてこのあたりのことを確認し、今後のアウトプットの在り方を考えてみたいと思う。セカコロのような参加しやすい構築イベントが増えていくのであれば、そちらにも時間的リソースを配分できるように考えていきたい。

13. 付録

 ここまで読まれた方なら、以下に示す17Landsの統計を鵜呑みにするのではなく、「何故こういう統計になるのか」ということを考えられるようになっているかと思う。17Landsの統計は教材であると同時にカンニングペーパーである。勝つためには有効なツールだが、依存すると上達を妨げると私は思う。資産集めのために勝てれば良いのか、上手くなりたいのか、リミテッドのプレイ目的に合わせて活用すると良いだろう。

13-1. デッキカラー別勝率

 以下、NEOプレミアドラフト環境の色別勝率である。勝率と同時にゲーム数も確認しておくことで、卓内に何人程度許容される色なのかということも確認できる。なお、17Landsユーザーの平均勝率は55%程度あるため、全ての勝率が50%を超えている。

2色デッキの勝率統計

13-2. 色別のピック指標

 カード個別の強さを評価する際、「カードを引いた時の勝率」はひとつの指標になる。以下の図は、「カードを引いた時の勝率」(GIH)について、デッキカラーで絞った時に降順となるように並べたものである。カードに付随する数値は、小数点以下を四捨五入したGIHの値である。なお、デッキ毎に基準となる勝率が異なるため、複数の図を見比べる際にはGIHに差が生じることに注意が必要である。

# 13-2-1. 白青

# 13-2-2. 白黒

# 13-2-3. 白赤

# 13-2-4. 白緑

# 13-2-5. 青黒

# 13-2-6. 青赤

# 13-2-7. 青緑

# 13-2-8. 黒赤

# 13-2-9. 黒緑

# 13-2-10. 赤緑

以上。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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