筐体設計のお仕事2 〜CADを利用する際に気をつけたいこと〜

筐体設計屋のたくわんです。
前回は筐体設計の仕事概要を書きました。
今回は設計者の仕事道具「CAD」についての記事です。

使い方は専門のサイトや書籍にお任せするとして、この記事でCADでの設計の概要とCADを使用する際の考え方をお伝えできればと思います。

【CADとは】

CADとは3D形状を作ったり図面を書いたりできるソフトのことです。
作成した形状から解析シミュレーションを行うこともできたりします。

CADと言っても企業や職種によって様々なソフトがありますが、私は自動車系だったのでハイエンドCADと呼ばれるCATIA V5を使ってました。
(あとで自分で導入見積もりを取ってみたら目玉が飛び出る値段でした...)

ただその分機能も充実しています。
リンク付け機能(ある箇所が変更されると、リンクされた箇所も自動的に変わる機能)が優れていたり、単純なRでは表現できないような複雑な形状を取り扱えたり、プログラムを組んで自動的に形状を作れたりできます。
※プログラミングについて一応書籍や簡単な事例があります。ハードルは高そうですが...
https://www.amazon.com/VB-Scripting-CATIA-V5-program/dp/1480049492
http://www.nttd-es.co.jp/magazine/backnumber/no46/no46-plm.html

【設計基準から始める】

どこから形状を作れば良いのか。何を持って形状を決めていけば良いのか。
その全ての指標となるのが「設計基準」です。

設計基準とは、その企業の量産実績や信頼性試験、また過去のトラブルなどから構築された基準です。例えばある樹脂製品の厚みを考えるとき、大抵同じ部品・材料で同じような形状であれば、設計基準で「厚みは**mmとする」と決まっています。

基本は厳守しますが、どうしてもお客様要望により逸脱しなくてはならない場合は工場側と相談して詳細を決めます。

また当然ですが設計基準にもそれぞれ設定された理由があり、それを理解していないといけません。設計理由について「設計基準だから」という説明では誰も納得してくれません。

設計基準は意味を理解して保守する。必要あれば更新に動く。
膨大な基準に対して、根気が入りますがとても重要と思います。

【設計変更に対応できるデータ作り】

これはリンク付き機能を利用できるCADを利用している場合ですが、
必ず「変更に追従する」データを作る必要があります。

例えば、ある部品のデザインが変更されたとします。
そうすると設計基準を守っていた周囲の部品も変更しなくてはならず、
さらにその周囲の設計基準を守っていた部品も変更し、更に変更し…
と膨大な箇所の修正が必要となってしまいます。

ここでリンク付きデータであれば、元となるデータを修正すれば、関係性を保ったまま全て変更されます。

リンク無しデータでは、すべて変更しなくてはならず膨大な設計工数がかかってしまいます。データ作成の際は仕様変更を常に意識する必要があります。

【モデリングは無駄な時間】

CADでの形状作成は人によっては楽しく、結構夢中になります。

しかし簡易的な検討であればデータの作り込みは不要です。手書きでも2Dでも意図が伝わって、検討抜けが無ければ良いのです。そこら辺のさじ加減は難しいのですが…

ただ検討用データなのに、データ作成に何時間もかけてしまう人はよく見かけます。データができると成果物のように感じられますが、検討が進んで無いのであれば、データ作成に使った時間は全て無駄な時間と思った方が良いです。

【自分でできないことは人にやらせない】

ある程度の規模の会社ですと、CAD作成専門の人(CADオペレーター)が居たりします。彼らは専門にしているだけあって非常に早く、扱いやすいデータを作ってくれます。

CADオペレーターの方とやり取りする際、注意したいことが
「検討を依頼しない」ことと思います。

例えば、
「A部品とB部品とC部品の取り付け位置をバランスよく配置して欲しい。」とかです。

前提として、まずその設計ができるかどうかも分からないのに依頼するのはNGです。ある程度道筋ができて、あとは作り込むだけ、となったら依頼した方が良いと思います。

と言うのもCADオペレーターの方が最も時間を奪われるのが「検討」です。

設計基準通りならまだしも、
デザイン要望/工場要望/変更して良い箇所の区別など、
担当者しか分からない内容が多すぎて非効率になります。

そもそも自分ができないことを依頼していると
「こいつクチばっかりだな」と信用が無くなりますよね。
また自分が出来ないと正しい工数も見積もれません。

【おしまい】

今回はCADについて、概要・考え方を書きました。
貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。
次回は射出成形の基礎について描こうと思います。