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バントオーラ 〜セレズニアオーラの正当進化系〜


はじめに


これは、パイオニアおよびエクスプローラー環境においてオーラデッキをこよなく愛する男の備忘録を兼ねた自己満足である。地方都市の草の根プレイヤーによるマイナーデッキに関するnoteなど需要がないのは承知の上だが、オーラデッキをまわした回数とデッキへの愛情にだけは自信がある。よかったら最後まで読んでいただけたら幸いである


バントオーラとの出会い


4月も下旬にさしかかろうかという頃。当時の私は、4月29日に晴れる屋広島店で行われるチャンピオンズカップのエリア予選での勝利を最大の目標にしていた

使うのはもちろんセレズニアオーラ。有効色ファストランドの登場以降ずっと愛用し続けたこのアーキタイプは、「プロツアーファイレクシア」で準優勝という快挙を果たして以降、認知と研究が進んだ。私自身もその準優勝のリストをベースに、あれこれと調整に明け暮れていた

その最中、金魚のデッキリストを漁っていた。特にその中でも、「Selesnya Aura」や「4c Aura」のリストには100%目を通していた

この「4c Aura」というのは、緑白のセレズニアカラーに『ケイヤ式幽体化』や『槌手』をタッチしたものを指し、本質的には「Selesnya Aura」と大して変わらない

色が合わずとも使いたくなる奴ら

そんな中で見つけた「それ」は、他の「Selesnya Aura」や「4c Aura」と比べてあまりに異色で、はっきり言って第一印象は最悪だった

なんや…これは…

マナベースは見るからに怪しそうだし、オーラデッキ好きの私から見ても弱そうなオーラが混じっている

極めつけはサイドボードの『スレイベンの守護者、サリア』。これはどちらかいうと出す側ではなく出される側のカードであり、「オーラデッキには一家言ある」と自負する私にとって、このリストは全く魅力的なものに映らなかった

対白単の負け筋は大体こいつ

しかし、結果的に大目標だったエリア予選を4-3という平凡な成績で終え、見た目のスコア以上に悔しさの残る内容にやや打ちひしがれていた私は、オーラデッキにブレイクスルーを求めていた

特に環境最大手のラクドスミッドレンジに苦手なままでは話にならない。何か打つ手はないものか

藁にもすがる思いで、mtgアリーナを起動して組み始めたのが、例の「バントオーラ」であった


セレズニアからバントになることで何を得たのか

暗号術師の獲得


セレズニアオーラをバントオーラへと変化させた立役者は間違いなく『サイバの暗号術師』である

「機械兵団の進軍」で登場したこの20円のコモンカードは、パイオニアのオーラデッキを1つ上のレベルへと昇華させた

『林間隠れの斥候』以外にまともな呪禁持ちが少ないパイオニア環境において、確かに見た目は「まともな呪禁持ち」という印象だが、使い始めるまでは「色を足してまで使うほどか?」と思っていた

だが、使えば使うほど、このカードにのめり込んでいく

除去や打ち消しを構える相手を嘲笑うかのように、相手のターンエンドにインスタントタイミングで飛び出す。このカードにカウンターを使ってくれるなら、自分のターンに悠然と『皇の声、軽脚』を出してオーラを貼ってやればいい

当初期待していた「相手の除去呪文に颯爽と飛び出して、軽脚を守る」という動きは、残念ながら実戦ではなかなか見かけることが出来ない。相手は軽脚を見るなりこちらにターンを渡すことなく除去呪文を撃ち込むことがほとんどで、かといって軽脚を出したターンに2マナが浮いてるほど余裕があるデッキでもない

ただ、裏を返せばそれは「ソーサリータイミングでの除去を強要している」とも言える

そもそもオーラデッキの最大の弱点は、「全てのアクションがソーサリータイミングである」という部分にある

こちらが生物を出した返しに相手がマナを立てて構えてきて、祈りながらオーラをつけようとしたタイミングで除去呪文を撃たれた時を想像してみて欲しい

カードもテンポも失い、ほとんどの場合でそのゲームを落とすことになるだろう

しかし、暗号術師の存在はそれを許さない

除去を構えてターンを渡すことは、すなわち暗号術師による防御を許す隙を与えることである

『致命的な一押し』も『焦熱の衝動』も、ソーサリータイミングで唱えざるを得ない

こちらからすれば、除去されたことがわかった後でターンを迎えることが出来るのは大きい。オーラを無駄に失うこともないし、それに使うはずだったマナで違うアクションを取ることにもつながる

「瞬速」の二文字を持つこの新戦力が、一本調子の展開しかできなかったオーラデッキに新しい引き出しをもたらしたことは間違いない


スクレルヴとの決別


さらに、暗号術師の獲得は思わぬ副次効果をもたらした

呪禁生物が2種8枚に増えたことで、呪禁生物と噛み合わせが悪い『離反ダニ、スクレルヴ』がデッキから抜けたことである

もともと、私はこのスクレルヴが好きになれなかった

このカード、本来なら「単体除去の身代わりになれるので単体除去に強い」ということが売りのはずであり、実際にもスクレルヴから軽脚という動きがセレズニアオーラの黄金パターンであることに異論はない

ただ、オーラデッキの本来の強みは何か。それは「呪禁により相手の単体除去を腐らせる」ことだったはずだ

呪禁を持つ生物を相手にどれだけ除去呪文を抱えても無駄牌にしかならない。かといって、除去呪文を減らしすぎては軽脚のようなパワーカードに蹂躙されてしまう…

その理不尽な2択を相手に強いるのがオーラデッキのあるべき姿だ

しかし、このスクレルヴはそういった意味では真逆の方向に作用してしまう

スクレルヴと軽脚のコンビを阻害するために、相手は喜んで単体除去を増やすだろう。スクレルヴは一度だけ身代わりになってくれるだけで、除去呪文に弱いという本質は変わらない。単純に除去呪文が2枚あれば、スクレルヴと後続に立て続けに撃ち込めばそれで終わりなのだ

さらに言えば、スクレルヴはハンデス呪文にも弱い。こちらが先手で1ターンにスクレルヴを出したところで、返しの『思考囲い』で後続を手札から抜かれてしまうと、残るのは貧弱な1/1の生物とオーラのみ。目を瞑ってスクレルヴにオーラを重ねては、除去呪文を見せられて負け続けていった

同じような理由で、スクレルヴは自身が生物でありながら初手のキープ基準にもなり得ない。1ターン目に唱えて、相手から除去もハンデスもされず、さらに後続を唱えることが出来て初めて輝くカードであり、スクレルヴとオーラしかないような初手はマリガンを検討しなければならない

しかし、暗号術師を手に入れた今、スクレルヴの力を借りずとも単独で除去に強い生物が増えた。そして、スクレルヴはデッキの中で居場所を失っていった

先程はとあるリストを酷評してしまったのだが、このプレイヤーはその後もバントオーラを使い続けているようで、リストのほうもどんどん洗練され、変化している。この時のリストではスクレルヴを1枚も採用していない

「好きにはなれないけど全部抜くのはちょっとなあ…」と二の足を踏んでいた私の背中を、このリストが力強く押してくれた


サイドボードの充実


バントカラーへの変化はサイドボードにも大きな影響を与えている

セレズニア時代に生物を守る呪文として時折使われていた『タミヨウの保管』や『ロランの脱出』。これらがカウンター呪文や『とんずら』に置き換わったのである

『ロランの脱出』は痒いところに手の届かないカードだった。ある程度の除去呪文からは身を守ってくれるが、『一時的封鎖』や『ヴェールのリリアナ』の前には無力である

しかし、それが『とんずら』であれば防げない除去呪文は存在しない。「オーラがついた生物がフェイズアウトすると、そのオーラも一緒にフェイズアウトする」というルールも実に都合がよく、フェイズインして帰ってくる際にオーラも無事に帰ってくるから安心していい。時折、相手の生物に撃ち込むことでブロッカーをどかす働きも行うことが出来るなど、なんとも器用なカードである

『呪文貫き』のようなカウンター呪文なら『至高の評決』にだけは目を瞑る必要があるが、さすがに刺さる対象の広さが違う。除去呪文に限らず、『奇怪な具現』や『異形化』などもターゲットになるだろう

暗号術師と同様に、こうしたインスタントタイミングで唱えることが出来るカードが増えたことで、オーラデッキはより相手にとってやりにくいデッキとなっていった


ライフゲインと衝動ドロー


これらのカードも青を加えることで得た新しい戦力だ

早いターンで呪禁生物につけることが出来れば次々と後続をもたらして有利を確かなものとし、消耗戦の末に残った生物につければ盤面を立て直すきっかけとなる。あっという間に手札を使い切ってしまいがちなオーラデッキと実に噛み合う

相手からするとヘイトの高いカードなので、つける生物は本命とは別にするのもオススメ。『結束のカルトーシュ』から出たトークンなんてちょうどいい

また、『圧倒的洞察』のほうは絆魂を付与する部分も大切である。最近のパイオニア環境は、ボロス召集を筆頭にアグロデッキが復活の兆しを見せており、ライフを回復する意義はとても大きい。以前と比べて呪禁生物が増えたこともあり、除去されないライフリンク生物を作るだけでイージーウィンとなる場面が増えた

2マナのオーラは重たいと感じる瞬間も多く、なるべくなら採用したくないのだが、さすがにこれほどの能力を兼ね備えているとそうも言ってはいられない


現在のデッキリスト


今後の店舗予選などで使用予定のリスト

セレズニアオーラを1000マッチ以上まわした経験から、デッキの根幹となるカードはそのまま残しつつ、青いカードを加えることでよりパワフルなデッキになった

個人的には、生物は最低でも16枚は欲しいと考えている。生物が1枚もない初手はどうしてもキープ出来ないし、『思考囲い』で生物が抜かれることも想定した構成にする必要がある

以前のnoteでも書いたが、『気前のいい訪問者』は現在でもなお過小評価されている1枚。普段は呪禁生物を強化する縁の下の力持ちでありながら、生き残れば単体でゲームを決める力も持ち合わせる

爆発力は随一

『結束のカルトーシュ』も過小評価気味であり、本来なら4枚目を採りたかったのだが、スペースの関係で断念。『歩哨の目』も警戒がアグロと『放浪皇』に強く、脱出がラクドスとローグに強いため、2枚目も採用したいのだが同じく枠がない

「点」ではなく「面」の攻勢をもたらす

『戦闘研究』はあまり見かけないカードだが、『執着的探訪』と散らすことで軽脚のサーチ能力から2枚のドローオーラを持ってくることが可能になる。また、軽脚につくと護法1が付与される点も大切で、『粗暴な聖戦士』『巨人落とし』『アクロス戦争』といった重めの除去を1ターン遅らせることができる。軽脚以外の生物につけた時はさすがにインパクトが落ちるが、それでも最低限『好奇心』ではある

一方で、これまでは確定枠であった『最上位権限』は採用を見送ることになった。呪禁持ちの生物が増えたことで、オーラによって呪禁を付与する意味合いが薄くなったからである。軽脚のサーチ先としては引き続き優秀であるが、多少ガードが落ちてでも1マナ軽い『ケイヤ式幽体化』や『戦闘研究』を優先したい


生物やオーラの構成については試行錯誤を重ね、少しずつ手応えも感じているが、その一方でマナベースについては未だに問題が山積している

オーラデッキはマナがタイトであり、1ターン目に斥候を出すために緑マナを要求しながら、2ターン目にはカルトーシュと『天上の鎧』をつけるために白マナ2つが要求されるみたいなことが当たり前に発生する。そのため、『枝重なる小道』のような場に出た後は1色しか出せなくなる両面土地はあまり強くない

そんな経験から、私はセレズニアの時から『低木林地』や『マナの合流点』のようなペインランドをフル投入していた。そのマナベースに自信があった

しかし、バントになってからというもの、完全に白旗。お手上げ状態である

「白15、青14、緑13」というのはあまりにお粗末。最低でも各色あと1枚ずつ欲しいのだが、かといってフラッドが受けれるデッキでもないので、土地を増やすという選択は難しい

基本土地を採用する余裕もない。青白コントロールに『廃墟の地』を起動されると悶絶する。仕方ないと割り切るしかない。『耐えぬくもの、母聖樹』も魅力的なカードだが、この限界マナベースに一切の贅沢は許されない。2色以上出る土地をありったけ詰め込もう


最後にサイドボードについて。画像に載せていないのには色々と理由があるのだが、「まだ固まりきっていない」というのが正直なところである

確定なのは

・相棒としての『湧き出る源、ジェガンサ』
・『ポータブル・ホール』を3枚
・打ち消し呪文と『とんずら』をあわせて4枚
・『耐えぬくもの、母聖樹』を1枚

これくらいである


おわりに(MTGアリーナで使うなら)


上の画像のリストだと、『林間隠れの斥候』と『液態化』の2種がまだエクスプローラーでは実装されていない

液態化のほうは『グリフの加護』の2枚目でごまかすとして、斥候についてはさすがに大きな穴と言わざるを得ない

一時期、この『施しの司祭』を「これはジェネリック斥候だ!」と称して採用していたことがあった。音速で順位を落としたので絶対に辞めたほうがいい。現在は『アダントの先兵』に代役を務めてもらっている

それでも、ミシックランクの順位帯で戦い続けるくらいのポテンシャルは十分に持っている。スタンダードの喧騒をよそにエクスプローラーのオーラデッキ一本でラダーに取り組んでいるが、最近はボロス召集のような相性のいいデッキも増えてきて環境的にも追い風に感じている

この長文拙文のnoteを読んで、少しでもオーラデッキに興味を持っていただけたら幸いだ。紙で揃えても安価なデッキだが、まずはMTGアリーナのエクスプローラーからでも、ぜひプレイしてみて欲しい

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