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LOG ENTRY: SOL 131

 新年早々追い込まれている。健康で文化的な最低限度の生活がまるで送れていない。4つだったプロジェクトがなんだかんだで5つに増えたり、そのうち2つが来週大詰めだったりするのだ。

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。と言いつつ、今年ももう25分の1が終わってしまいましたが。

 ひとつは、ある地球観測衛星が打ち上げ前のテストフェーズに入るための最終確認。テストフェーズにGoを出していいかどうかのチェックをするのが僕の仕事。もちろん僕にGo/No-Goを出す権限などないが、ひたすらテストプランの書類を読み込んで、漏れがないかを確認し、来週プロジェクトマネージャーたちに報告するというわけだ。入社以来一番手を焼いてきた仕事がこれだ。それがようやく来週終わると思うと、少しほっとする。

 もうひとつは火星ローバー関連。ESA(欧州宇宙機関)とのミーティングでプレゼンをすることになっている。火星に着陸する季節や場所によって、探査ローバーにどのような要求が課されるか、ということをまとめて、情報を提供する(たとえば2030年のウィンドウだと、北半球は冬真っ最中で日照条件が悪く、ローバーが使い物にならない、など)。当然ながら、外部に情報を出すときはあらかじめ内部で承認を得る必要があるので、大学のときと違ってギリギリで資料を作っていてはいけない。

 忙しいときに限って仕事は集中するもので、ここ2週間連続で東大への遠隔講義も入っていた。日本の昼のクラスなので、こちらは夜の10時から0時頃までの時間帯になる。ボストンからだと午前3時になってしまうので、それよりはマシだ。留学生がいることもあり、講義はすべて英語。1時間45分×2、しゃべり通し。オフィスにいるより英語しゃべったわ(笑)

 内容は『システム安全』と『プロジェクトマネジメント』。プロジェクトマネージャーの経験などなく、冒頭で述べたように人工衛星の安全審査でひーひー言っている僕が、このような内容の講義などどうしてできようか、いや、できないだろう。まぁでもなんとか無事に終わり、今年度の僕の講義はすべて終了したε-(´∇`)ホッ

 宇宙資源開発は今、200年前のゴールドラッシュが始まる直前のカリフォルニアのような状態だろうか。先日『宇宙製鉄』を目指すとある宇宙ベンチャーのいわゆるシードラウンドの報告会に呼ばれたので行ってきた。ある地下の会議室にて、これからの宇宙ゴールドラッシュビジネスの話。

NASAの地下の会議室で、宇宙ゴールドラッシュの話て。。

このシチュエーションだけで鼻血出るわ( ° ¡¡ °)・:∴ブハッ

 これはSBIR (Small Business Innovation Research)と呼ばれるNASAの取り組みのひとつで、小さな民間企業に、シードの段階でNASAがお金を出して研究させ、ビジネス化の可能性を探るというもの。

 最近始まった新しい仕事もこのSBIRの一環で、ある民間企業と共同でやっていくことになっている。こちらは、宇宙探査機などの自律化のソフトウェア開発だ。このソフトウェアを我々NASAと協力して開発し、実際に商品として売れるようになることが、彼らのゴールだ。

 将来宇宙ベンチャーの起業に興味がある僕としては、こういうNASA−民間企業間の活動やお金の流れを知れることが、NASAに来た目的のひとつだったので、こういうプロジェクトやミーティングに参加できてとても嬉しい。

 さて、5ヶ月にわたる単身赴任もとうとうカウントダウンが開始した。うちのような子持ち共働きにとって、新しい場所への転職や転勤は家族レベルの問題。このような家庭をDEWKs(Dually Employed With Kids)というらしい。JPLへの就職は、妻と子供の点でとても後ろ髪引かれる決断だった。ロサンゼルスであることがせめてもの救いで、妻への説得材料だった。

 もしこれが仮にNASAの他のセンターだったら、と思うと少しゾッとする。DCの本部やシリコンバレーのエームズならまだしも、他はどこもド田舎なので、妻への説得材料にならないどころか、僕への単身赴任の説得材料になってしまうところだった。でも仮にそうなっていたら「妻もNASAで仕事を探す」という最後のカードを切ろうと思っていた。。

 とりあえずは、いつ家族が渡米するとは確約しないまま、僕は就職し、単身渡米したが、今年は娘の小学校が始まる年であることや、妻がグリーンカードの関係で一度アメリカに入国しなければならない事情などがあり、妻がついに決断したのだった。

 このような家族レベルの重要な決断に迫られたとき、世の家庭はどのように話し合い、決断しているのだろうか。きっと、家族ごとに正解は異なるし、その決断が果たして正解かどうかもわからない。だが僕は、それぞれの決断がどのようなものであっても、それに敬意を評したいし、応援する。

 あと1週間。しかし最後の1週間に偶然山場が来るあたり、いかにも自分らしい。この山の向こうに、娘たちの笑顔が待っているはず(•̀ー•́)و ̑̑グッ

★★★

今年の正月はひとりロサンゼルスで過ごしたので、おせちもお雑煮も食べてないが、せめてもの慰みにミニお鏡餅セットを買ってきた。あー、なまこ酢食べたかったなぁ。。

近所にできたラーメン屋(右から2番目)。数日前に行ったときは、unsafe temperature(熱すぎ)とかで、営業停止を食らっていたが、この日は再開していた。麺がもうちょっと固い方が好みではあるものの、過去にアメリカ大陸で食べたラーメンの中で一番美味しい。一風堂がマザースに上場するそうなので、ぜひロサンゼルスに来てもらいたい。一蘭も。


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