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きょうの素問 骨空論篇(4) 2023/1/26

骨空論篇の4回目。
今回で最後までいきますが、経穴がたくさん出てきますので、頑張って見ていきましょう!

水兪五十七穴者 尻上五行 行五 伏菟上兩行 行五
左右各一行 行五 踝上各一行 行六穴
(水兪五十七穴なる者は、尻の上、五行、行ごとに五。 伏菟の上、兩行、行ごとに五。左右、各おの一行、行ごとに五。踝上、各おの一行、行ごとに六穴。)

水兪は浮腫・むくみ(水病)を治す部位(経穴)。それが57あるとのこと。

臀部(尻)の上に 5×5=25
大腿(伏兎)の上に 5×2=10
行ごと(膝窩?)に 5×2=10
内顆(下腿)の上に 6×2=12

上記のように考えると、確かに合計57になります。

 
髓空在腦後三分 在顱際銳骨之下 一在齗基下 一在項後中復骨下 一在脊骨上空在風府上
(髓空は腦後三分に在りて、顱際の銳骨の下に在り。一は齗基の下に在り。一は項の後中、復骨の下に在り。一は脊骨の上空に在りて風府の上に在り。)

※髄空
「空」は「孔」に通じて骨に空いている穴、もしくは骨と骨の間の空隙。
確かに「腔」は「くう」と読むことが多いですが、「こう」と読むこともできますね。

※顱際銳骨之下
「顱」はかしら、頭の骨。
「銳骨」は外後頭隆起の出っ張り。
一説では瘂門。(第2頸椎棘突起上方の陥凹部)

※齗基
張景岳の注
唇内の上の歯の縫中を齦交という。そこで下の歯の縫中は齗基とする。いま、齗基の下というのは、頤の下中心部の骨のすきまである。
承漿が該当。(オトガイ唇溝中央の陥凹部)

※復骨
「復」は「伏」に通じる。
頸椎が前弯していて体表から隠れている部分を指すと思われる。
「復骨下」となると、大椎(第7頸椎棘突起下方の陥凹部)の辺りか。

※風府上
脳戸(外後頭隆起上方の陥凹部)と思われる。

 
脊骨下空在尻骨下空 數髓空在面俠鼻 或骨空在口下當兩肩
(脊骨の下空は尻骨の下空に在り。數髓空は、面に在りて鼻を俠む。或いは骨空の口下の兩肩に當たるに在り。)

※尻骨(コウコツ)
仙骨と尾骨を足した部分。
長強か。(尾骨の下方、尾骨端と肛門の中央)

※ 數髓空在面俠鼻
張景岳の注
數とは数か所ということである。面部にあるとは、足陽明経の承泣・巨髎・足太陽経の晴明、手少陽経の絲竹空、足少陽経の瞳子髎、聴会などである。
鼻を挟むとは、手陽明経の迎香などで、いずれも面部にある骨空である。

承泣 眼球と眼窩下縁の間、瞳孔線上(眼窩)
巨髎 瞳孔線上で鼻翼下縁と同じ高さ(上顎骨と下顎骨の間)
晴明 内眼角の内上方と眼窩内側壁の間の陥凹部(眼窩)
絲竹空 眉毛外端の陥凹部(眼窩縁)
瞳子髎 外眼角の外方5分、陥凹部(眼窩縁)
聴会 珠間切痕(耳珠と対珠の間)と下顎骨関節突起の間陥凹部
迎香 鼻唇溝中、鼻翼外縁中点と同じ高さ

※口下當兩肩
歴代の注釈でも意味が不明とのこと。
口の下から肩まで、というと広頸筋が近いような気もしますが(肩でなく鎖骨ですが)、ちょっと難しいですね。


兩髆骨空在髆中之陽
臂骨空在臂陽 去踝四寸兩骨空之間
股骨上空在股陽出上膝四寸
䯒骨空在輔骨之上端
(兩髆の骨空は髆中の陽にあり。
臂の骨空は臂の陽、踝を去ること四寸の兩骨空の間に在り。
股骨の上空は、股の陽、上膝を出ずること四寸に在り。
䯒の骨空は、輔骨の上端に在り。)

※髆
かひがらぼね。肩甲骨。

※髆中之陽
肩甲骨の外側。
肩貞と思われる。(肩関節の後下方、腋窩横紋後端の上1寸)

※臂
ひじ。または肩から手首に至る腕全体の部分。

※去踝四寸兩骨空之間
「踝」を手根骨とすると、4寸上で骨(橈骨と尺骨)の間で、
外関(橈骨と尺骨の骨間の中点、手関節横紋の上2寸)もしくは三陽絡(橈骨と尺骨の骨間の中点、手関節横紋の上方4寸)と思われる。

※股骨
大腿骨。

※股陽出上膝四寸
股は大腿骨、陽は外側で、膝の上4寸とすると、中瀆か。(腸脛靭帯の後方で、膝窩横紋の上7寸)

※輔骨之上端
輔骨は大腿骨下端の内・外側顆、または脛骨上端の内・外側顆までを含む部分。骨空という観点から、犢鼻かと思われる。(膝前面、膝蓋靭帯外方の陥凹部)

股際骨空在毛中動下
尻骨空在髀骨之後相去四寸
扁骨有滲理 湊無髓孔 易髓無空
兩髆の骨空は髆中の陽に在り。
(股際の骨空は、毛中の動の下に在り。
尻の骨空は、髀骨の後ろ、相い去ること四寸に在り。
扁骨に滲理あり、湊に髓孔無く、髓を易えて孔なし。)

※股際骨空
高士宗の注
股際とは陰部と股とが交わる部分である。股際の骨空は陰毛中の動脈の下にある。これはとりもなおさず動脈の下で、股間の縫間である。

大腿動脈上で、股関節付近となると、衝門ではないかと思われる。(鼠径溝、大腿動脈拍動部の外方)

※尻骨空
仙骨上にある仙骨孔(上髎次髎中髎下髎の八髎)。

※髀骨
大腿骨のはまる骨盤の一部。寛骨臼周囲か。

※扁骨有滲理 湊無髓孔
「扁骨」は扁平骨。頭蓋冠を構成する前頭骨などか。
「滲理」は血脈が染みとおる部分。導出静脈が通る頭頂孔や乳突孔と思われる。(ただし、原文では「無髓孔」として、穴の存在を確認できていない。)

※易髓無空
王冰は「易」を「亦(また)」と読んでいる。稲葉通達(「方伎則説」の著者)は「是」の字を書き間違えたもの、としている。

 
灸寒熱之法 先灸項大椎 以年為壯數
次灸橛骨 以年為壯數
視背兪陷者灸之
(寒熱に灸するの法、先ず項の大椎に灸し、年を以て壯數となす。
次に橛骨に灸し、年を以て壯數となす。
背兪を視て陷む者はこれに灸す。)

大椎(前出)

※橛骨
尾底骨のこと。長強(前出)と思われる。

※背兪
背部の兪穴。陥凹しているものを対象としています。


舉臂肩上陷者灸之
兩季脇之間灸之
外踝上絕骨之端灸之
足小指次指間灸之
腨下陷脈灸之
(臂を舉げて肩の上の陷む者はこれに灸す。
兩季脇の間、これを灸す。
外踝の上、絕骨の端、これに灸す。
足小指次指の間、これに灸す。
腨下の陷脈、これに灸す。)

※舉臂肩上陷
肩髃か。(肩峰外縁の前端と上腕骨大結節の間の陥凹部。肩関節を90度外転したとき、肩峰の前後に現れる2つの陥凹部のうち、前の陥凹部にとる)

※兩季脇之間
京門か。(側腹部、第12肋骨端下縁)

※絕骨之端
絶骨は今の懸鐘。(下腿外側、腓骨の前方、外果尖の上方3寸)
その端(上)とすると、陽輔か。(懸鐘の1寸上)

※足小指次指間
足の小指と次指(第4指)の間なので、侠谿か。(足指、第4・第5指間、みずかきの近位、赤白肉際)

※腨下陷脈
「腨」はこむら、ふくらはぎ。
ふくらはぎで陥凹しているところなので、承山か。(下腿後面、腓腹筋筋腹とアキレス腱の移行部)


外踝後灸之
缺盆骨上切之堅痛如筋者灸之
膺中陷骨間灸之
掌束骨下灸之
齊下關元三寸灸之
毛際動脈灸之
膝下三寸分間灸之
足陽明跗上動脈灸之
巔上一灸之
(外踝の後、これに灸す。
缺盆の骨上、これを切して堅く痛むこと筋の如き者、これに灸す。
膺中の陷骨の間、これに灸す。
掌の束骨の下、これに灸す。
齊下關元三寸、これに灸す。
毛際の動脈、これに灸す。
膝下三寸の分間、これに灸す。
足陽明跗上の動脈、これに灸す。
巔上の一、これに灸す。)

※外踝後
崑崙か。(外果尖とアキレス腱の間の陥凹部)

※缺盆骨上切之堅痛如筋
缺盆は大鎖骨上窩。(前正中線の外方4寸、鎖骨上方の陥凹部。)その付近で強い筋張りというと、中斜角筋の停止腱ではないかと思われる。

※膺中陷骨間
「膺」はものを抱え込む、胸板を指す。両大胸筋の間で骨の陥凹しているところとすると、天突か。(前正中線上、頸窩の中央)

※掌束骨下
「束骨」は手根骨。「掌束骨下」は恐らく大陵。(手関節横紋上で、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間。)

※齊下關元
関元は前正中線上、臍中央の下三寸。いわゆる丹田があるところ。

※毛際動脈
陰毛の生え際で、大腿動脈上というと、気衝(前出)か。

※膝下三寸分間
膝下三寸で、脛骨と腓骨の間は足三里か。(下腿前面、腓骨頭の直下と脛骨粗面下端との中間。)

※足陽明跗上動脈
「跗」は足の甲。足陽明で足の甲の動脈上とすると、衝陽か。(足背、第2中足骨底部と、中間楔状骨の間、足背動脈拍動)

※巔上一
「巔」はいただき。頭の頂きとすると、百会か。(前正中線上、前髪際の後方5寸)


犬所囓之處灸之三壯 即以犬傷病法灸之
凡當灸二十九處
傷食灸之 不已者 必視其經之過於陽者
數刺其兪而藥之
(犬の囓む所の處、これに灸すること三壯、即ち犬傷病法を以てこれに灸す。
凡て當に二十九處に灸すべし。
傷食、これに灸し、已えざる者は、必ず其の經の陽に過ぐる者を視て、數しば其の兪を刺してこれに藥す。)

※傷食
食あたり。

灸で症状が改善しないときは、鍼(もしくは刺絡)を併用することを最後に補足しています。

長くなりましたが、今回の部分だけで、30以上の経穴が出てきました。
これらの経穴が素問でどんなふうに記載されているかを見るのも面白いかとおもいます。

次回はこの次の篇、「水熱穴論篇」を読んでいきます。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。



 

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