きょうの素問 邪氣藏府病形 第四 (4) 2021/1/28
※前回の終わり、顔色と脈と尺膚に精通して組み合わせることが出来れば「神明」のレベルになれる、という話の続きです。
黃帝曰 願卒聞之
歧伯答曰
色青者 其脈弦也
赤者 其脈鉤也
黃者 其脈代也
白者 其脈毛
黑者 其脈石
見其色而不得其脈
反得其相勝之脈 則死矣
得其相生之脈 則病已矣 ※1
※1馬蒔注
肝は木を主り、其の色は青、脈は当に弦なるべし。
心は火を主り、其の色は赤、脈は当に鉤なるべし。
脾は土を主り、其の色は黄、脈は当に代なるべし。
肺は金を主り、其の色は白、脈は当に毛なるべし。
腎は水を主り、其の色は黒、脈は当に石なるべし。
其の色を見て其の脈未だ合わず。
反って其の相勝の脈を得ること、
色は本青くして脈来ること浮濇にして短なるは、
是れ金来りて水を剋するが如きなり。
此れ病の死する所以なり。
色青くして脈来ること沈実にして滑なるは、
是れ水来りて木を生ずればなり。
此れ病の已む所以なり。
黃帝問於歧伯曰
五藏之所生 變化之病形何如
歧伯答曰
先定其五色五脈之應 其病乃可別也
黃帝曰 色脈已定 別之奈何
歧伯說
調其脈之緩 急 小 大 滑 濇 而病變定矣
黃帝曰 調之奈何
歧伯答曰
脈急者 尺之皮膚亦急
脈緩者 尺之皮膚亦緩
脈小者 尺之皮膚亦減而少氣
脈大者 尺之皮膚亦賁而起 ※4
脈滑者 尺之皮膚亦滑
脈濇者 尺之皮膚亦濇 ※3
凡此變者 有微有甚
故善調尺者 不待於寸
善調脈者 不待於色
能參合而行之者
可以 為上工 上工十全九
行二者 為中工 中工十全七
行一者 為下工 下工十全六 ※2
※2馬蒔注
故に五蔵変化の病形異なると雖も、
而かも色脈已に定まり、乃ち之を別つべし。
之を別つには、其の脈の緩急大小滑濇を調べるなり。
則ち病変には微甚ありと雖も、病本を知るには難易なく
自然に尺を調べて寸を知るべく、
脈を調べて色を知るべし。
所謂色を見て病を知り、脈を按じて病を知り、
病を問うて処を知るとは此れを之れ謂うなり。
人能く此の三を行う者を上工と為し、
二を行う者を中工と為し、
一を行う者を下工と為す。
其の全くする所を以て、九分、七分、六分の異あり。
故に其の人に上工、中工、下工の分あるのみ。
※3
尺膚の重要性を説きながら、この部分の記述は妙にあっさりしているというか、トートロジーみたいになっています。そこで、尺膚についての記述を探したところ、同じ霊枢内の「論疾診尺 第七十四」に行き当たりました。
霊枢 論疾診尺 第七十四
黃帝問于歧伯曰
余欲無視色持脈 獨調其尺 以言其病
從外知內 為之奈何
(余は色を視、脈を持すること無く、獨り其の尺を調べ、 以て其の病を言い、外より內を知らんと欲す。之を為すには奈何にするか)
歧伯曰
審其尺之緩急小大滑澀 肉之堅脆 而病形定矣
(其の尺の緩急小大滑澀、肉の堅脆を審かにして病形定まる)
※「緩急小大滑澀」は、邪気臓腑病形でも大事なポイントとなっています。
尺膚滑 其淖澤者 風也
(尺の膚滑か、其の淖澤たる者は風なり )
尺肉弱者 解併 安臥脫肉者 寒熱 不治
(尺の肉弱き者は解併なり
安らかに臥して肉の脫する者は寒熱なり 治せず)
尺膚滑而澤脂者 風也
(尺の膚滑にして澤脂なる者は風なり)
尺膚濇者 風痺也
(尺の膚濇る者は風痺なり)
尺膚麤如枯魚之鱗者 水泆飲也
(尺の膚麤なること枯魚の鱗の如き者は水泆飲なり)
尺膚熱甚 脈盛躁者 病溫也 其脈甚而滑者 病且出也
(尺膚熱甚だしく脈盛躁なる者は溫を病むなり
其の脈盛んにして滑なる者は病まさに出んとするなり)
尺膚寒 其脈小者 泄 少氣
(尺膚寒え 其の脈小なる者は泄し 少氣す)
尺膚炬然 先熱後寒者 寒熱也 ※4
(尺膚炬然として先ず熱し後に寒する者は寒熱なり)
尺膚先寒 久大之而熱者 亦寒熱也
(尺膚先ず寒し久しく持して熱するは亦た寒熱なり)
※尺膚について、「邪気臓腑病形」と「論疾診尺」の内容をまとめたのがヘッダの写真の板書の内容になります。
※4
唐突に「賁」の字が出てきます。テキストではこれを膨隆した状態として訳していますが、「賁」といえば『易経』六十四卦のひとつ、「山火賁」。
☶
☲
山のふもとをかがり火が照らし出す様子を言います。
しかも、「論疾診尺」では、「尺膚炬然」とあり、「炬」はまさに「かがり火」。そう考えますと、「賁」は皮膚が赤みがかっていて、かつ膨隆気味と解釈できるのではないかと考えました。
※ 現代における尺膚についての研究としては、明治国際医療大学保健・老年鍼灸学講座で行われた「皮膚色と健康状態との関連性に関する基礎的研究」があります。実際に顔色と尺膚と健康状態の関連性について、非常に興味深い実験が行われています。
※現代では、舌診の方が発達しているので、尺膚を診るのはごく一部の人に限られているのかもしれないね、という話になりました。
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