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きょうの霊枢 邪氣藏府病形 第四 (6) 2021/2/18

今回は、「肝脈」と「脾脈」の「急、緩、大、小、滑、濇」×「甚、微」の病症についてみていきます。
たくさんの病症を示す言葉が出てきますので、他の文献(素問や難経、傷寒論や金匱要略)で同じ言葉がどのような文脈で用いられているのか確認しながら読みました。
その結果、肝や脾の五臓と合致するものもあれば、合致しないものもあり、「同病異治」や「異病同治」もしっかり視野にいれておかないといけないと思いました。
そもそも、ここでいう「脈」は何を指しているのか、ということについて前回平崎先生からご指摘がありましたので、その点を再掲しておきます。
①十二経脈
②真蔵脈
③蔵に邪が入った時の脈、または特定の部位の脈(六部定位のような)
また、「甚、微」が何を示すのかについて、渡辺先生から、脈と尺膚が示している内容が合致していれば「甚」、解離していれば「微」と解釈するのはどうか、というご指摘を頂きました。確かに前段では、脈と顔色と尺膚を合参して診断することの重要性を繰り返していたので、そのように解釈した方が通りが良いように思います。
ちなみに、かしはら先生の「やわらか東洋医学」では脈と尺膚の状態を掛け合わせる形で解釈されていて、なるほどと思いました。

ちなみに、「甚」と「微」の修飾の仕方ですが、「甚」が下から修飾するのに対し、「微」は上から修飾しているのには何か文法的な意味があるのか気になりました。

以下はまとめた表です。

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本文はコチラから。
肝脈と脾脈の段を分けてあります。

肝脈
急甚者為惡言
微急為肥氣在脅下 若復杯
緩甚為善嘔
微緩為水瘕痺也
大甚為內癰 善嘔衄
微大為肝痺 陰縮 咳引小腹
小甚為多飲
微小為消癉
滑甚為㿉疝
微滑為遺溺
濇甚為溢飲
微濇為瘈攣筋痺


【惡言】
史記 仲尼弟子伝
孔子曰 自吾得由 惡言不聞于耳

【肥氣】
難経 五十六難
肝之積名曰肥氣 在左脅下 如覆杯 有頭足

【善嘔】
素問 診要經終論
太陰終者 腹脹閉不得息 善噫善嘔 嘔則逆 逆則面赤
素問 刺熱
心熱病者 先不樂 數日乃熱 熱爭則卒心痛 煩悶善嘔
素問 刺瘧
足太陰之瘧 令人不樂 好大息 不嗜食 多寒熱汗出
病至則善嘔
霊枢 終始
太陰終者 腹脹閉不得息 氣噫 善嘔 嘔則逆 逆則面赤
霊枢 四時氣
善嘔 嘔有苦 長太息 心中憺憺 恐人將捕之
邪在膽 逆在胃

【內癰】
素問 腹中論
病名曰伏梁・・・此下則因陰必下膿血 上則迫胃脘生鬲
俠胃脘內癰
【陰縮】
素問 厥論
厥陰之厥 則少腹腫痛 腹脹涇溲不利 好臥屈膝
陰縮腫䯒內熱
霊枢 本神
肝悲哀動中則傷魂 魂傷則狂忘不精 不精則不正
當人陰縮而攣筋
霊枢 經筋
足厥陰之筋・・陰器不用 傷於內則不起 傷於寒則陰縮入
金匱要略 腹滿寒疝宿食病脈證治
烏頭湯 治寒疝腹中絞痛 賊風入攻五臟 拘急不得轉側
發作有時 瘦人陰縮 手足厥逆

【多飲】
素問 脈要精微論
肝脈搏堅而長 色不青 當病墜若搏 因血在脅下
令人喘逆 其耎而散色澤者 當病溢飲 溢飲者渴暴多飲
素問 痺論
肝痺者 夜臥則驚 多飲數小便
霊枢 本藏
肺大則多飲 善病胸痺 喉痺 逆氣

【消癉】
素問 通評虛實論
帝曰 消癉虛實何如
歧伯曰 脈實大 病久可治 脈懸小堅 病久不可治
霊枢 五變
五藏皆柔弱者 善病消癉

【㿉疝】
素問 脈解
厥陰所謂㿉疝婦人少腹腫者 厥陰者 辰也
三月陽中之陰邪在中 故曰㿉疝少腹腫也
霊枢 経脈
肝足厥陰之脈・・是動則病腰痛不可以俛仰 丈夫㿉疝
婦人少腹腫
霊枢 経筋
其病足中指支脛轉筋 腳跳堅 伏兔轉筋 髀前踵 㿉疝

【遺溺】
素問 宣明五氣
膀胱不利為癃 不約為遺溺
素問 欬論
膀胱欬狀 欬而遺溺
素問 刺禁論
刺陰股下三寸內陷 令人遺溺
霊枢 経脈
是肝所生病者 胸滿 嘔逆 飧泄 狐疝 遺溺 閉癃
金匱要略 五臟風寒積聚病脈證并治
下焦竭 即遺溺失便 其氣不和 不能自禁制 不須治

【溢飲】
素問 脈要精微論
肝脈搏堅而長 色不青 當病墜若搏 因血在脅下
令人喘逆 其耎而散色澤者 當病溢飲 溢飲者渴暴多飲
金匱要略 痰飲欬嗽病脈證并治
病溢飲者 當發其汗 大青龍湯主之 小青龍湯亦主之

【筋痺】
素問 痺論
以春遇此者為筋痺
素問 長刺節論
病在筋 筋攣節痛 不可以行 名曰筋痺
素問 四時刺逆從論
少陽有餘病筋痺脇滿 不足病肝痺

脾脈
急甚為瘈瘲
微急為膈中 食飲入而還出 後沃沫
緩甚為痿厥
微緩為風痿 四肢不用 心慧然若無病
大甚為擊仆
微大為疝氣 腹裏大膿血在腸胃之外
小甚為寒熱
微小為消癉
滑甚為㿉癃
微滑為蟲毒蛕蝎腹熱
濇甚為腸㿉
微濇為內㿉 多下膿血

【瘈瘲】
素問 診要經終論
太陽之脈 其終也戴眼反折瘈瘲 其色白 絕汗乃出 出則死矣
霊枢 終始
太陽之脈 其終也 戴眼 反折 瘈瘲 其色白
絕皮乃絕汗 絕汗則終矣
霊枢 熱病
熱病數驚 瘈瘲而狂 取之脈 以第四鍼
急寫有餘者 癲疾毛髮去
傷寒論 辨太陽病脈證并治法上
若被火者 微發黃色 劇則如驚癇 時瘈瘲

【膈中】
霊枢 本藏
肝大則逼胃迫咽 迫咽則苦膈中 且脅下痛

【食飲入而還出】
霊枢 上膈
氣為上膈者 食飲入而還出 余已知之矣
蟲為下膈 下膈者 食焠時乃出 余未得其意 願卒聞之
歧伯曰 喜怒不適 食飲不節 寒溫不時 則寒汁流於腸中
流於腸中則蟲寒 蟲寒則積聚 守於下管 則腸胃充郭
衛氣不營 邪氣居之
人食則蟲上食 蟲上食則下管虛 下管虛則邪氣勝之
積聚以留 留則癰成 癰成則下管約 其癰在管內者
即而痛深 其癰在外者 則癰外而痛浮 癰上皮熱

【痿厥】
素問 四氣調神大論
逆之則傷腎 春為痿厥 奉生者少
素問 生氣通天論
秋傷於濕 上逆而欬 發為痿厥
素問 異法方宜論
中央者 其地平以濕 天地所以生萬物也眾 其民食雜而不勞 故其病多痿厥寒熱 其治宜導引按蹻
素問 通評虛實論
凡治消癉仆擊 偏枯痿厥 氣滿發逆肥貴人 則高梁之疾也
霊枢 本輸
痿厥者 張而刺之 可令立快也
霊枢 本神
恐懼而不解則傷精 精傷則骨痠痿厥 精時自下
是故五藏主藏精者也
霊枢 經脈
是主腎所生病者 口熱 舌乾 咽腫 上氣 嗌乾及痛 煩心
心痛 黃疸 腸澼 脊股內後廉痛 痿厥 嗜臥 足下熱而痛

【四肢不用】
霊枢 本神
脾藏營 營舍意 脾氣虛則四肢不用 五藏不安
實則腹脹經溲不利

【慧然】
素問 八正神明論
請言神 神乎神 耳不聞 目明心開 而志先 慧然獨悟
口弗能言 俱視獨見 適若昏 昭然獨明 若風吹雲 故曰神

【擊仆】
霊枢 邪氣藏府病形
有所擊仆 若醉入房 汗出當風 則傷脾

【疝氣】
素問 長刺節論
病在少腹 腹痛不得大小便 病名曰疝 得之寒
刺少腹兩股閒 刺腰髁骨閒 刺而多之 盡炅病已
素問 大奇論
腎脈大急沈 肝脈大急沈 皆為疝
心脈搏滑急為心疝
肺脈沈搏為肺疝
三陽急為瘕 三陰急為疝 二陰急為癇厥 二陽急為驚
金匱要略 趺蹶手指臂腫轉筋陰狐疝蚘蟲病證治
陰狐疝氣者 偏有小大 時時上下 蜘蛛散主之

【㿉癃】
素問 脈解
所謂㿉癃疝膚脹者 曰陰亦盛而脈脹不通
故曰㿉癃疝也

【蛕】
霊枢 厥病
腸中有蟲瘕及蛟蛕 皆不可取以小鍼

最後までお読み頂きありがとうございます。
(ここまで読んでくれる人が果たして何人いるのでしょうか。)

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