情報公開請求等の受付窓口担当だったときに考えていたこと その1

前書き

 平成30年4月から令和3年3月まで、消費者庁で勤務していました。
 特に、平成30年4月から令和2年3月までは、情報公開・個人情報保護担当課長補佐として、消費者庁に対する情報公開請求や保有個人情報開示請求の受付などの業務を行っていました。

 情報公開請求等がなされた場合に、受付担当としてどのようなことを考えていたかについて記すことで、情報公開請求の受付等の業務にあたっている職員の方の一助になればと考え、今回の記事を書くことにしました。

受付段階以前のこと

 消費者庁の情報公開請求に関するウェブサイトには、当時から、「事前にご相談いただくと、手続が円滑に進むこともあるので、お気兼ねなくお問い合わせください。」と記載されていました。

 ウェブサイトを見て、開示請求書の様式を入手しようとした方の中には、上記の記載を見て、窓口に問い合わせする方もいらっしゃいました。
 行政機関の保有する情報の公開に関する法律第22条第1項は、

「行政機関の長は、開示請求をしようとする者が容易かつ的確に開示請求をすることができるよう、公文書等の管理に関する法律第七条第二項に規定するもののほか、当該行政機関が保有する行政文書の特定に資する情報の提供その他開示請求をしようとする者の利便を考慮した適切な措置を講ずるものとする。」

と定めていますから、窓口担当としては、問い合わせてきた方に対して、どのような行政文書の開示を求める予定なのか、具体的なイメージをお聞きしていました。
 そのうえで、ご希望の情報がウェブサイトに掲載されているということがわかれば、その旨をご案内したり、必要に応じて、当該文書をもっていると思われる担当部署に連絡を取り、どのような書き方をすれば、請求者が求める文書が開示請求の対象になるか、また、担当部署が対象文書をスムーズに特定できるかを考え、請求者に情報を提供するようにしていました。

受付段階のこと

 実際に開示請求書が窓口に届くと、まずは開示請求書の記載にもれがないか、手数料が不足していないかを確認します。
 開示請求書には、「行政文書の名称その他の開示請求に係る行政文書を特定するに足りる事項」(行政機関情報公開法第4条第1項第2号)を記載する必要があるのですが、よく見かけたのは、「○○に関する一切の文書」のような形です。
 この場合、

1)行政文書が特定できない
2)行政文書が特定できた場合に、対象となる文書が複数になってしまって、手数料が不足する

というようなことが起こりえます。
 このように、開示請求書に不備がある場合、まず、開示請求を受け付けた上で、補正を求める(行政機関情報公開法第4条第2項)ことになります。
 不備のある開示請求であったとしても、受け付けない(少し前の言い方で言えば、「受理しない」)ということはできません。行政機関としては、不備のある開示請求を受け付けた上で、補正を求めていく、ということが手続としては法的に正しい、ということになります。窓口を担当する職員は、行政手続法や行政手続条例を改めて確認してください。
 補正を求めても、補正がなされない(例えば、不足分の手数料が納付されないとか、行政文書の特定に必要な事項を追加してくれないなど)場合には、行政手続法第7条に従って、情報公開請求という「申請」に対して「拒否」をする(一般には「請求却下」という言い方をしています。)ことになります。
 不備のある開示請求で、請求者に補正を求めても、適式の請求にならないことが明らかという場合には、受け付けた上で「拒否」をする、というのが正しいやり方です。「受理しない」ことはできませんから、窓口担当者は要注意です。
 なお、情報公開請求は、「何人も」行うことができるのですが、開示請求書には、「開示請求をする者の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人その他の団体にあっては代表者の氏名」を記載することになっています(行政機関情報公開法第4条第1項第1号)から、匿名での請求をすることはできませんし、開示又は不開示という行政処分の名宛人となる者を確定するために記載が要求されているものですから、通常自己を表す名称として使用している名称(芸名や通称)はともかく、仮名や他人の氏名を冒用する形での請求は、行政機関情報公開法第4条第1項第1号の要件を充足せず、不適法な請求として取り扱われることになります。

 請求の件数の数え方については、行政機関情報公開法施行令第13条2項の定めがポイントです。すなわち、請求書記載の内容から特定される行政文書が複数になる場合であっても、1つの行政文書ファイルにまとめられているもの、あるいは、相互に密接な関連を有する行政文書であれば、仮に請求対象となる行政文書が複数の行政文書であっても、請求としては1件になります。逆から言えば、請求書記載の内容から特定される行政文書が複数になるのであれば、基本的には1通の請求書で複数の請求がなされたものとして扱うことになります。
 先の「〇〇に関する件の一切」の場合、複数の年度の行政文書ファイルが対象になってしまって、開示請求書としては1枚であっても、複数の開示請求が行われたと扱われてしまう可能性があります。こうなると、対象となる行政文書ファイルの年度の数に応じた手数料を納めなければ、全部のファイルを開示してもらうことはできず、また、開示する側とすれば、納められた手数料をどの年度に充てるのか、という問題が生じてしまうのです。
 このような感じで対象文書が複数になってしまった場合に、不足する手数料を全額納めてもらえた場合にはそのまま手続を進めていけばよいのですが、不足したままである場合には、複数の対象文書のうち、納められた手数料をどの請求に充てて手続を進めるか、という問題が出てきます。
 この場合には、請求者に確認するのが基本なのですが、請求者に電話をしても手紙を送っても反応がないという場合に、補正がなされないとして請求を放っておくわけにもいきませんから、請求書全体から読み取れる「請求者が一番開示を求めていると思われる行政文書」に充当して手続をすすめ、残りの文書に対する開示請求については、手数料が納められていない不適法なものとして拒否(却下)することになります。

 書き始めると、あれもこれもとなってしまって、思ったより分量が増えてしまいました。残りについては記事を分けるか、この記事に追加することにします。