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身寄りのない高齢者、自宅アパートで猫に看取られる

病院から猫が待つ自宅へ

誤嚥性肺炎で入院していた80代の男性が退院して、自宅アパートに戻ることになった。
私は、この方のお金の管理を行っている。
この方に身寄りはなく、妻を亡くしてからはずっと猫と暮らしている。
入院していた約1か月間は、包括支援センターの職員が猫に餌をやりに来ていたようだ。
退院した日に、主治医、看護師、包括支援センターの職員が自宅に集まり、今後の支援方針について話し合った。
入院していた病院から主治医に宛てた紹介状には、誤嚥性肺炎は治っているが、食事量が低下しており、このままの食事量では余命は2週間くらいではないか、といった内容の記載があった。
また、体の痛みがあり、自分ではベッドから起き上がることもできない。
主治医が、ご本人に「体の痛みがあるのであれば、病院に入院して検査をした方がよいのではないか」、「一人で起き上がることが難しければ、老人ホームを利用した方がよいのではないか」と伝えると、ご本人は「自分は、入院も入所もしたくない。このまま最期まで自宅で猫と暮らしたい。」とのこと。
ご本人は、以前からそのような希望を持っていたようで、そのことは、包括支援センターの職員も把握していた。
何度か医師がご本人に意向を確認するが、このまま自宅で暮らすことを強く希望している。
医師だけではなく、そこにいたご本人以外の全員が、入院や施設入所が頭に浮かんだのではないかと思うが、話し合いの結果、入院・入所はせず、このまま自宅で暮らすことになった。

在宅生活をサポートするにあたり、主な役割は次の通り。
医師:日常の健康管理、薬の処方など
看護師:定期訪問し、服薬管理、食事・水分量の確認等日常生活の世話、万が一の時は葬儀業者に連絡など
包括支援センター:寝たまま水分が摂れるように、ストロー付きのコップを用意、日用品の購入、行政への連絡など
宅配弁当:ベッド横まで弁当を届ける。寝たまま食べられるようにおにぎりにする。
行政:遺体の引き取り、自宅内の遺品の処分についてアパートの管理会社との調整
葬儀業者:看護師からの連絡があった場合、遺体の引き取り
アパート管理会社:キーボックス設置の許可、遺品処分について行政と相談
私:お金の管理、玄関にキーボックスを設置、宅配弁当の手配、介護サービスの支払い、事前に葬儀業者にご本人の情報を伝える。

このような体制で、自宅での暮らしをサポートしたが、退院から9日後、看護師から「息を引き取った。」と連絡があった。
遺体は、これから葬儀業者が引き取りに来るという。

自宅で誰にも看取られず亡くなると、「かわいそう」とか「さみしい」といった、マイナスなイメージを持つことも多い。
あの時、ご本人の希望に反して入院や施設に入所していた場合、最期は、病院の看護師や施設の介護職員が看取ってくれたかもしれないし、そもそも、もう少し長く生きられたかもしれない。
ただ、長年一緒に暮らした猫たちと離れ、名前も顔も知らない人に看取られるより、猫たちに看取られる最期の迎え方があっていいと思う。

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