#12 ケース1-5
『はい!どうぞ!』
『あっ、ありがとうございます。』
『敬語なんてやめてくださいよ!年下ですし!』と、口元に手をやり、愛くるしい笑顔でこちらを見る女の子にそこら辺の男子は胸きゅんするのであろう。
そんなことを考えながら受け取ったグラスの水を半分くらい飲んだ。
『おい、なんでいんだよ。今日金曜だろ?』
私の頭の後ろから聞こえた不機嫌そうな声に目の前の女の子は顔を上げ少し困った表情で言った。
『今日は夜勤じゃなかったから来ちゃった』
ふむ。夜勤のある仕事をしているのか。
『まぁいいや。その感じだと帰る感じだったか?』
『うん。迷ったんだけど明日も仕事だし』
『ふ〜ん。こんな時間だから気をつけてな』
『うん!ありがとね!また来るよ!』
『あのな、前も言ったけど来る時は前もって連絡しろ』
『あぁ、、、勢いで来ちゃうから気づいた時にはもうすぐそこだからいいか!って思っちゃうんだよね』
『、、、まぁいいや。とりあえず気をつけてな』
『は〜い!ではまたどこかでお会いしたらよろしくお願いします!』
『あっ!はい!こちらこそ!よろしくお願いいたします!』
いきなり目線がこっちに来て言われるものだからびっくりしてかちこちな日本語で返事をしてしまった、、、。
彼女が部屋を出て行き、玄関まで見送った彼が部屋に戻ってきた。
『帰らせてよかったの?てか何で帰ったの!?』
『車。そして、帰らせてよかったの?って質問に答えると、「お前がいるからだよ」』
『えっ?なんで!?』
率直な疑問をぶつけた。
『いや、頭使えや。兄貴が家に女の人を連れてきた。事情はどうあれ居づらいだろうし、俺もできることならいない方が気楽。』
兄貴!!部屋に入った時に知った事実が今も信じられない。
『妹さんいたんだ。知らなかった』
『だろうね。知ってたらびびるわ』
彼は自分の身の内話なんてするわけもないし、質問もしたことないから彼の身辺について知っていることなんて皆無だった。
『ん、これ。で、あっちか洗面所と風呂。あっちがキッチンであっちに布団敷いてあるから。』
『あっ、はい。』
スウェット的な服を渡され言われた、、、ぶっちゃけ覚悟はしてたからいいんだよ。なんなら泊めさせてもらうつもりで部屋に来たんだからさ!!でもさ!これだけは言っとく!!!!!
『男女の関係にはなんねぇからな!!!』
と、心の中で大々的に主張し、
『洗面にある妹のあれこれは自由に使ってもらっておっけー。んですっぴん見られたくなかったら風呂上がり部屋直行でおっけー』
という彼の言葉に"!"を3つもつけたことを謝罪し、時間も時間なので早々に休ませてもらおうと思い洗面所へ向かった。
明日が休みでよかった、、、。
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