柴犬ゆずの日記 2020.04.04 家族が増えた気がする
「ゆず〜、ゆず〜。」
あれ? うちにはご主人と奥さんしかおれへんのに、何か家の中で違うおばちゃんの声が聞こえるねん。
「ゆず、ちょっとおいで。」
ご主人が私をヒョイと片手で抱えて書斎のパソコンの前に連れて行くねん。
「ゆず〜、元気か〜。」
あ〜、パソコンの中におるのはご主人のお母さんやんか。どっかで聞いたことある声とは思うたけど、匂いせんから全然わからんかったわ。
「今はこうやって遠くの人と会ってるみたいに話せるんやで。」
へ〜。ご主人、最近毎日パソコンに向かって話しかけてるな〜って思ったら、そんなことやってたんやね。
「挨拶したから、ちょっと下に降りときや。」
ご主人は私を床に下ろして、それから10分くらいお母さんと話とったわ。
お母さんも80歳過ぎて仕事もやめたから、こうやってたまに顔見とく必要あるでとか。近隣の麻雀の会が休止になってしもうて暇やとか。スーパー行く回数は減らした方がええでとか。
何か今、にんげんの世界はとっても大変そうやわ。わたしら犬は普通に暮らしてるけど、ご夫婦の会話の雰囲気で私も大変そうなのはようわかる。
「ほなら、これからは今みたいにZoomで行くからな。またね。」
初めてオンラインミーティングを使ったお母さんも、顔見て会話できたから安心してくれたみたい。
それからすぐに、ご夫婦は近くの花の綺麗で人がおれへん穴場に散歩に連れて行ってくれたわ。
「普段な、親子はちゃんとしゃべりにくいねんけどな。Zoomやったらずっと対面、ちゃんとしゃべらざるを得んわな。かえってええかも知れん。」
「ご主人も親子やったらしゃべりにくいのん?」
「身内はどうしてもな〜。ほんでオカン、パソコンは好きやからブログとか書いたら瞬時に見てるからたまらんわ。」
「見てみ、綺麗なチューリップが咲いてるわ。」
お花好きの奥さんは、たくさんの種類のお花が手入れされてるこの場所は楽しそう。私もチューリップの前で写真撮ってもらうことにしたわ。
帰ったら、昨日ご主人と奥さんが協力して作ってたいちごケーキが出てきたわ。
そう、今日はご主人54歳、わたし12歳の誕生日。
「ゆず、12年一緒におってくれてありがとね。」
「ご主人もおめでとう。奥さんもありがとう。今年は何だかとっても違う誕生日ね〜。」
「せやな。われわれ人間生活はとっても大変で心持ちが違うわ。でもゆずの言うてることは別の意味やろ?」
「そやねん。私は別に大変やないねん。ええことが増えてん。何か家族が増えた気がするねん。」
「うんうん、そうやな。僕もそんな気がしてるねん。」
ご主人はビール飲みながらいろいろ話し始めたわ。
「出張ばっかりやった僕が家にずっとおるやろ。奥さんとの会話も増えたし。ゆずとの時間が増えたし。今日みたいにオカンとの話も増えた。確かに家族が増えたような感覚になるかも知れへんな。」
「うん。犬の私が遠くのお母さんにご挨拶できるってすごいな〜と思うわ。」
「今まで話せへんかった家族も話す機会が増えたな。家族以外の人も、家族みたいに助け合いするが増えたわ。」
「うん。だから私は幸せがいっぱい増えているように見えるねん。」
「そうやな、ゆず。その通りやな。大変と思っているのは人間だけかも知れん。ゆず、ありがとね。」
「えへへ。」
それから家族3名で食事をして私が寝た後、ご主人はまたZoomを使って東京や東北の人たちとビール飲んでたらしいわ。そこでも初めての人でも打ち解けられる家族的雰囲気が普通にあったんやって。
家族が増えるの、嬉しいね。世界がいい家族になりますように。柴犬ゆずの12歳の願いでした。
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