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「ありのままに生きろ。今2024」を見て 2024.05.01,02

この文章は、「ありのままに生きろ。今」についての自分の心情に基づいた

文章となっています。

千秋楽を終えたためネタバレ等を多く含むことをご容赦願います。


1、全体の作品について

2、個々のキャラクターと俳優さんについて

3、最後に


1、全体の作品について

 様々な時系列が混在する作品であり、ここが取れないと各物語の結びつきを読み取れないので満足に面白さというか散りばめられた要素を回収できない

本編は大きく5つの

「Youtuber兼大学生で素の自分に自信が持てない芳賀どれみ」軸

「売れない舞台女優を続ける桐山かな」軸

「好きなものを明かせない高橋千夏」軸

「白黒つけられない人事の工藤薫」軸

があり

その全ての軸の登場人物に関わりを持つ

「本当の自分を明かせない就活で選ばれなかった佐藤しおり」軸

が横断していくような形だ

作品の中で全ての主人公が実際の社会で抱えるようなコンプレックスや

嫉妬心、着飾る私、自分の欠点など自分が見たくない私が多く出てくる。


もしあなたが嫌いだ、嫌だと思うキャラクターがいたら

それは、きっとあなたが持っている特性の人なのだと思う。

私は、昔心理学の本であなたが嫌いになる人はあなたの性質を内包しているという記述を見たことがある。

だから、というのはあまりにも横柄だがそんな気がする。


これを書いている私は、どれみが嫌いだった。

嫉妬心を持っていて自分は持っている側であると思い込み

持っていない側をけなそうとする。でも本当は、自分が自分を認めるのが怖いだけだと思う。

他者比較を常にして周りと歩調を合わせ輝いているように見える自分でありたいが   それは、本当の自分ではない

そんな中で、私はこれも自分なのではないかと途中から考えるようになった。

嫉妬心も持っている側も思い当たる節があった。



そして、作品を終わった時にどうか自分を嫌いにならないでほしい

そんな自分も私なのだからと作品は語りかけてくれる


このnoteに興味を持ってくれているということは、少しでも興味を持ってくれているのだと思う。

ぜひ一度飛び込んでみてほしい。


2、キャラクターと俳優さんについて

 

佐藤しおり


最初、自分の能力があると信じてやまないのに結果が伴わず自分を認めてもらえないことに対して社会に不平不満を持っている就活が上手くいかない棘のある学生という印象だった。

でも、それすら自分の理想であり全ては虚構だった。

そうありたいという願いが彼女にそうさせたのだと思う。

本当は、自分への自信の無さから本当は力を入れたものはそばにあるのに、

その勉強に意味を見失い自分で自分を騙していた孤独な悲しい女性

就活は残酷だ。

自分のことを根掘り葉掘り土足で聞いてくる

彼女にはそんな辛さを支えてくれる拠り所がなかったのではないかと私は感じた。

もし、本当に彼女を思ってくれている人に頼れたら、勉強を頑張った自分に誇りを持てていたら、こんなに苦しみもがくことはなかったと思う。

でも、そんな彼女にも思ってくれる人がいたこと、また頑張ってるよと伝えてくれる人ができたことは、救いになったし彼女が前へと進む原動力にきっとなったことだろう。


願わくば、次はその苦しかった思いを乗り越えたしおりが、誰かを助ける側で

面接で心から人の話を聞く側だったら何て美しい物語だろうと勝手に妄想したりする



永島聖羅さん

感情の起伏に富んだしおりのキャラクターを永島さんの表情豊かな見る側を吸い込む演技が引き立てた。

個人的に好きだったシーンは、

2つあり

1つ目は、久美子の家に連れ込まれて起きた時の目覚めてしまったというような少し暗い表情で久美子の底なしの明るさとの対比がより際立つシーン

2つ目は、最後の少し素をさらすことのできている時の朧げだけど少しスッキリしているようにも見える表情


ちなみにyoutubeの役ごとのインタビューを見ると普段から表情豊かな方なんだなと

なんとなく伝わってきた。

もし、良ければまだ、舞台を鑑賞したことない方は映像で見た後

見た方は、ぜひ見てみてほしい

https://www.youtube.com/watch?v=f9YMuhwsFic&list=PLb3ox5INM_SZ6a1DkAVMEKJItVI0YYOmo&index=21


永島さんは、佐藤しおりをよりこちら側にその心情を豊かに伝えてくれたと思う。


工藤薫

自分の選ばなければいけない時の経験から選ばれない方のことを考えてしまう優しい青年。

会社に入社することを決めた彼の結婚からの辛い経験は、彼に結婚と就職という大きな決断をさせた。

しかし、その時の顔は浮かないように見えた。

何かに区切りがつかない。

最初は、面接官をやるかと聞かれた時も選ぶことを拒み挑む時期も選べない。

でもそんな彼は、人に恵まれていると私は思った。

採用にも携わった彼の後押しを出来る寿子、

押し付けるでもなく提案をしてくれる忍、

そして彼が最も支え彼を最も支えてくれる奈々佳

多くの人が、彼が選ぶことを応援して支えたことで選ぶことに少しずつ前向きに捉えられるようになった

最後の決断では、採用に向き合う中で自分への覚悟が見えて最初の薫よりも何倍もかっこよく見えた。


安井一真さん

とても、明るくて好かれているのに実は暗い一面や選ぶことに前向きになれずにいる薫の両面が見えてとても良かった。

安井さんは、すごく明るくアフターイベントの時もマイクがないのに声がものすごく通っていた笑

優しさを持つ薫の役柄に安井さんはとてもよくフィットしていたと思う。


プリンを喉に詰まらせることなく千秋楽を終えられて本当に良かった!



高橋千夏

自分の好きに正直になれない女の子

今の学生がとてもよく反映されていると学生ながらに思った。

したいことはある。でも自信がないし、分からない。

セリフを引用するなら

昴の「好きは不確かなもので、確証がないだから不安なんだ」と

しかも好きだとしてもそれを叫ぶことすら憚られる。

学生は、すごく均質性が高いなと自分も含めて感じる。

だから、安定をとりあえず選びたくなる。はみ出すことは怖い。

その選択肢は自分の心にとって正解ではないことを知っている。

でも、経験のない若者には自分を叫ぶのがいかに難しいことか実体験で知っている。


そんな彼女は最後全てを選んだ。学生にとってのエールに思えた。

捨てる必要なんかないとやりたいこともやるべきことも全て追いかけて良いのだと、

少なくとも僕にはそう見えた。



相川なおさん

安井さんのインタビューの中で「一番キャラと自分を重ねられる」注目シーンであると言われていた。

千夏のシーンは好きなシーンが多いのだが、ここでは3つに絞ろうと思う。

1つは、本当は好きなことをしたいのに正直になれない

諦めようとするシーンでの叫びだ。

千秋楽、正面で聞いた時の圧力というか場を制する感じが心からの叫びだった。

また、父親の大津監督へのトーンに秘める反抗期ながらも優しい表情や

少し噛み合わない会話も好きだ。

最後は、素敵に進んでいく時の声のトーンも好きだ。

インタビューが明るくて二日目会場に向かう前に驚いた笑


桐山かな

20年間売れることが叶わない女優

感じた期待とそこからの失望は、少し受験に似ている。

選ばれるという共通項からだろうか

日を追えば追うほどに期待は高まる

そこから落ちるたびにさらに落ちていく。

努力が報われなければ報われない程、自分を信じられなくなる。

正直に事実と向き合うことは怖く辛い。

でもかなは、向き合った。

かっこよかった


中村静香さん

ふとした時の表情にすごくそそられた。

映画がなくなってしまった時の怒っているのに悲しげな表情がなんかとにかくよかった。

そこから、最終に入って心の叫びをそこまま出すシーンは本当は映画のワンカットのはずなのだが本人の叫びのようで心の解放のようですごかった。

感情がかなに宿ったのは、中村さんだからこそ

細かい所作や表情が本当に良かった。最初のオーディションの挨拶後の

銃の音の言い方が最推し


芳賀どれみ

僕が嫌になったキャラクターであり感情移入したのがどれみだ。

自分が何か持っているようで何も持っていないし何かをできるわけでもない

何もかも上手くいかない。そして、上手くいく人を羨み嫉み僻む

心を許していたはずの相手がいつしか嫌に見えたり敵に見えたりする

そこから前に踏み出すには、自分が自分を認め向き合うことなのかもしれないと思った


神志那結衣さん

掛け合いの中のふとした表情が好きだった。

少し悲しかったり上手く噛み合わなかったりしてその度に辛くなる所


くるみに自分の想いを伝える前後のくるみがイヤホンしている所の噛み合わなさ

その噛み合わなさがこぼれてしまった後の裕司と話すシーンが好き



工藤菜奈佳

人の優しさを知っていて、それをまた人に渡すことができて人と心から向き合える

本当に心穏やかな優しい人。

でも他方で人に傷つけられて人の苦しさや惨さも知っている。

それでも彼女が人を支えるのは人に縋るのはなぜなのか。どこに答えがあるのか

分からないままだ。

岡田彩花さん

普段は優しく薫や、かなへとても献身的にしているが実は熱いところ

があったり、苦しい所とかどこか強いところもある奈々佳の感じが

とても伝わって良かった!話し方が普段落ち着いているからこそ

かなに怒るシーンはより痛烈な痛みになったと思う。

殺陣のところも最後に相手として立っていたのが奈々佳なのはすごく

良かったし、最後奈々佳が刺される所も含めて良かった。


そして、千秋楽
最後の奈々佳―!って叫ばせるところでもっと好きになった笑





吉原久美子

熱血な教師

生徒にできることは何でもしたいお人よし。

生徒に本当の正しさと優しさを届けたいのに、本当の教師に四苦八苦していた。

昴のおかげで元々のありたかった教師を取り戻す。

まだ、不確かな部分はあるけれど人を見通すことに長けていて1人に全力なことに

中学校の担任を思い出した。


三田麻央さん

特に人と立ち向かうという所がフォーカスされる久美子の性格の感じと

麻央さんの感じにとても合っていることがとても伝わった。

インタビューを見ても、すごくまっすぐな感じが伝わる。

好きなシーンは、昴と千夏の話をする所で

「諦めないよ、夢を言葉にできる人は諦めない」って念押しするところかなぁ

あの語気の強さが本当にいい

あれは、昴が諦めなかったからだからこそ、同じその言葉にできる強さがある千夏に同じものを感じた時のあの語気が好きだった。


大津敏朗

セリフ数はそこまで多いわけではないが、一つ一つの所作と言葉に威厳と積み上げてきた

物を感じた。

また、多くの女優に関わってきたのに娘の千夏には上手く接することができない所に人間味がありそれが、より一つ一つのセリフを際立たせる。

物事の本質を見抜ける世界を持っているように感じた。


緒方晋さん

前日観劇したのに、千秋楽も観劇に行こうと思ったのは緒方さんのインタビューから

「作品は人に見られないと報われない」という言葉が印象に残りすぎて1分前にチケットを買った。

普段は、優しい関西のおじさんっぽい感じがギャップがあっていい。

大津監督の監督と親としての柔と硬に見えたところ

そして、かなに見せたその両面が少し混ざっているように見える最後の自信を持たせるアドバイスの所

その全てが良かった。



関谷忍

心優しいおじで面接官

しかし、その裏には娘になぜその道へ進むのかを問うてしまった過去からなる所

一人一人に向き合う姿がすごく直向きで少しおじさん味を所々感じながらも

とてもいい上司だ。

寿子の採用の場面が特に印象的で「話さなくてもいいよ」という一語に
自分の後悔や反省の全てが込められている。


堤下敦さん

堤下さんと呼びすぎて堤下敦さんと書くことに違和感しかないのだが

自分の推し

あの優しい柔らかい話し方の感じも今までの舞台とも似ているようで少し違くて良かったのだが、

それよりも千秋楽で見た背中に惹かれた。

哀愁のあるいい背中だった。

落ち着きもあるが少し寂しく見えるそんな背中



関谷昴

夢が思うようにいかず、自分の汚さを自覚しながら

同じように千夏にも挫折をしてほしいと考えているのは、苦しい人に内在する思いではないだろうか。

過去は取り戻したくなるし前に進もうとしてももがくだけ

上手くいっている人も妬み嫌に見える。

しかし、そこからまた生み出すストーリーが美しい。

最後のシーンで親子再会できて良かった。



松浦京佳さん

オーディションから激動の3ヶ月だったとおっしゃっていた
すごく良かった。

インタビューでもすごく聡明な方なのかなと思った。

すごく昴の葛藤がよく見えて良かった。

やはり、一推しは久美子との対話のところで

自分の苦悩や辛さ、自分の嫌な所が出るところが良かった。





長野くるみ

話が上手くできないハンディキャップを持ち、最初は自分というものがあまり出さない(出せない)状態だったと思う。初めて自分を出したのは、どれみが何をしたい?と聞いた時

あの時は、嬉しそうな顔が印象的だった。

しかし、くるみが頑張る姿は、どれみの辛さと苦しさを増幅させて最悪の結果になってしまった。

どれみの嫉妬心から生まれる儚く悲しい2人で作った物が全て壊れ、

時が流れてしまった後、どれみと再会した時の

過去も全て包み込み2年間の苦しみから解放するくるみが最高にかっこよく

さらにそこが昔と抱き締める側が変わっていることが

対比になっていることも本当に良かった


池澤汐音さん

役としてすごく難しい役だったと思うが、とても好きな役だった

全部のシーンもれなく好きなのだが、特に好きなのは、2回ある

どれみの話をとにかく聞くシーンの所の「あとは?」の違いがとにかく好きだった。

あそこは、くるみの2年間の成長が最も表れているシーンだし、そこがすごく明確だからこその良さがあった


峯岸裕司

人としての良さが随所に出ている一方で

どれみとくるみの喧嘩のシーンの後の語りかけでは「なりたい自分があるなら逃げてもいい」という言葉は、とても深くて重いと感じた。

そこは、施設から育ってきた2人(3人)だからこその距離感なのかなぁとも思う。

全体的に感情の中でも優しさと哀しさがよく出ていたなと感じる

どれみの相談役として話していた時に哀しさが一端に見えた

性格はとてもよく人にも優しいのだが、なぜか僕は表情にいっぺんの暗さを常に感じた。


石井良太さん

優しい大学生役がとてもよく似合うなと感じた。

すごく相談に乗る時の話し方が柔らかい感じが本当に良かったなと思った。

また、どれみとくるみの喧嘩の所のどれみとの会話シーンの所がやはり良かったなと

とてもセリフそのものは落ち着いていて励ます側なのにその所々に悲しさを感じるのが良かった。




福永寿子

すごく明るくて人事の中でもエネルギーをもたらしてくれる存在だが、

その髪の色によって分かりやすく見やすい物差しで測られてしまう時の会社での対応

今まで受けた言われのない偏見によって現れた面接時の髪の色を尋ねられた時の表情が印象的だった。

見られ方に期待していない気持ち面接での表情は辛さを想起しているようだからこそ

忍の言葉に救われたのだと思う。

さらに、してもらったことをそのまま返すことができるのがかっこいいと思った。

人の親切に気づける人返せる人は見ていても温かい気持ちになれる。

また、薫の気持ちを汲み取りながらも後押しできるところも良かった


今出舞さん

優しい後押ししている寿子も悲しい寿子も良かった。

全体的に柔らかい表情の現代の時間軸の所と2年前の面接時の表情のギャップが印象的だった。

会社で見た目に対する偏見を言われている時の

「ごめんね、いい女で」のところが言い方とか表情としては最も好きだった。



三崎萌

最初の萌とかなの会話の後の「チャンスの方から寄ってくる」というかなの話と

最後の「悔し死にしています」という萌の話はQ&Aになっているようで

若いうちからの成功による孤高の存在は

それによる見られ方の苦悩が随所の話し方に出ていて分かられない辛さを感じた。

Aになる最後の一言の語気に特に現れていた


中里萌さん

ONとOFFの切り替わりだったり自分も分からなかった辛さと分かられない辛さ

の相反する2面を持つ萌の悩みだったりがよく表れていて良かった。

推しシーンは最初と最後がQ&Aになっている所と

萌がしおりの病院に行く所で履歴書を見てしまう所かなと思う。

自分が唯一友人だと思っていて素をを出せた人は、自分の前でも素を出せず孤独なままだったと知った心境のところが良かった


ともえさん・藤井ノエルさん

ここは、役中と話を分割するか悩んだが双方を同時に紹介したい

なぜなら、挿入歌の捉え方をともえさんの歌とするか

ノエルさんの歌として伝えるかを決めかねたからだ。


ともえさんとしては手話のシーンがくるみのコミュニケーションが取れるという布石になっていたのが良かった。

特に最も最初のまだ舞台としては始まっていないところの手話から物語の流れを生み出しているところも含めて良かった。

一番はとにかく劇中歌が最高で声が本当に綺麗だった。

今もサウンドトラックを聴きながらこの文章を書いていた。

透き通る声と言葉の紡ぎ方がより舞台への没入感を上昇させた。

曲を聴くと歌が流れている時のシーンが思い返されて幸せだけど少し悲しいようなそんな気持ちになった。


ピアノ・社員B・山田ぴあ乃さん

社員Bは寿子に対しての陰口で出てくる声だが、実際の陰口のように聞こえるような聞こえないような少しのイラつきを覚える体験を想起させる

演奏では入ってくる所が本当に絶妙でスーッと物語に落ちていかせてくれる演奏

素敵以外に形容する言葉は私には思いつかない。

良かった。


サウンドトラックでも聞いたのだが、やっぱりいい。

昨日見た情景が音によって思い出される。


3、最後に

 まずはこんなにも長い駄文を読んでくれた方に感謝したい。

 なぜ、これを書いたのかというと

一つは、自分がすごく感情を揺さぶられていい作品だったので1人でも多くの人に良さを伝えたいと思ったから。

もう一つは、記憶はいずれ失い朽ちていくものだと自分が痛感したから

僕は過去に5−10回程演劇を観戦しているのだが、自分が感じたことやそれによってどのように世界が変わったのかは覚えていても5年も経てば記憶は荒れ果て

自分が感じた新鮮な想いを再び思い出すことは至極当然のことだが、難しい

そしてもし映像で見たとしてもその新鮮な想いを取り戻すことはおおよそ不可能だろう。

ならば、どれだけ駄文でも長くとも

書いてみるのは一つその当時の記憶を留めておく手段だと考えたのだ。

もしその過程で1人でも多くの人に良さを伝えることができたらこれほど素晴らしいことはないと考え公表しようと考えた。

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