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オーダー第一号鞄

当時は神戸六甲アイランドにある神戸ファッションマートという建物の中、クリエイターズオフィスというカテゴリーの場所にショウルーム兼オフィスを構えておりました。

名前の通りスタートアップのクリエイターに、神戸市が家賃補助出して貸してくれておりましたので、同じ年頃の色々なクリエイターが集まっておりました。イラストレイター、ゲーム作家、建築家、ファッションデザイナーにパタンナーなど。ビル内はクリエイター以外にインポーター、靴メーカー、建築関連、インテリア関連やアパレルメーカーなどなど。毎日館内を歩き回るだけでも楽しい空間でした。

ある日、オフィスにいると電話がかかってきました。
「嫁さんに新聞の切り抜き渡されて、ここで鞄頼んだら、と言われたんだけど、鞄作ってくれるかな?」

ちょうど前回の記事で書いた神戸新聞の記事が載ってすぐでした。
「はい、出来ますけど。どちらからお電話掛けられてますか」
遠いところだと来てもらうのも大変だし、かといって電話で聞いてもなかなか図面まとめるの大変だし、ファックスで要望送ってもらおうか、などと考えていたら、「神戸市東灘区〜」なんの事は無い、オフィスを出てすぐ、車で10分ほどのところの会社の社長さんでした。
ということで、都合のいい日時を聞いて会社へお伺いする事となりました。

会社へ伺うと土木工事用の大型車両がいっぱい。
「うちは高速道路とか作ってるんやけど、書類持って現場行ったり出張の時の着替えのシャツくらいしか入れないけど、ダンプにぶつけても壊れんよう頑丈な鞄が欲しい。仕事辞めるまで毎日使うから、死ぬときは棺桶にいれてもらうつもりやから、それまで使える鞄にして」とのご希望。
ダンプには勝てませんが、頑丈な鞄ということで仕様いたしました。

ボヤけておりますが、トップの写真がその時作った鞄です。
ごくシンプルな作りのアタッシュケースですが、黒の革で捲いて内装はペイズリー柄の生地を貼りました。
約2ヶ月ほどで完成して、無事に会社までお届けにあがりました。これが第一号のオーダーメイド鞄です。

3年ほど後にお電話をいただき、「鍵が壊れたから修理して」とのこと。作業現場は砂埃などがひどいので、錠前のグリスが滑らなくなりバネが弾けてしまうのです。工場へ送って無事に錠前交換いたしました。

さて、ここからオーダーメイド鞄に特化した『匠乃固鞄』がスタートいたしましたが、この先どんなご要望が出てくるのでしょう。    つづく

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