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10年で数億円、1ヶ月で33セント:AI画像時代のストックフォトの可能性

以前、ストックフォトで数億円を売り上げたことがありますが、価格競争の激化で写真の投稿をやめてしまいました。そして、AI画像の登場により、ストックフォト業界はさらに混沌としているようです。

大手クライアントの広告でのAI画像活用にはまだまだ課題がありますが、ストックフォトを通じてAI画像の可能性を検証できるのではないかと考え、再びストックフォトの投稿を開始してみました。

AI画像生成サービスに100ドルほど支払って画像を生成・投稿し、30日間の審査期間を経て、サイト掲載数日後に33セントを稼ぐことができました。 10年以上前に数百万円をかけてストックフォトを制作し、最初の1年間で得られた売り上げがわずか数万円程度だったことを考えると悪くないスタートかもしれません。

正直なところ、これからストックフォトで大きな収益を上げることは難しいと予想していますが、AI画像の活用法を模索し、自身の経験と知見を共有することで、ビジュアルコミュニケーションビジネスの未来への理解を深めていければと考えています。


ストックフォト業界の歴史とクリエイターの立場の変遷 

1990年代に初めて知ったストックフォトという概念。それから約30年、写真業界は目まぐるしい変化を遂げてきました。デジタル化、撮影機材の進歩、編集ソフトの発展など、技術革新はクリエイターの働き方を大きく変えました。ストックフォト業界も合併や買収、新たなビジネスモデルの登場など、大きな変革を経験してきました。
歴史を振り返ることで、AI 画像生成などの新技術に対応するヒントが得られるかもしれません。

19世紀末

アッジェ(Jean-Eugène Atget)などの写真家が、自ら撮影した写真を販売していました。アッジェは、パリの街並みを撮影し、その写真を芸術家や出版社、博物館などに販売しました。これは、撮りためた写真を後で販売するというストックフォトの基本的なアイデアの原型と言えるでしょう。

この頃は写真家主導だったと考えられます。アッジェの写真は、芸術的価値だけでなく、歴史的・文化的な記録としても重要であり、ストックフォトが単なる商業的な写真ではなく、時代を映し出す記録としても機能し得ることを示しています。

20世紀半ば

ストックフォト業界はイギリスの「Tony Stone Images」のような革新的な会社によって進化しました。この会社は写真家から作品を購入し、カタログで販売するという事業モデルを確立しました。これにより、写真の使用権の明確な管理と制作者の権利保護の基盤が作られました。

日本では広告写真の二次使用や期間延長等の料金が曖昧ですが、イギリスでは広告写真でも使用権の管理がしっかりしていて使用料が高額なことで知られています。このようなシステムによって、クリエイターは制作に集中することができるようになりましたが、その一方で、ストックフォト会社に依存することにもなりました。

1953年

トム・ケリー(Tom Kelley, 1914-1984)は、1949年にマリリン・モンローのヌード写真を撮影しました。当初はカレンダー用でしたが、1953年に「プレイボーイ」創刊号の表紙になりました。
「プレイボーイ」創刊者のヒュー・ヘフナーは、当時大スターになっていたモンローの写真の使用権を得るため、権利を持っている事務所と交渉しました。このエピソードは、Amazon Primeのドラマでも描かれています。

ケリーのモンロー写真は、 厳密にはストック写真ではありませんが、セレブリティ写真の商業利用の先駆けと言えます。現在、セレブリティ写真は重要なストックフォトビジネスになっています。
このエピソードは、写真の使用権と肖像権の問題を考える上でも示唆に富む事例です。

1980年代〜1990年代

アナログフィルム時代の最盛期。 ビジネスの形態は以下のようなものでした。

  1. 写真家が撮影したフィルムをストックフォト会社に提供

  2. ストックフォト会社が販売可能な写真を選別し、カタログに掲載

  3. 広告代理店や出版社などの買い手がカタログから写真を選択

  4. 買い手が選んだ写真のフィルムをストックフォト会社からレンタル

  5. 買い手がレンタルしたフィルムを使って印刷・製版し、使用後にストックフォト会社に返却

このプロセスでは、写真家は自分の写真を直接販売することはできません。
しかし、当時はデジタル化が進んでおらず、写真家はフィルムの現像や印刷に関わる技術的な部分では、一定の主導権を持っていました。また、ストックフォト会社との直接的なやり取りがあるため、ある程度の交渉の余地もあったと言えるでしょう。

人から聞いた当時のストックフォト業界の闇
自分で撮影したフィルムをストックフォト会社に提供しても、写真の選別や価格設定は全て会社側の裁量で行われます。 会社は売れ筋の写真を把握し、自社のカメラマンに同じような写真を撮影させて、次のカタログで優先的に掲載するのです。 フリーランスのフォトグラファーは、何千枚も撮影を重ね、ようやく需要のある写真を見つけ出すことができたとしても、その成果はストックフォト会社に吸い上げられてしまいます。

私はこの頃ストックフォトビジネスを知るのですが フリーのフォトグラファーが不利な立場であると感じたため 当時は参入を見送っています。

知り合いのディレクターは、海外ロケに同行した時のスナップ写真を預けるだけで、毎月100万円ほど稼ぐと言っていました。 コピーしにくいニッチな分野を見つけてこの時期に参入すれば良かったかもしれません。

1990年代〜2000年代

1995年にAmazonが書籍のオンライン販売を開始し、1997年にはDellがパソコンの直販を開始するなど、徐々にネット販売が普及していきました。
ストックフォトのオンライン販売も、eコマースの発展と密接に関連しています。

  • インターネットの普及:インターネットでのメディアの拡大によって、 ストックフォトの需要は、膨大に増えました。

  • デジタルカメラの普及:写真のデジタル化は進み、容易にネット上で写真を販売することができるようになりました。

  • ニコンD1発売: このカメラの登場により、プロ写真家の間でデジタルカメラの可能性が認識され始めました。 それまで、ストックフォトでリスクとなっていたフイルム代と現像代がなくなったのです。

  • EOS 5D Mark IIの販売:当時としては非常に高品質なフルHD動画を低コストで撮影できたため多くのフォトグラファーが映像制作にも参入し始めました。

  • ロングテール戦略: eコマースは、少数の人気商品だけでなく、多数の売れ筋以外の商品も販売できる「ロングテール戦略」を可能にしました。ストックフォトも同様で、幅広い種類の写真を揃えることで、多様な顧客ニーズに対応できるようになりました。

  • グローバル市場の形成: インターネットにより、地理的な制約を超えた商品販売が可能になりました。ストックフォト業界も、より世界中の顧客にリーチできるようになりました。

私は2000年代後半まで、ストックフォトに興味を持っていませんでしたが、知り合いの紹介で小さなストックフォト会社に写真をいくつか預けることになりました。空いている時間に撮影しているとは言え、売れるかわからないものにかける労力とコストが無駄だと考えるようになり、すぐに制作するのをやめてしまいました。

ところが、私の契約していた会社は、 業界大手のGetty Imagesによって買収されます。するとほとんど売り上げがなかった私の写真が急に売れるようになったのです。
当時はRMが主流だったので、1枚の写真が数十万円で売れることもありました。ストックフォト会社のディレクションで撮影することもあり、 フォトグラファーにある程度の発言権はありました。

ライツマネージド(RM)
写真の使用権が管理されているモデル。
買い手は写真の使用目的、期間、地域、メディアなどを指定して購入。
価格は使用範囲に応じて設定され、通常はRFよりも高額。
写真の独占的な使用が可能。
主に高品質な写真や著名な写真家の作品に用いられる。
ロイヤリティフリー(RF)
写真の使用権に制限がないモデル。
一度購入すれば、期間や用途に関わらず何度でも使用可能。
価格は通常、RMよりも安価で定額制。
同じ写真が他社でも使用される可能性がある。
手軽なため、ブログやウェブサイト、中小企業の広告などで人気。

2000年代

iStockPhotoの登場 
ロイヤリティフリー(RF)で恐ろしく安く売ると言うマイクロストックというビジネスが誕生しました。後にGetty Imagesに買収されます。
専属のクリエイターになれば、ロイヤリティーが25%から45%ほどになりますが、他のサイトでは一切販売してはいけないという厳しい契約条件です。
現在は専属でないと15% ! というロイヤリティーです。

この頃には、クリエイターには、ストックフォト会社に対する発言権がほとんどなくなってしまいます。

今では信じられないかもしれませんが、当時のiStockのサイトには、どの写真が何枚ダウンロードされたか、正確な数字が表示されていました。
値段はRFで固定されていたため、各クリエイターがどのくらいの売り上げがあるか容易に予想することができました。私はあるニッチな分野の撮影をしているフォトグラファーの売り上げを計算してみたのですが、 非常に売り上げが高いことを知り驚きました。
単価ではRMの方が高いのですが、売れる枚数の桁が違うため、マイクロストックの方が利益があると気づいたのです。
私はすぐに投稿の全てをマイクロストックに変更しました。 iStockの データをもとに需要と供給のバランスが崩れているコンテンツを見つけ、それを撮影しました。
iStockの専属になったクリエイターはかなり利益を上げたようですが、 私は専属にならず、 急成長していたShutterstockや他の複数のサイトに同時投稿してみました。

どの戦略が最適だったかは分かりませんが、私はこのマイクロストックで利益を上げることができました。

2010年代〜2020年代

Envato Elements, Storyblocksの登場
サブスクを契約すると、そのサイトにある画像が無制限にダウンロードできるというサービスが登場しました。
私もこのようなサービスに参加しないかと、何度か連絡を受けたことがありますが、全て断っていました。

2020年になり、すでに追加していなかった私のコンテンツの売り上げは落ちつづけていたので、投げ売りするような気持ちでこのようなサイトに預けてみました。
すると、驚くことに売り上げが5倍ほど上がりました。

時代の変化や、ストックフォト会社の度重なる ルールの変更にクリエイターは常に翻弄されてきました。しかし、時代の変化に対応できたストックフォト会社やクリエイターはまだ収益を上げることができそうです。
私はいくつかの幸運にも恵まれましたが、多くの失敗もあり最終的には
脱落しました。

2020年代 AI画像生成の登場

これまでクリエイターはストックフォト会社にはやられっぱなしですが、AI画像生成の登場はかなりインパクトのある出来事です。

AdobeのAI画像生成サービスはAdobe Stockのイメージを使って学習されているので、著作権的にはもっとも安心して使えるとされています。それが可能なのは、Adobeに投稿する際の契約書にAI画像生成のデータセットに使用される可能性があることが含まれていたからです。記述が曖昧でこの事実に気づいていたクリエイターはほとんどいなかったでしょう。
(気づいたとしても、 それを 理由に投稿を辞めるクリエイターもいなかったでしょう。そのくらいクリエイターに発言権はありません。)

つまり、クリエイターの明確な許可なくAI画像システムを構築していたのです。ストックフォトクリエイターとしては、自分たちの仕事を将来奪う可能性のあるサービスに協力していたという複雑な心境です。

しかし過去の歴史を見ると、変化に柔軟に適応していくことが重要だと思われます。
ただし、Adobeを含むサービスプロバイダーには、透明性の確保と適切な報酬の分配を期待したいです。クリエイターを尊重する姿勢なくして、このエコシステムの持続的な発展は望めないでしょう。公約通りAdobeはデータセット用の報酬をクリエイターに支払いはじめています。

AI画像生成時代にストックフォト業界に再参入

このビジネスは、 写真を撮ることではなくて、必要とされているビジュアルを提供することだと私は思っています。 個人的に写真を撮る事はもちろん好きですが、 ストックフォトビジネスで、実際に撮影することにはもう興味がありません。 この判断は、各クリエイターの写真と仕事に対する考え方によって異なるでしょう。

写真を撮ることが最適な場合もあります。場合によっては、AI画像生成の方が有利な状況もあるかもしれません。そのような場合、写真を撮ることにこだわるのではなく、AI画像生成を活用するなど、柔軟なアプローチを考える必要があります。
重要なのは、クライアントのニーズを的確に捉え、それに応える最善の方法を選択することです。

通常の広告写真のクライアントとストックフォトのバイヤーが求めているものは異なることが多いのです。
デジタルカメラが普及し始めた頃、 ストックフォトを制作しているクリエイターがいち早くデジタルカメラを導入したのに比べ、広告業界では長い間フイルムが使われていました。
当時、広告業界では、 フォトグラファーもクライアントもフィルムにこだわることがあったが、ストックフォト業界では、一定のクオリティに達していれば、フィルムだろうがデジタルカメラだろうが、気にするバイヤーはほとんどいなかったと思われます。
AI画像はどうでしょうか。AdobeのサイトではAI画像と実際の写真を別々に、フィルターをかけて検索することができます。しかし同じ価格で必要なビジュアルが得られるなら、ほとんどの買い手は気にしないでしょう。

こういう世界もあります。
現在、広告写真のほとんどはデジタルカメラで撮影されているが、トップクラスの広告クリエイターはいまだにフィルムを使う場合がある。また、今年のアカデミー賞撮影賞にノミネートされた作品の8割はフィルムカメラで撮影されている。

写真撮影からAI画像生成への移行が、フィルムカメラからデジタルカメラへの移行のように劇的なものになるとは考えにくいですが、似たようなことが起こる可能性はあります。

例えば、 ”meeting business woman”と 検索したときのAdobe Stockの結果を見てみましょう。
スクリーンショットをそのままここに掲載していいかわかりませんでしたので、リンクをご覧ください。

こちらは、実写

こちらは、AI画像

まだこれらのイメージの違いを判別することはできます。しかし、バイヤーにとってはその差はあまり重要でないかもしれません。

制作コストを考えてみましょう。

実写の場合
1度の撮影で、数十枚は イメージが制作できるでしょう。

フォトグラファーの労働時間: 合計14時間
事前打ち合わせ: 2時間
当日の準備と撮影: 8時間
画像の選定と仕上げ: 4時間

アシスタント代: 4万円 (1日拘束)
モデル代: 10万円 (ストックフォトレベルの複数モデル起用)
スタイリスト料: 8万円
ヘアメイク料: 8万円
ロケーション使用料: 5万円 (会議室等の室内)
機材レンタル料(照明等): 3万円
交通費: 2万円 (タクシーチャーター等)
食事代: 2万円 (昼食、軽食等)
諸経費: 8万円 (保険料、衣装、消耗品等)
合計: 50万円

AI画像生成の場合
クリエイターの労働時間: 合計10分
AI画像生成のサービス料はおそらく1枚$1以下

また、画像の数にも注目したいと思います。
実写 1,698,143
AI画像生成 175,054

Adobeに買収される前のFotolia時代からの写真も 含まれているとしたら、10年以上にわたって1,698,143点の画像が投稿されていることになる。
しかし、AdobeがAI画像を受け付けるようになって1年ほどで、 参入してから数ヶ月しか経っていないクリエイターもいることを考えると、AI画像の割合は多い。

分野によっては、撮影する合理的な理由がない場合がある。

今回の再参入は、AI画像生成とビジュアルコミニケーションビジネスの関係を検証したいのが主な理由ですが、もちろん利益がでればそれに越した事はありません。

以上のような前提を踏まえた上で、私が考えるAI画像を活用したストックフォトビジネスの攻略を以下の3つの観点から提案したいと思います。

  • プラットフォームはAdobe Stock

  • AI画像生成サービスはAdobe Firefly

  • AI画像ならではのニッチな分野を特定

これらの提案について、それぞれ詳しく説明していきたいと思います。

プラットフォームはAdobe Stock

AI画像をストック写真に投稿する際、どの会社を選ぶべきでしょうか?この問いに答えるため、YouTubeチャンネル "Microstock Life" が実施したアンケート調査のデータを分析しました。ストック写真業界に関する有益な情報を発信しているチャンネルで、今回のデータ使用について快諾してくださいました。AI画像の投稿を検討しているクリエイターは、ぜひチェックしてみてください。

調査によると、回答者の大多数がAdobe Stockに投稿していることがわかります。次点でDreamstimeが続きますが、他の会社への投稿は限定的です。そもそも、AI画像の販売を許可しているストックフォトサイトは多くありません。

アンケートに答えたクリエイターが、どのストックフォトサイトを利用しているかのデータ

Adobe Stockは、AI画像生成を活用したストックフォト投稿において、現時点で最も優れた選択肢だと言えます。同社はAI画像の販売を積極的に推進しており、クリエイターにとって高い収益性を期待できます。また、審査プロセスも比較的スムーズで、多くのクリエイターが高い承認率を報告しています。
収益面でも、Adobe Stockは有望です。一部のクリエイターは既に月10万円以上を稼いでおり、AI画像生成がAdobe Stockで許可されてからまだ1年という短期間であることを考えると、注目すべき数字です。現在は収益化に至っていないクリエイターも多いですが、AI画像への心理的障壁や法的・倫理的問題が解消されれば、投稿数と収益は大きく伸びる可能性があります。
ただし、AI画像生成技術の普及は、競争環境にも影響を与えます。参入障壁の低下や制作速度の向上により、投稿作品数が大幅に増加し、価格競争がさらに激化するかもしれません。
Adobe Stockは、Creative Cloudとの連携、顧客データの活用、決済の利便性など、他社にない優位性を持っています。特に、多くのクリエイターと顧客の決済情報を既に保有しているという点は、販売機会の拡大につながる大きな強みです。

収益化を分散させるために、Adobe Stock以外のストック写真会社への投稿も検討に値します。手間はかかりますが、複数社への投稿で収益源を多様化できます。

AI画像生成サービスはAdobe Firefly

現在、商業利用が許可されたAI画像生成サービスの中では、Adobeのサービスが最も安心して使用できると考えられます。しかし、プロンプトの作成には著作権に配慮し、生成された画像をそのまま使うのではなく、Photoshopなどで修正・加工・合成することをおすすめします。
AI画像生成の著作権がクリエイターにどの程度与えられるのかは未だ不明確です。したがって、AI画像生成をもとに自らのクリエイティビティを発揮することが最適だと思われます。

Adobe Firefly以外では、iStockやShutterstockも比較的安全に制作できますが、ストックフォトとして販売はできません。

以下は、主要なAI画像生成サービスの比較表です。

2024年3月の情報です。情報は頻繁に変更し、
商業利用の条件も各サービスによって様々なので使用の際には各自での確認が必要

ゲッティイメージズがStability AIを訴えている事実は、AI画像生成のデータセットの問題を示唆しています。特にLAION-5Bは、著作権で保護された画像や問題のある画像を含んでいる可能性が指摘されています。

多くのサービスでデータセットが不明な現状では、将来的に法的問題が生じるリスクがあります。欧州では数年後にAI画像生成のデータセット公開を義務付ける法律も決まっています。
AI画像生成技術は急速に普及しており、生成された画像がデータセットに組み込まれている可能性もあります。違法なAI画像を見極めることは非常に困難です。また、この技術を全世界で統一して禁止することは現実的ではないでしょう。

現在、多くのAdobe Stockクリエイターが Midjourney を使って制作しているようです。Midjourney は商業利用が許可されていますが、使用しているデータセットが明らかにされていないため、将来に法的問題が生じる可能性があります。Adobeに問い合わせても、どのサービスを使った画像が問題ないかの明確な答えは得られず、クリエイター自身が法律的問題を調べて判断する必要があります。現在は販売できても、将来に問題が生じる可能性はゼロではありません。Midjourney の使用は各自の判断が求められます。

また、最近ではAdobe FireflyのリファレンスイメージにMidjourneyの画像をアップロードすることが、商業利用するプロの間で流行しているそうです。しかし、Adobe Fireflyの利用規約を見ると、リファレンスイメージとしてアップロードする画像は、著作権上の問題がないことを確認するよう求められています。Midjourney で生成された画像をリファレンスとして使用することは、この規約に抵触する可能性があり、法的リスクを伴うかもしれません。

しかし、現在画像のクリエイティブを優先した場合は、Midjourney を利用し、その後PhotoshopやMagnific AI, TopazなどのAI拡張ツールを利用するのが、最もクオリティーを上げる方法のようです。現実的に、将来問題が発生しても、これらの画像を完全に排除していくことは難しいと思われ、副業など個人的なクリエイターには問題が及ぶ可能性は少ないとも考えられます。繰り返しになりますが、この辺りの判断は個人に委ねられます。

AI画像ならではのニッチな分野を特定

AI画像生成技術の登場により、ストックフォト業界には新たな可能性が開けています。しかし、単に良いビジュアルを作るだけでは、大きな収益を上げることは難しいでしょう。過去の歴史を見ても、需要のある画像を制作することが売上につながってきました。AI画像の時代においても、この基本的な原則は変わりません。

ストックフォトの制作では、常に時代が求めている画像を調査し、需要と供給のバランスが崩れたニッチな分野を特定することが重要です。そして、そのニッチな需要に合わせて画像を制作することが、収益化の鍵となります。

AI画像生成の場合、従来の方法でニッチな分野を探ることに加え、AI画像でしかできないこと、もしくはコスト的・技術的に実現が難しかったことに着目するのも一つの戦略です。AI画像生成が認められてからまだ日が浅いため、そのような未開拓の分野が存在する可能性が高いのです。それらの分野を特定し、最適なAI画像生成サービスや編集アプリを駆使して制作することで、他との差別化を図ることができるでしょう。

また、映像分野にもAI画像生成技術の活用が期待されます。現時点では実用レベルに達していない部分もありますが、技術の進歩は著しく、将来的には大きな需要が見込まれます。映像の耐久年数や、新たなAI技術の登場なども考慮に入れつつ、慎重に参入のタイミングを計る必要があります。需要のあるAI画像の映像を見出し、高品質な作品を提供できれば、大きなビジネスチャンスにつながるかもしれません。
Soraが一般に解放されたら、ストック業界のみならず、大きな影響を与えるでしょう。

AI画像生成技術は日進月歩で進化しており、常に最新の動向を追い続ける必要があります。ニッチな分野の発掘と、技術の特性を活かした制作は、これからのストックフォトクリエイターに求められる重要なスキルだと言えるでしょう。

まとめ

ストックフォトに限らず、AI技術はあらゆるクリエイティブ分野に影響を及ぼすでしょう。ミュージシャン、イラストレーター、デザイナー、映像クリエイター、作家など、創造性を発揮する全ての人々にとって、AI技術は脅威であると同時に、新たな表現の可能性を秘めたチャンスでもあります。

このnoteでは、AIに対する好意的な意見と批判的な意見が混在しています。私自身、両方の意見に一定の理解を示すことができます。AIの発展に伴う著作権の問題は無視できない重要な課題ですが、一方でこの技術の進歩をグローバルに制限していくことは現実的に難しいと感じています。

そこで私は、AI技術の是非を議論するよりも、むしろその活用方法を積極的に模索し、検証していくことが重要だと考えるようになりました。

変化の激しい時代だからこそ、柔軟な発想と適応力が成功への鍵となります。AI画像生成の可能性を追求しながら、クリエイティビティを存分に発揮していきたいものです。


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