長年連れ添ったホクロを取った話
僕の鼻の下にはホクロがある。
そのホクロが40歳になってデカくなってきた気がしてきたので皮膚科へ行ったら、病理診断の為に取りましょうということになった。
長年連れ添った大事なパートナーだった身体の一部…別にあって得したという気はしないけどホクロにまつわるあだ名を手に入れはした。
そんな思いも湧き上がりつつ、いつ取ることになるのかを聞いたら「今日、今から取ります」と宣言されて、おそらくわざとらしいぐらいにイマ!?と叫んでしまった。
心の準備が出来ていない。
長年のパートナーが…いやそれよりも手術的なモノが突然決まるなんて想像していない。
「このホクロは悪いもんですか?」という質問に対してYES or NO が欲しかっただけなのだから。
こっわ。
え?今から身体(顔に)メス入れんの?
戸惑いながら診察室前のベンチに座っていた。
よくよく見れば周りは女性ばかり。
あぁココは美容系治療に明るい皮膚科なのか。
麻酔注射が痛かった。
反射的に涙が出ていたのをガーゼで拭かれた時は恥ずかしくて「あくびしたからです」と誤魔化した。
施術中の痛みは無かったが、血が流れて頬まで来た時に先生が「おぉおぉ…」と慌てた時は内心焦った。
術後、出血が止まるまで横になっていたら「これ気になりませんでした?」とまぶたに出来た小さなイボの事に触れて来た。
正直鏡を見たら気になるぐらいではあったけども、そこまでの思いは無かったが「取っちゃいましょ、一瞬なんで」と言った10秒後には取られていた。
こうして僕のホクロ除去手術は終わった。
病院を出た時、僕は何が変わったのだろうと考えた。大袈裟かもしれない。かもしれないじゃなくて大袈裟だ。
ただ個人的には2歳ぐらいからある身体の一部、特にあだ名にまでされた部位を取ったのだから僕自身のアイデンティティを失ったような気さえもする。
抜糸が1週間後にあるが、この抜糸後に僕はアイデンティティを新たに確立するために生きていかねばならぬ。
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