かんごし通信 その10(2020.8)
小さい頃からとにかく目立ちたがり屋のこどもであった。小学生の頃の私は特に成績が良い訳でもなく、はたまたクラスで人気のお調子者という訳でもなかったが『学級委員』のような今思い返せば先生から面倒ごとを背負わされるだけの役職に目を輝かせていた。普段は休み時間になると図書館の隅で漢字も読めない歴史の本を読み漁ったり、誰も聞いていないような変な洋楽を聞いてニヤニヤしているだけのこどもであったが、クラスの係を決める時期になると高々と右手を挙げるのであった。そんな調子なので『学級委員』の栄光を掴み取ることはほとんどなかったが、高校生の時には『看護クラブ委員長』という生徒会の中でも特に何をしているのか分からない役職についていた。今思い返しても覚えていることといえば、前年度の委員会が製作した『はみがきっこマン』という歯磨きを題材にしたこども向けの紙芝居で自分は何もしていないのに表彰されたことと、ハンドマッサージのマニュアルを書くために当時のガールフレンドの手を握り、ニヤニヤしながら絵を描いたことくらいである。そんな私が『感染対策委員』になるのは看護師として働いて数年後のお話である。
ほとんどの病院では数や内容に違いはあれど『委員会』という活動が行われており、私の病院では右手を高々と突き上げて立候補することがなくとも、経験年数が三年を越えると誰もが委員会に所属することになってた。病院の委員会では、小学生のように先生から面倒ごとを背負わされることは少なく(たまにはあるのだが)より良い看護を提供するための会議や勉強会の準備など様々なことが行われる。その中で、看護師三年目を迎えた私が所属したのが感染対策委員会なのであった。感染対策と一口に言ってもその内容は膨大であり、毎月の感染者数、検出された菌の種類などに始まり、手指の消毒剤の使用量やゴミの捨て方など、よくもまあ毎月こんなに話し合うことが出てくるものである。そんな私が目立ちたがり屋の念願叶って仙台市の感染症学会で研究発表をすることになるのはまた数年後のお話である。
終息するかのように思えた新型コロナウイルスの感染者が100人、200人と数字を増やす昨今、病院でも感染者を出すまいと感染対策に余念がない。面会制限はもちろん少し病棟を離れる際にも確認が必要で、マスクの着用、手指衛生とただでさえストレスを感じる入院生活に拍車がかかることだろう。私たち看護師をいくら怒鳴りつけても構わないが、院内感染、果ては日本の将来のためにご協力いただきたいと思う。
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