かんごし通信 その4(2020.1)

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。とは言ったものの、この原稿を打ち込んでいるのは令和元年十二月の某日、真夜中の病院の中である。皆様におかれましては大晦日に清酒を口に含んで紅白歌合戦を見たり、除夜の鐘の音を聞きながら今年一年を振り返ったであろう一二月三十一日もまた、私は病棟中をせかせかと歩き回る予定になっている。この仕事を生業として間もない頃は、「正月も休みなく働くなんていうのは、なんだかとても看護師っぽいぞ」などと誇らしくすら思えていたものだが、それも百八つを数えるうちに、だんだんと煩悩だらけになってしまったようだ。来年こそはぜひ、家族とのチャンネル争いに馳せ参じる正月にしたいと思うが、我々看護師がせかせかと歩き回っているということは即ち、盆も正月もクリスマスも病院は稼働しており、更には入院されている患者様がいるということになる。わざわざ正月に体を患って入院する事になるとは日頃の行いか、それとも何もすることがない病室で本でも読みながら年を越すというのは案外良いものなのであろうか。そんなことを考えながら今日も帰路に着く。

 看護師の夜勤には様々な勤務体制があるとは思うが、大体は『二交代』と『三交代』に大別される。これは読んで字の如く、二交代では『日勤、夜勤』、三交代では『日勤、準夜、深夜』と交代制勤務の種類を表しており、私の病棟では三交代制を採用している。それのおかげで一二月三十一日の『深夜』では0時頃に「よいお年を。」と言いながら出勤し、一月一日の一時になったら、退勤する『準夜』の看護師を見送りながら「今年もよろしくお願いします。」と呟くことになるのである。看護師の夜勤とは一体何をしているのかというと、いつでもこのようにパソコンを持ち出して月間かみのやまの原稿を打ち込んだりしている訳では決してない。まずは前勤務帯の申し送りを受けた後に担当する患者のカルテを見て情報収集、内服薬や点滴の管理、手術後の患者がいれば時間ごとに状態を観察、急な入院のへ対応や翌日の退院の準備、新人指導、委員会の業務、その間にもナースコールが鳴りやむ事はない。特に起床時間になってからの数時間はまさに戦場と化す。夜勤明けの朦朧とした意識の中で、テレビショッピングなどを見ながら数回しか使わない健康器具を購入してしまうのも看護師の性なのである。今年の目標は無駄遣いを自重することに決定。

 せめて大晦日くらいは救急車の音が聞こえない、厳かな夜勤になることを願い、新年の挨拶を締めくくらせていただこう。

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