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仲間と学びで、未来を拓くーー人事図書館にかける想いと、これから。

はじめに

2023年10月。「人事図書館、つくります。」というX(Twitter)のポストが大きな反響を呼びました。

コロナ禍でより加速する事業環境の変化や、様々な技術革新や法令改正など、人事が対応しなければならないことは多種多様である現代において、良書に触れて先人たちの知恵から学んだり、集まった仲間同士で対話・議論をしながら自分の考えを深めていける。そんな場づくりへの期待から、多くの人が共感し、応援のコメントが集まりました。

物件選びからコンセプト設計まで何も決まりきっていない中で、あえてSNSに投稿して応援してくれる仲間を集めたわけとは。発起人である吉田洋介さんに、お話を伺いました。

プロフィール

吉田洋介さん
1982年生まれ。北海道札幌市出身。㈱Trustyyle代表取締役。新卒で㈱リクルートマネジメントソリューションに入社し、営業、コンサルタント、事業企画、海外事業立ち上げなどを担当し、支社長や事業責任者などを歴任。2021年に独立。これまで500社以上の採用、育成、制度、組織開発を支援。

衝撃的な体験だった小学1年生の三者面談。ここから、人に関心を持つようになった。

まず簡単にこれまでの経歴をお話しますと、新卒でリクルートマネジメントソリューションズ(以下、RMS)に入社しました。大阪からキャリアがスタートして、東京、上海、福岡と働く場所を移しながら、一貫してクライアント企業を人事面から支援・伴走していく業務をやってきました。中小企業から大企業まで、あらゆる規模・フェーズの組織と関わってきましたね。RMSには14年ほど在籍していたのですが、2年半くらい前に会社を辞めて独立しました。独立後は組織人事コンサルティングの会社を立ち上げたり、他にも複数の企業に身を置きながら、引き続き人事面全般から様々なクライアント企業の支援をしております。

また『壺中人事塾』という人事のプロを目指す方のオンラインプログラムの運営を、塾長の坪谷さんと一緒にやらせて頂いていたりもしています。2021年の立ち上げ期から関わらせてもらっているので、もう2年以上になります。人とか組織が大好きなので、社会人になってからずっと楽しく仕事をさせてもらっているって感覚があります。

知らなかったことを知りたい。やったことないことをやってみたい。物心ついたころからずっと好奇心旺盛な性格でした。生まれは北海道なんですけど、札幌の地下鉄って車輪のタイプが2種類あるんです。ゴムタイヤ式の珍しい車輪なのですが、その中でも出っ張っている形と引っ込んでいる形の2つがあるんですよ。小学生の頃にそれを見つけて友達に意気揚々と話したら、みんなポカーンとしていて、全然関心を持ってもらえないことにびっくりした覚えがあります(笑)

担任の先生からも、小学1年生の時の三者面談で「洋介くん、ちょっと外で待っててくれる?」って言われて、僕の親に「洋介くんは一人っ子なんで、人付き合いが苦手なんですよね」と。恐らくわざとではなかったんですけど外でも丸聞こえでした(笑)当時は結構衝撃を受けましたが、その時はじめて「自分は人の気持ちが分からないんだ」というのが胸に刻まれました。そこから相手の気持ちをもっと知りたいと思うようになりました。

中学時代からずっと続けているバンド活動。ここに、今の自分のモチベーションの源泉がある。

人や組織・チームに湧いてくる興味関心は、学生時代からずっと変わらないものなんです。

中学生の頃からずっとバンド活動をやっているんですけど、数えてみたらこれまでの人生で100近いくらいのバンドを組んできたんですよ。大学生の頃はいくつものバンドを掛け持ちしていたので、1日の間に複数の練習をはしごする、なんてことがざらにありました。

このバンド活動って、実は仕事のプロジェクトにすごく近いものがあって。学園祭に出たいとか、あのライブに出たいとか、好きなあの子に振り向いて欲しい(笑)とか、みんないろんな目的を持って一時的に集まるわけじゃないですか。しかも、基本的にはバンドで飯を食っているわけじゃないので、学業とか、仕事とかみんな本業はありつつ、趣味として活動することが殆どです。なので、目的もモチベーションの高さもバラバラなメンバーが一つのバンドとして活動していくには、チームの目標だったりメンバーとの関わり方を絶えず変化させていくことが大事なんです。これが上手くいくか次第で成果が大きく変わってくるんですよ。

この営み自体が僕にとってはすごく面白くて。上手くいかないチームがもっといい状態になっていくには、もっと楽しく取り組むには…色々と考えるようになっていったんです。そこから自分でサークルを立ち上げてみたり、100人規模で琵琶湖のほとりでキャンプをやってみたり、色々と活動するようになっていきました。

自分はただラッキーだっただけなんじゃないか。それを確かめるために、単身サンフランシスコへ。

大学3年の終わりに一度就職活動をしてみたんですけど、自己分析をするなかで「これは本当に自分の強みなのだろうか、それとも周りに恵まれてラッキーだっただけなんじゃないか」と不安に駆られた時期がありまして。バンドでも一定やりたいことができて、大規模なイベントなどもやれて、自分のやりたいことはどんどん実現していったのは、たまたま素敵な人たちと出会えたからで、自分の力なんて何にもないんじゃないか、と思ったんです。それで就活はいったん辞めて「今まで積み上げてきたものが全く通用しない環境に、一度身を置いてみたい」と思い立ち、1年休学してサンフランシスコに行ったんです。全てがゼロからの状態から、自分がどこまでいけるのか試してみたくなったんですよね。

行ってみたら、現地の日系旅行会社でインターンシップとして働かせてもらえたり、台湾、韓国、コロンビア、フランスなどから来ている仲間が沢山出来ました。バンドでライブもできたり、いろんな活動が出来たんです。ここで「ゼロからでも周りと関係性をつくって、短期間でも何かを立ち上げて形にできるんだ!」ということが自分が持っている強みなんだって気づいたんです。これは、将来自分が生きていくうえでの拠り所になっていくと感じました。

加えて、アメリカでは専門性の高い人たちが、自分の大学で学んだことに誇りを持ち専門性を磨いて、楽しそうにイキイキと働いている様子を目の当たりにして、すごく憧れを持ったんです。自分は人とか組織のことが好きだけど、専門家とは言えない。もっと組織のことを勉強してみたい。それで、帰国後に大学院に進学することを決めました。自分の両親からしたら、休学1年に加えて大学院2年も社会に出るのが遅れることになるので、たまったものじゃなかったと思います(笑)それでも、学びたいという気持ちが強かったですね。

大学院では、主に組織論を中心に学びました。今まで知らなかった組織や働くことに関する理論、これまでの議論などを知れたことで、自分のやってきたことと繋がる実感もありましたし、どうやったら良い組織になるのかについてここまで深い知見が既に生み出されていることに衝撃を受けました。この学びの経験が、今の自分の専門性の土台となっています。

一方で学んだことが現実の社会ではあまり生かされていない実態も見えてきて、「数十年前に発見されている理論が未だに社会実装されていないのはなぜなのか」という疑問を解き明かし実装に向けて動けるようになりたいと思いました。そのため、日本で一番多くの実例を持っていて社会実装をしようとしているRMSを選びました。

めちゃくちゃいい会社で、大きな不満もなかったリクルートを辞めたわけ。

人や組織を、少しでもいい状態にしていきたい。この想いで入社からずっと働いてきましたし、それが実現できていて、かつ自分の欲求も満たされている感覚はずっとありました。入社前に思っていた疑問や仮説は概ね検証できましたし、実体験も積むことができました。RMSは今振り返ってもめちゃくちゃいい会社だったと思います。そんな会社をなぜ辞めたのかというと、単純に「1社でしか働いたことのない人生は嫌だなぁ」というワガママですね(笑)特にRMSは口コミサイトOpenworkでもNo.1になるくらい良い会社で、いい環境と仲間に囲まれていました。一方で恵まれた環境だからこそ、たまたま自分はやってこれたのかもしれない。だったら、一度外の環境に身を置いてみて、自分の力で世の中に本当に意味のあることが提供できるのか、試してみようと思って飛び出ていきました。

そんなチャレンジをするとして、40歳という年齢が一つの節目なんじゃないかなと思い、その手前のタイミングで退職を決意しました。上司に伝えたら、すぐに社長にまで伝えて下さったんですけど、「あいつ先週も全体会議で元気に発言していたじゃん!」と全然信じてもらえなかったみたいで(笑)それぐらい、会社に大きな不満もなかったんです。

退職後は独立という形になりましたが、辞めるのが先だったので「正直何しよう?」という感じでした(笑)自分が何が得意なのかも分からない状態だったので、役に立てそうなことはとにかくやってみようと思い、友人から案件をご紹介いただいたりして、少しづつ仕事の輪を拡げていきました。色んな方に助けて頂き、ここまで生きてこれたのかなと思っています。

人事は孤独な仕事になりがち。
そこに気づいたときから、人事図書館の構想が始まった。

きっかけは、坪谷さんとやらせて頂いている『壺中人事塾』でした。上場企業の人事マネージャー、スタートアップの1人目人事など、本当に様々な方が塾生としていらっしゃるんですけど、「会社の中でこういう相談をできる人がいないんですよね」と多くの方が口にされるんですよ。そこで、社内で孤独になっていたり、1人で抱え込んでいる方って結構多いのだな、ということに気づいたんです。

世の中的に人事への期待はどんどん高まり、使うツールなんかもどんどん新しくなっています。それらに追いつくだけで必死になると、そもそもこういう社外の学びの場にも来れないじゃないですか。まだまだ1人で悩みを抱えている方って沢山いらっしゃるんじゃないかって考えるようになりました。もっと気軽に接点を持てるような場をつくりたい。相談や学びのハードルを低くしたい。そういう想いが、人事図書館というひとつのカタチをつくっていくきっかけになりました。

また、人事という仕事はその性質上、どうしても機密性を帯びてしまうものなので、本当に悩んでいることを相談しづらいという側面があるんです。例えばですけど、仮に人員削減について検討指示が上から降りてきたとしたら、そんなことは対外的には絶対に言えないでしょうし、社内の人にだって漏らしてはいけない。本当は相談しながら進めたいと思いつつ、重たい相談ほど一人で抱え込んでしまいがちです。オープンな場では名刺交換から入るので「〇〇会社の誰々です」って分かった状態では相談できなかったり、オンラインでもログが残る可能性があるので言えないことも多い。だからこそ、リアルな対面の空間で、会社という鎧を脱いで、本当に困ったことについて安心して相談が出来る場を作れたらなと思っていました。

悩みを抱える人事の人が、最高の体験ができる場をつくりたい。そこから、相談がすぐ出来て、コワーキング的に働ける空間があって、みんながお互いに学びあえる場、というイメージから、良書が沢山ある図書館というモチーフが出来上がっていきました。

とはいえ、場所も内容も運営体制も何も決まっていない状態。あまり寝かせるとタイミングを逸してしまうと思い、自分を逃がさないように概要など最低限の情報をまとめたグーグルスライドを20枚だけ用意して、パッとX(Twitter)に投稿してみたんです。そしたら、想定以上に大きな反響を頂く形となりました。

人事に関わる方々にとって「人が集まり良書が揃っている図書館」に対する関心の強さを感じましたね。具体的なイメージがまだない中で沢山興味を持っていただきましたし、なかには「こんなところで働いてみたい!」なんてお声も…何もない段階で働きたいってどうしたらいいんだろ!?と悩みましたが(笑)、それほど期待感が高いということなのだと受け取らせて頂きました。

10月に投稿されたポスト。19万インプレッション、1000以上のイイネを集めた
(2023年12月現在)

「仲間と学びで、未来を拓く」
人事図書館にかける想いと、これから。

先人たちが築いてきた知恵をしっかり集積して、現代や未来に活かしていく。その上で、現代を生きる自分たちが、知恵を交わらせて学び合える。ここを、人事の領域にこだわって、人事図書館の場でやっていきたいと考えています。書籍や過去の研究には今の時代にもヒントになる情報が沢山眠っています。それが失われてしまうことは大きな機会損失だと思いますし、現代の時代の人事という仕事で苦しんでいる人が、短距離で、短い時間で、効果的に学ぶことで、目の前の仕事に活かしてほしい。それが、より望ましい未来につながっていくと信じています。

そして「一人で悩みを抱えている人」にこそ、来ていただける場にしていきたいなと思っています。最近タグラインを考える機会があったのですが「仲間と学びで、未来を拓く」という言葉に落ち着きました。社内や身近に頼れる人がいなくても、ここに来れば仲間に相談できるし、良書からも学べる場、というイメージです。「自分なんかが行ってもいいのかな」と不安を抱えている方にこそ人事図書館はあるべきと思っていますし、そういった方がまた来たい!と思えるような場になるよう、おかしいくらいこだわってつくっていきます!

2024年3月の開館を目指している人事図書館。2024年1月には利用者の体験を大きく向上させるためのクラウドファンディングを実行予定とのことです。今後については、是非吉田さんのXアカウント(https://x.com/trustyyle?s=20)をチェックしてみて下さい!


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