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ヨモギを大麻ジョイントみたいにした

蓬を中心にブレンドした「スモーキングハーブ」。
いわゆる、煙を楽しむためのハーブをつくってみました。 

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smoggyyomogiで、yomoggy
なんだか可愛げがあって、ヨモギーとよんでいます。 

フレーバーは3種類。
トゥルシーが情緒的な落ち着きをもたらしてくれる「classic」。
ラベンダーが優雅に薫る「aromatic」。
柑橘がほんのりと気分を上げてくれる「citrusy」。

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すこし自分に目を向ける時間をつくりたい。ただ、「丁寧なもの」では物足りない。そんなあなたに、ぴったりなものを作りました。

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※2020年2月時点、法的リスクが大きいため販売休止。

これは、ただ農業に関わってきた学生が、新たな価値を世に打ち出したい、農家の方にお金を回したいとなんでもやってみる精神で作ったものです。

本noteでは、このアイデアを思いついた経緯から企画、デザイン、検証の過程をほぼリアルにお話していきます。

どうぞご笑覧ください。


発端

端緒としては、自治体が後援する6次産業化支援プロジェクトに参加したことでした。6次産業化とは、I次産業(生産)×2次産業(加工)×3次産業(サービス材)に由来します。本件は、学生たちの自由な発想を官民でバックアップしよう!みたいな主旨でした。

この支援の仕組み自体は、長期的なプロジェクトとしてあまり機能しているケースが少ないのが実情です。なぜなら、このような支援は助成金が起点となって始まることが多く、支援が単年度のものが多かったりするために打ち上げ花火で終わってしまうのです。

ので、なんやか捻りたいなーと、以下三点を意識して考えていました。 

生産者にとってリスクのないこと(既存リソースでできること)
新規性があること(背負うものがない学生だからできる斬新さやら)
持続性があること(販売した際の収益性やら)

アイデア出しの段階では「やったらあかんこと」に価値があるのではと畑を観察していました。生えている草をやたらと食んでみたり燃やしてみたりしたんですけど、そこで「火を点したときのヨモギからいい匂いがするぞ..」と気になりはじめ。

あれこれと色んな香りを組合わせて形作ったのが、「吸えるお香」yomoggy。

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その薫香はまるで夜のダウンタウンを漂うヘンプを想起させます。けどトリップすることもないし、なんだかヨモギ蒸しの空間に漂っているあの香りで心身が安らぐというものに。

同時期に、twitterで青井硝子氏の著書「雑草で酔う」がざわざわと議論を呼んでいました。この本では、どの雑草がトリップできるかできないかを青井氏の経験知から紹介しているものです。

トリップ目的から草を燃やしてみたわけじゃなかったので、偶然にもヤバイ世界を開いてしまった...と焦るように。でも、内心は知らない世界を広げたくなる気持ちが強くなっていきました。 

リサーチ

そもそも、タバコのようになにかを嗜む文化がないかどうかを調べてみました。

国内外の動画サイトやweb記事上では、youtuberがおふざけネタの一環としてネギを燃やして吸っていたりしていた一方で、海外ではスモーキングハーブとして十分に認知されていること、一部のコアな界隈がいることを発見しました。うちの動画の一つに、ハーブを燻らせることにはヒーリング効果があると動画主のおすすめブレンドが紹介されていたんですね。

埋め込みでも規制かかるんですね

禁煙のための手段としてスモーキングハーブがいいよ!という本(こちらamazonで購入できます)があったり。ただ、個人の経験知ベースになっているためにあまり参考にはなりませんでしたが..

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巻き戻って、喫煙の歴史について「タバコの日本史」「パッケージのデザイン史」他諸々から調べてみました。

国内では、かつては防遏産業としてのタバコと、海外トレンドとしての輸入タバコが対立していました。時代の移り変わりとともに、日本固有の煙草盆、火鉢は廃れていき、デザイン偏重の輸入タバコが広がっていったそうです。

煙草盆、キセルってかっこいいですよね

喫煙文化は民族的、宗教的な結びつきが強いとされてきました。そのため、各文化圏にて乾燥した植物を焚く行為は儀式的なものとして神聖視されてきた歴史があります。それが現代にアングラな形で残っているものが「スモーキングハーブ」。カルチャー系メディアでは「どの植物に薬効があるのか」をまとめている記事があったりと、市民権を得ていると感じるには十分でした。

しかも、既に海外ではスモーキングハーブとして数ブランド立ち上がっていて、マリファナで酔いたくないときに自分好みに混ぜたりと使用されている模様。例えば、アメリカで展開しているouidだったり、スピリチュアル文脈なAnimaだったり。

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おしゃれなビジュアル

ただ、だいたいこれらはスピ系文脈が多くて「自然に繋がりましょう!」メッセージで効果もきちんと検証されていない(?)ため、界隈のわかってる人たちが買うみたいな流れになっていました。

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各ブランドをマッピングしてみた

科学的な効果の立証ができると、(大通りを歩けはしないけど)製品として胸は張れるだろう。ヨモギ自体は対象とするターゲットに対してどう見えているのかを試さなければ。そこで、既に市場がある海外で実績をつけてから逆輸入する型で広げられないかと思い

検証

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イギリスに飛びました

なぜイギリスなのか。理由はちゃんとあって、①欧州圏でタバコが一番高価のため、自作する手巻きスタイルが根付いている。そのため、スモーキングハーブの既存ユーザーがいるのではないかと仮定 ②CBD含めマリファナ関連市場が盛り上がっている国、プリミティブだけど斬新なものに対して寛容ではないか と考えたためです。友人がちょうどイギリスにいて宿泊先が見つかったことも幸いしました。振り返ると、思考がめちゃくちゃ浅かったことは反省点ですが、スーツケースいっぱいによもぎを抱えて海外に行ったときの高揚感と行動力はいつだって大事にしたいです。

そして、事情にノってくれた友人含め、現地の理解のあるヤングにひたすらよもぎを推す旅となりました。

夜の街を歩き回り、ヘンプな臭いにたむろっている若者に声をかけまくる。

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旅費以上の情報を稼がなければ、この旅に意味はない。

手巻きしているやばそうなお兄さんも、若めのアジア人から葉っぱ(※よもぎ)を持って近づかれたら警戒します。ただ、中には興味を持ってくれる人もいました。

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“ふむ...”

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japanese mogwortsっていうんだね”

このお兄さんは「おれが経験(ヤ)ったブツより美味いじゃねーか!」と絶賛してくれました。よもぎ貿易がはじまろうとしていたのですが、彼から連絡が途絶えてそのままです。元気にしてるだろうか。

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いいやつだったよ

帰国後、yomoggyを興味がありそうな友達に片っ端からメッセージを飛ばし「あのイギリスで話題な..」みたいな文句で配ってみました。

反応してくれた方のうち実際に購入してくれた人に、「喫煙所には行きたくないけど、煙たい雰囲気出したい」欲を抱えている人が多いことに気付きました。彼らはタバコの代替案として、シーシャだったりploomtechが浮かぶけど「もっとパンクさ、ジャンキーさを出したい..」と思っており、yomoggyはのコンセプトがハマった感じです。また、いくつかのハマってくれた友人からセグメンテーション、ターゲッティング、ペルソナ設計を行いました。

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法規制

日本では、JTのみがタバコを売る権利を持っています。たばこ事業法の中で「たばこ産業を守るため」販売量を監視、規制しているんですね。このたばこ事業法っていうのが厄介で、要約すると「タバコの製造・販売はJTのみ」「タバコは、喫煙に供するもの」「原料としてタバコを使ってなくても、タバコ扱い」なんです。ここで出てくる「喫煙」とは、「タバコを喫うこと」と国語辞典で定義されているので、「タバコ=タバコを吸うために供されるもの」となり、はてタバコとは..?となります。

世の中にはグレーな領域があります。ビール製造キット(注:最終工程で要希釈)、高度数ブランデー(注:製菓用)とか、いいのかと思うことがまかり通っているのですが、違法ではないのです。というか規制がおかしいのではという主張を目にするようになりました。上記例に近いどぶろく裁判では「著しく不合理を欠かない範囲では違法ではない」ことを明文化しました。

つまり、たばこ(=喫煙に供するもの)として販売時に提供せず、遠回りなコンテキストで広げるしかないのです。

お披露目

そして、自治体への最終発表会を向かえました。プロのデザイナーさんたち、神戸市職員さん方が見守ってくださる中で「よもぎのお香」としてどこまで受け入れられるのかビクビクしていました。お偉い方々からは総スカンされるも、メンターとして参加してくださっていたデザイナーさん達から『発想面白いしクオリティ高くない??』と言っていただける結果に。ガチ嬉しかったです。

懸念点

ただ、法規制に関して不安は拭えず、「吸えるお香」として販売できるのかと各所に相談しました。弁護士さんは難色を示し、クラウドファンディングサイトには断られてしまいました。 

喫煙用で販売すると僕が捕まってしまいますし、健康被害で訴えられたら懲役一年100万以下の罰金です。

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オダブツです。 

結果、スモーキングハーブとしての製造、販売は泣く泣く終わってしまいました。
事業を起こす者、法を犯すべからず」です。

おわりに

この一連の流れを通して学んだことは大きかったです。

・なにかを立ち上げるために、全体工程を把握する。(PM)
・表(販売)と裏(生産, ロジスティクス)の各工程、工数をおさえる。(PM)
・グレーゾーンを攻めるなら、追い風かどうか見極めが大切。(PM)

おもろいやん!と乗ってくれた大人も、僕より優秀な友人と知恵を捻ってぶつかったことも、よい経験でした。よい人に恵まれていることに感謝です。また、なんでもやってみろ!と背中を押してくださるパトロンの方とも出会えたことも、挫けそうになったときに僕を奮い立たせてくれました。仮に企画が不発に終わっても、法的にダメだったあのときを思い返すと立ち直りやすくなりますし、笑い話にでもなったらいいやと思っています。

また別noteにて、本件で学んだブランディング、マーケティング手法についてどこかでまとめようと思っています。よければスキしていただけると嬉しいです!

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