【製品紹介】藍染め布扇子の製作とその経緯について
染織工藝こと屋の二上、最初の製品として、藍染めの布扇子を作りました。
Abstract -要約-
藍染めの布扇子を作りました。色味は濃淡18色が2本ずつと、柄の入ったものが4本の合計40本です。
基本価格は税込15,400円、柄の入ったものが税込16,500円です。
オンラインストアも製作しましたので、こちらか、二上へのお問い合わせにてご購入いただけます。
https://kotoyafutakami.stores.jp/
写真で一部ご紹介します。
(オンラインショップと同じ画像です。実際の色味とは若干異なる可能性があります。ご了承ください。)
Introduction-背景-
扇子を作ることにした理由として、大きく3点あります。
① ”最初は衣類ではない”があった
自ら製品を作る、と考えたときに、漠然と”衣類ではないな”というものがありました。
何故なら、衣類を本気で製作している人が世の中に沢山いる中で、自分がやるべきは「そうした衣類を染める」立場であり、「自ら衣類を作る」立場ではないと思ったためです。
もちろん、衣類を染めることは試作や受注も含めこれまでもこれからも実施していきますが、「自分から進んで衣類を作る」というのは、そう多くはないと思います。
あるとしたら、エプロンくらいかなと、現時点では考えています。
② ”境界”という概念に興味があった
そもそも私自身が”境界”というものにすごく興味がありました。
元々は「関守石」と呼ばれるものを知ったときに、ただシュロの縄を巻かれた石が置いてあるだけで立ち入り禁止の暗示となることに感激したのがきっかけです。
そこから布の製作に関わるようになって、暖簾をいいなと思うようになりました。それも割れていればくぐるし、割れていなければくぐれない。掛けられていれば開店で、中に仕舞われたら閉店といった言葉がないのに暗示されているものが心地よいと感じたからです。
そんな中、扇子にも同様の役割があることを知りました。
③ 扇子の役割の多様さが面白い
扇子は「仰ぐ」や「飾る」としてはもちろんですが、落語や将棋でも道具として、手足の一部のように使われることもあります。
そしてお茶の稽古では挨拶の際に必ず茶扇子を自分の前に出す。1つの境界の役割をしています。
また、歌舞伎においても唄方の役割を持つ方が、唄うときには必ず扇子を自分の前に置いていました。
もちろん、用途によってサイズや素材等も異なりますが、「扇子」という1つの道具の多様性や役割が自分の中でピンと来たため、扇子を作りたい!という考えが自分の中で固まり、製作することにしました。
Material & Method -材料と手法-
いざ製作するとは言っても、自分1人で作れるものではないし、藍染めの扇子自体は他のいろんな地域や業者さんが実施しています。
徳島や沖縄などの地域や、京都や東京などの扇子の業者さんが既に展開したりクラウドファンディングなども行っており、決して新しいものではありません。
その中で、では自分がどんなものを作るべきか、誰にお願いするか。
① 素材
素材は綿で、金巾(カナキン)と呼ばれるものにしました。
金巾は主に、男性用着物の裏地として使われています。
着物作りの現場に関わってきて、自分も男性用着物を纏うので、縁のあるこの素材にしました。
② 色味・デザイン
既に出ている扇子を調べてみると「真っ黒系」「着物の型染め柄」「グラデーション」「ランダムな絞り模様」に大別されていました。
私が今回扇子を通して大事にしたかったのは「藍染めの色味と、藍染めは、染めの回数を重ねるごとに色が濃くなってグラデーションが出来上がる」ということを大事にしたかったので、無地で、色味の異なる扇子を複数作ることを選択しました。
柄の模様は「抜染」と呼ばれる技法を用いています。これはウィリアムモリスのインディゴ抜染に代表される、産業革命以降成立した比較的新しい技法ですが、科学によって解明されたからこそ生まれた技法でもあり、個人的に好きなので使うことにしました。
③ 扇子の製作加工
扇子の製作は、専門の業者が行う特殊な仕事であるため、小ロットから依頼できる加工先を探さなければいけませんでした。
今回快くお引き受けいただいたのは、東京の「株式会社伊場仙」さんですが
・1本からでも製作可能であったこと
・”江戸扇子”といわれる分野が主であること
・直接お会いした際、「1本でも5本でもいいから、作りたいの作ってみなよ!」と担当の方が仰ってくれたこと
この3点が大きな理由です。
また、他の扇子では藍染めに合わせてメンズっぽく?扇子の骨を黒っぽくしているものも多くありましたが、藍との相性も考えるとそのままの色がいいなと思い、唐木骨でお願いすることにしました。
④ 製作
私の役割はまず「布をしっかり染めること」です。
製作する木綿の布を注文して、濃淡を染め分けていきました。
具体的には、次のことをやりました。
・1つの藍染め液(甕)を使って
・1回染めては洗う
・洗った後に1色分の布を裁断する
・これを1日1回、18日繰り返す
・全部を最後にしっかり洗い、仕上げる
1回染めるたびに布が短くなっていくとお考えください。
柄に関しては、刷毛と筆を用いて、地面や畳と組み合わせて製作しました。
Result & Discussion -結果と議論-
その結果として18色36本の無地扇子と、4本の柄入り扇子が出来上がりました。扇子袋はありませんが、きれいな紙箱に入れてお渡しします。
今後への課題としては、藍の調子次第で色味の変化が出にくいこともあるので、回数の違いによる染まり具合が初見ではわかりにくくなったことが挙げられます。(例えば8回目と10回目の色味の変化など)
次回に向けては、淡色から濃色までを大きく4-5階層くらいで分かりやすくするやり方を検討する必要があるかもしれません。
また、今回扇子加工を依頼した際に加工後の余り布もご返却いただいたことで、どのあたりが扇子の加工範囲になるのかがより明確になりました。
今回はどの部分を切り取ってもいいようなデザインとしましたが、次回以降はその点を意識したデザインの製作が可能になると考えられます。
いずれにせよ、藍の色味は一期一会ですので、その色味を楽しんでいただければと思います。
Conclusion -結論-
あらためて、今回は木綿布を自社で藍染めし、濃淡異なる扇子を40本製作しました。今後は一般販売と共に、卸売での販売や、国富町のふるさと納税返礼品としても提供予定です。
製品概要
製品名:藍染め布扇子
価格:無地 15,400円 柄有り 16,500円 (いずれも税込)
長さ:7寸5分(約22.5cm)
素材:木綿・竹
染色:藍染め
梱包:紙箱
扇子加工:株式会社伊場仙
参考着用画像:
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Acknowledgement - 謝辞 -
今回の扇子製作にあたり、扇子加工のご相談から製作まで、快く応じていただいた株式会社伊場仙様、ご担当のO様に厚く御礼申し上げます。
また、今回の製作にあたり相談へ応じてくれた友人達や、事前の相談から写真撮影まで幅広く協力してくれたパートナーに深謝いたします。
Reference -参考文献-
・他の藍染め扇子関連(一部)
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