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ファットリップ?

サックスの奏法に於いて、一番関心が集まることはアンブシュアだと思います。言うまでもなく、どんなに良い楽器を使ってもアンブシュアが適切に形成されないと良い音は作れません。どのようにアンブシュアを作るべきなのか、初心者からプロまで全てのレベルに於いて研究の対象ですが、

・いろんなアンブシュアがあって、有名ミュージシャンの演奏している写真を見ても皆それぞれ違う
・図解や文章での説明が分かりづらい
・人によって教え方が全然違う

このような理由から、アンブシュアはとにかく謎だらけです。

昨今はインターネットの普及により、文字や動画で様々な人が奏法について解説しており、特にYouTubeでの説明動画は探せばいくらでも出てきます。その中には優良なものもあれば、それはどうかな?と感じるものも雑多に並べられています。動画の良し悪しを結局自己判断するしかありませんが、特に初心者〜中級者にとってはそれはなかなか難しいと思います。

今回とりあげるトピックは、サックスのアンブシュアに関することで、「ファットリップ奏法」と言われるものについて書きます。

「ジャズやポップスを演奏するならファットリップ奏法を身につけないとだめ?」と思っている方がかなり多いと感じます。

まず「ファットリップ奏法」、それに伴い「シンリップ奏法」という対照的な奏法の名称、これは日本独自の言い方です。世界ではそのような呼び名はないのです。日本でしか通用しない名称ということに関しては、これに限らず例えば日常的に和製英語を使うこともありますし個人的には日本で使うことにあまり気にしていません。しかし、かなり多くの人がこの名称からくるイメージに惑わされている、そして無理な奏法をしていると感じることが多々あります。

これからジャズを学びたいという人に「アンブシュアはやっぱりファットリップじゃないとだめでしょうか?」と聞かれることが本当に多いのです。その度に、ジャズ=ファットリップ奏法という固定概念が定着していると感じますし、誤解している人が多いと感じます。

そもそも、ファットリップ(英語の綴りでFat Lip)とは主に、怪我などにより内出血して腫れた唇のことをいいます。ですからファットリップ奏法という言葉は英語圏の国では使われないのです。

やや揚げ足を取るような言い方をすれば、ファットリップという言葉を使う人は、サックスの一般的な吹き方、すなわち下唇を巻いて下の歯にかぶせるという奏法を、ファットリップに対してシンリップと言うことが多いと思います。では唇が元々厚めの人が通常の吹き方をすればシンリップというのでしょうか?

ですから個人的にはこの名称は使いませんし、この奏法をあまり推奨しません。下唇を巻いた方が様々なコントロールができると感じています。

また、「唇の粘膜が見える=唇を歯にかぶせていない」ということでもありません。ここにも大きな誤解があると感じます。唇をびろんと前に出し粘膜が見えても、口腔外から見えない唇の粘膜部を薄く巻くことも可能で、そのように演奏しているプレイヤーもいると思います。(後半で説明します。)

ここまでをまとめると、
・ジャズやポップスを演奏する場合、必ずしも下唇を出した奏法をしなくてもよい。出しても良いが、個人的には推奨しません。下唇を巻く通常の吹き方でジャズの音は出ます。

後半は

・下唇を巻く普通の奏法を推奨する理由
・きれいな音が絶対出ない奏法を試してみる
・参考文献

ということを書きました。ご興味あれば有料記事ですがお読みいただけると幸いです。(続く)

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