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あの人はいま、どうしているか?

あの人はどうしているのだろう?
ときどきそう思うことはないだろうか?
その人と上手く話せなかった昔、だけど、今の自分なら少しは上手く話せる気がする、そんな気がする。

いまだに実家で療養している私だが、夕方ごろ、お風呂にざっぷりつかっていてふと友人を思い出していた。

小学校のころ彼とは友達で、家で遊んだり、学校ではたわいもない会話をしていたと思う。でも私の親友は他にいたし、親しい順位でいくと第5〜6位の友人だった。なので常に一緒にいたというわけでもなかったと思う。どうも記憶がおぼろげなのは長いこと会ってもいないし、誰からも彼の話題が入ってこないから。

一つ強烈に印象に残っているのは、彼の芸術センスだ。
どちらかというと彼は運動が苦手で、線の細い身体をしていた。
だけれど、図工の時間になると彼の書く絵はまわりのどの人よりも上手かったと記憶している。特に、高学年のころに彼が書いた千手観音像はリアリティが高く、今でも感服している。たしか、何かの展示にも出展されたはずだ。

ほどなくして小学校を卒業した私は、地元の中学校ではなく、隣県にある国立中学校に進学した。

あまり意識はしていなかったが、気づけば友人の彼も同じ国立中学校に進学していたのだ。そういえば、ずっと私が通っていた塾に受験日の6ヶ月前くらいから通い始めていたっけ。

それでもクラスはそれぞれ違い、会うことも話すこともなかった。
というより、会うこともできず話すこともできなかったのだ。

というのも彼は学校に来ていなかった。入学してからすぐにだ。
これは風の噂で聞いたことだが、どうやら、何かの病気らしい。血圧がなんとやらで朝が起きられないとも聞いた。

結局、中学校生活の3年間、彼の姿を見ることもなかった。
髪が伸びた彼の姿を卒業アルバムで確認するくらいしかない。
相当、重症だったのかもしれない。
今となっては知る由もない。

明るみがのこる夕方に、お風呂にはいりながらそんなことを思い出していた。

そこから8年くらいだろうか、今、どうしているのか?

その間に、私は学校を休学したり、クローン病という難病を患ってしまったり、少し普通の道からはずれながら、人生という山をぐるぐる彷徨っている。悲観的な気持ちになることもあるし、何とかなるだろうとも思う。

今、彼は働いているのだろうか、それとも絵を描いているのだろうか。

少し道をはずれてみて、少し視線が変わって、今なら上手く彼と話せるような気がする。

そんなことをふと考えていた。

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