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間違った常識!?グレインフリーを正しく理解しよう!前編

どうも、takuです。今回は、当ブログのテーマである『現実的なフード選び』に乗っ取って、ネットやペットショップなどで訴求されているグレインフリーフードについて、よくある謳い文句にツッコミを入れつつ、犬の食事管理を軸とした、現実的なお話をします。長くなるので二回に分けます。よかったら最後までご覧下さい。

◆ 肉食動物と雑食動物のちがい

よく『肉食動物は植物を食べられない』と誤解されますが実際の定義をざっくりまとめると以下の通りです。

肉食動物・・・肉じゃなくても栄養は摂れるが、必須となる栄養成分の一部に肉からしか摂れないものがあるので、肉を食べる必要がある

雑食動物・・・肉を食べなくても、食材の食べ合わせによって必要な栄養成分を摂取できる

そして、犬は身体の特徴こそ肉食っぽいですが、実際は雑食動物にあたりますから、極端な話肉以外からも食べ合わせ次第では必要な栄養が摂れる動物というわけです。

◆ いきなり結論

まず、今回の記事のタイトルにある『間違った常識』ですが、これは『グレインフリーが犬にとって正しい食事』という情報のことです。結論から言うと、グレインフリーの価値はあくまで、数あるフードの中の選択肢のひとつにすぎません。『祖先がオオカミ』とか『肉食に近いから』などの理由から、穀物を使用していないフードであるグレインフリーこそが理想のフードという情報が溢れて常識化してますが、その情報は全くもってナンセンスな知見です。実際は、正しいか正しくないかとは別の、ブランドとしての『理念』や『こだわり』に従った訴求であることがほとんどです。というわけで、ちまたでよく言われているグレインフリーのメリットについて、ツッコミをいれていこうと思います。

◆ もはやオオカミとは別の生き物です。

グレインフリーの訴求としてよく言われていることとして、

『①祖先がオオカミである』

『②歯の構造が肉を食べるための構造』

『③唾液にデンプンの消化酵素であるアミラーゼが含まれていないためデンプンの消化吸収が苦手』

『④植物性タンパク質がより動物性タンパク質のほうが消化しやすい』

というのがあります。この訴求を要約すると、

『犬は穀物の消化吸収が苦手で、肉の消化吸収が得意である』

ということになります。このことを踏まえて、いくつかツッコミを入れます。

・ツッコミ①祖先はオオカミだとしても今は犬です。

犬がオオカミから進化した歴史を見れば、穀物は否定される食材ではありません。なぜなら、犬とは、人間の食生活が狩猟から農耕へ変わっていく環境に身を置いて人間と共生していたことにより、穀物を食べる機会が増え、その穀物が身体を作る上で有効であるがゆえに穀物(デンプン)の消化能力を身につけた動物だからです。オオカミと比べて犬のデンプンの消化能力は約28倍とも言われており、そんな犬が今や700~800もの犬種に分かれています。ここまで多種多様な犬を、一言で『オオカミと同じ』などと言えるはずもないですから、今さらオオカミの食事を与えることが正解と言えるのか?てことです。そもそも、運動量も生活環境も全然違うオオカミと、食事だけを同じにしてどうするんでしょうか。適切な食事とは、食事以外の習慣などの要素との組み合わせによって正解が変わるものです。

・ツッコミ②歯の構造から考察してもしょうがない

歯の構造が肉を食べることに適しているから穀物はダメと言っているサイトがありますが、ドッグフードって、グレインフリーだとしても大きさや食間は肉とは全然違いますよね。ということはその理屈は完全にずれています。ペットフードメーカーが歯の構造からグレインフリーを訴求しているのは、肉食動物に近いことの証拠のひとつとして歯の構造を挙げているだけです。が、今回の記事は『肉食動物に近い=グレインフリーが理想的』とは限らないという記事です。てことで次のツッコミです。

・ツッコミ③アミラーゼは膵液に含まれてます。

先日の記事でもお話したことがありますが、そもそも食性に関係なく、穀物は生では消化できません。私たち人間が米を消化できるのは炊飯しているからで、お粥にすればもっとお腹に優しくなるのと同じく、肉食に近い犬でも水を加え加熱した穀物であれば消化は充分に可能です。犬の唾液にはデンプンの消化酵素であるアミラーゼが含まれていない(もしくは少ない)と言われてますが、実際は膵液に含まれていて充分に消化できるのです。

・ツッコミ④タンパク質はあくまで栄養であり動物でも植物でもない。

タンパク質源が動物性か植物性かなんてどうでもいいです。なぜならドッグフードを食べるということは、食材をそのまま食べるのとは訳が違い、必要な栄養が詰まった『肉でも野菜でも穀物でもない塊』を食べるからです。

タンパク質とは数種類のアミノ酸が連結している構造をしています。その連結を消化酵素で切断し、小腸で吸収され、吸収されたアミノ酸を材料に身体を作るタンパク質ができます。極論ですが、ウシのタンパク質を食べても身体がウシになることがない理由のひとつですね。つまり、食べたタンパク質はそのまま利用される訳ではないので、動物性か植物性かではなく、そのタンパク質を構成しているアミノ酸のバランスが大切ということです。

アミノ酸の種類によってタンパク質の種類が変わります。必ず食事から摂らなければいけないアミノ酸を必須アミノ酸、体内で合成できるアミノ酸を非必須アミノ酸などといいます必須アミノ酸をバランスよく摂れる食材かどうかを100点満点式に表す『アミノ酸スコア』というものがありますが、動物性タンパク質のアミノ酸スコアは100です。対して植物性タンパク質は、食材によってまちまちですが到底100には届きません。スコアが低いタンパク質は、そのタンパク質を構成するアミノ酸の中で最も少ないアミノ酸に合わせた量だけしか、吸収されたあとにタンパク質を合成できないのです。

じゃあやっぱり動物性タンパク質じゃなきゃダメじゃん。

と思われたかも知れませんが、実はそうではなく、人間の食事でいうところの『ご飯と味噌汁』などは、米と大豆の組み合わせによって、単独では足りないアミノ酸を補うことで、必須アミノ酸を一通り摂れるようになっているそうです。和食ってすごいですね。ベッツチョイスジャパンの『HALO ヴィーガン』が、肉を使わずに総合栄養食として成立している理由のひとつがこれですね。

ちなみに、今ではドッグフードの製造技術が向上しており、肉以上に消化吸収が容易な植物性タンパク質を使用したフードもあります。例えば、とうもろこし由来のタンパク質源である『コーングルテン』は、同じタンパク質源である肉よりも消化吸収性に優れています。また、粥状にした米と小麦粉の組み合わせによる化学反応を利用した『超高消化性タンパク』という植物性タンパク質もあります。

◆ 穀物はカサ増しとは限らない

これ以上突っ込んでも終わりが見えないのでそろそろ終わりにして、よく言われている『穀物はカサ増し』という説について説明します。スーパーやコンビニなどでも買えるようなドッグフードに使用されている穀物は、カサ増しとして使用されていることが多いです。それは、穀物は肉と比べて安価なためです。

しかし、専門店にあるプレミアムフードや動物病院などにある療法食の場合は違います。そのようなフードの良し悪しを比較する際には、穀物使用の有無は参考にはなりません。なぜなら、前述のとおり、穀物に手間をかけることで、原材料としては肉よりも高コストとなってしまうものの、それでも肉よりお腹に優しいタンパク質源として使用したり、栄養学的に肉が持つデメリットをカバーするための代替として使用しているブランドもあるからです。つまり、穀物がカサ増しかどうかは、数あるドッグフードを原材料表記だけで目利きしようとしてもわかりませんから、ブランドとしての特徴をしっかりと理解して判断する必要があるということです。

まとめ

とりあえず、前編という事で『グレインフリーが絶対に正しい』という洗脳まがいの販売戦略を否定する記事となりました。ですが、グレインフリーは悪だ!!与えるべきではない!!と言いたいのではありません。むしろ犬の状態に合わせた食事選びをするための選択肢のひとつとしてグレインフリーがあることは喜ばしいことです。ということで、後編では『グレインフリーを与えるべき犬とは』について解説する予定です。よろしくお願いいたします。

今回も長々とお付き合いいただきありがとうございました。お疲れ様でした。

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