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【知っといて損はない】「絶対温度[K]」 の定義、分かる?

 
 今回も単位の歴史について解説していこう。

 紹介するのは、科学の話題でよく見かける温度の単位「絶対温度[K]」についてだ。高校でも習う単位なので知っている人は多いだろう。

 ところが、「その定義は?」 と聞かれてすぐ答えられる人は少ないはずだ。日常生活で温度というと、ほとんど使うのは「セルシウス温度[℃]」 の方でケルビンはめったに使わないからだ。

  ただ、科学の話題になると絶対温度[K]は必ずと言っていいほど現れる。そこで「なんのことかさっぱり、、、」だとせっかく面白い話題なのについていけない。もったいないそれは。
科学は一度分かると興味を引く面白いことが結構あるのでこの機会に覚えてしまおう。

 では早速いくが、「絶対温度」とはひと言で言うと「水の三重点を基にした温度」のことだ。三重点がなんのことがわからないと思うが、ここだけ覚えてしまえば絶対温度の定義は理解できる。

 三重点というのは、物質の気体、液体、固体の状態が同時に存在する温度のことだ。
「そんなことあり得るのか?」と思うかもしれないが、気圧がほぼゼロ近い真空の中だとこうした非日常の現象が起こる。

 もう少し具体的に言うと、水が気圧0.006atm、温度0.01℃の環境下にあると、氷水が氷を浮かべたまま沸騰するという現象が起こる。物理の世界では物質この現象を三重点と呼んでおり、絶対温度は水の三重点を水を基準に0.01℃を273.16Kとして定義されている。
ちなみにケルビンという名称は、この温度スケールを提唱したブリトゥンの物理学者のケルビン卿という人物が由来だ。

 絶対温度には上限はないが、下限は存在する。それが「絶対零度」。ポケモンをやっている方なら聞き馴染みはあるはずだ。

 これは0Kのことであり、セルシウス温度にすると-273.15℃になる。現時点では、自然界にこれより低い温度は存在しないとされている。なので、絶対温度にはマイナスがない。絶対零度の環境下では、理論的にすべての物体の運動は静止するのが共通認識だ。

 じゃあ、「なぜ絶対温度が使われるのか?」。普段僕らが日常で使っている「セルシウス温度℃(摂氏温度)」で定義すればいいじゃないか、と考えたくなる。これにはちゃんと理由があるのだ。

 セルシウス温度を使っていると固体が液体にに変化する温度、液体が気体に変化する温度があるだろう。これはそれぞれ融点、沸点と呼ばれるものだが、これら2つの温度は、実は圧力が変わると変化する性質がある。

 通常、圧力が高い環境下では融点は低く、逆に沸点は高くなる。物理や化学ではいろいろな温度環境のもとで実験を行うので、圧力の影響で物質が変化する温度がコロコロ変わるような指標は非常に使い勝手が悪いのだ。なので圧力に影響されず、どんな温度環境でもマイナスの値を取ることのない絶対温度が使われるわけだ。実際、こちらを使うほうが計算も遥かに楽になる。


 じゃあ最後に、どういう時に使われるのか?という話をして終わろう。
ざっくり言えば、絶対温度は科学計算を行う上ためのものなので主に学術の場面でよく使われるが、具体的に言うと「超伝導」の解明などが挙げられる。

 超電導とはメチャクチャ簡単に言うと、電気抵抗がゼロになる現象のことだ。この状態になると、コイルは発熱なしに大量の電流を流し、超強力な電磁石を作ることができる。 

 超電導は4.2Kという低温下にしか現れないと現時点では認識されている。4.2と聞くとついセルシウス温度と一緒に考えてそこまで高くないと思ってしまうかもしれないが、さっきも行った通り、0Kは-273.15℃なので4.2Kという温度はかなり低い。まず、ほとんどの生物は生きていられないだろう。そのくらいの極寒でしか現れないと言われる現象が超伝導なのだ。したがって、実際に利用する際は細心の注意が払われる。


 主に利用されているのは、医療の分野でも使われる「核磁気共鳴分光法(NMR)」や「核磁気共鳴画像法(MRI)」、さらにJRが進めているリニアモーターカーの浮上方式などだ(まあ、あれ頓挫しそうだけど)。僕も映像で見たことがあるが、低温に冷やされた磁石が板の上で浮いている現象が見られる。何かが浮く現象はやっぱり感動するもので、この感動見たさに研究している人も多いくらいである。
 
 現在ではこの超伝導を低温下だけでなく常温下でも起こすことができないかと研究がされていて、もし実現すれば、電気抵抗ゼロの製品を作り出すことにもつながるということで世界的にも非常に期待されてる。

 日常生活で使うことはあんまりにない単位とはいえ、科学の話題には必ず登場する重要な単位でもある。そのときに「絶対温度は水の三重点を基準に定義されてる。0Kは-273.15℃。これは絶対零度だからケルビンの値はマイナスにならないし、圧力の影響で変化することもない。だから科学の分野ではセルシウス温度じゃなくケルビンのほうが使わんだぜイェ〜〜!!」ということまで説明してみよう。あなたの友達は無事減るだろう。

 まあそれは冗談としても、絶対温度[K(ケルビン)]は「水の三重点を基準にした温度」くらいは何となく覚えておくと、科学の話題もより深く理解できる。

 単位の定義一つ知るだけで科学は面白いほど理解できるようになるので、興味があったら他にも調べてみるといい。

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