見出し画像

つい買わせてしまう「おとり効果」とは?

※この記事は2022年4月6日にstand.fmで放送した内容を文字に起こしたものだ。


突然だが、皆さんはサブスクリプションサービスを利用しているだろうか?
サブスクリプションとは簡単にいうと、「一定の期間に料金を支払うことで、その期間サービスが受け放題になる仕組み」のことだ。一般にサブスクと訳される。
有名なものでいうとNetflixやオンラインサロン、クラウドのストレージ増量などだろう。僕もサブスクサービスはいくつか利用させてもらっている。

サブスクのプランはほとんどが「月額課金」だが、サービスによっては半年までのプランや年間のプランも存在する。特に「Microsoft office365」や「adobe creative cloud」など、PCを使うサービスにはよく見られる。もしくは、期間は固してサービスの内容で料金設定しているサブスクもあったりするだろう。

こういう月額以外にもプランが用意されているようなサービスでは、ユーザーに複数のプランを好きに選ばせているわけだが、その中には時々、「このプラン絶対誰も選ばないだろうな」と思えるプランが用意されていたりする。
ところが、一見無駄にも思えるそのプランが、人の購買行動に大きな影響与えていることがあるのだ。

例を一つ紹介しよう。これは実際の大学で行われたある実験だ。
経営学を専攻する大学生に経済週刊誌を年間購読させた。この雑誌には印刷された冊子媒体と、ウェブ上のデジタル媒体がある。
このとき、実際に購買予約した人が多かったのは次のうちどれだろうか?ただし、金額は年額購読料とする。
①ウェブ購読のみ ¥5900
②冊子購読のみ ¥12500
③冊子とウェブのセット購読 ¥12500

皆さんはどれが一番多かったと思うだろうか?

察しの通り、②を選ぶ人は明らかにいない。②と③は、料金一緒にも関わらず②の方は冊子購読のみなので、選ぶなら当然③にするはずだ。
あとは、ウェブ購読だけでいいのか、それとも冊子とセットで購読したいのかによって意見が分かれるので、実質①と③のどっちを選ぶかということになる。

これは実際に調査が行われれたのだが、この選択肢を用意されると、対象にした学生のなんと84%が選択肢③を選ぶ。圧倒的多数だ。
では、②は本来無駄な選択肢であるから、これを除いて学生に選ばせてもいいはず。なので今度は、①と③をだけを残して改めて学生に選んでもらった。

ところが、この2択だけの場合だと、選択肢を③を選んだ学生は32%に減るという結果が出る。

もう一度言うが、②の冊子購読のみは、③のセット購読の比較すると、選ぶ理由がない。本当に無駄な選択肢だ。
にもかかわらず、無駄であるはずの②を取り除いて学生に選んでもらうと、購買行動に変化が起きてしまう。これは明らかに、無駄であるはずの②の選択肢が人の購買行動に影響を与えているということだ。それ自体は選ばれることはなくとも、存在しているだけで人の選考を変化させる効果を持っている。

心理学では、このような選択肢が人の行動を変える現象のことを「おとり効果」と呼ぶ。

例えばさっきのサブスクの例で言うと、月額¥1,000と年額¥12,000の2種類だけのプランにするより、10ヶ月¥10,000のようなプランを一緒に挟む方が年額プランを選ぶ人の割合は増える。
他にも、レストランのメニューで普通カレー¥1,000と特製カレー¥1,500の2種類だけにするより、カレー¥1,000、特製カレー¥1,500、極上カレー¥3,000と、あえて誰も選ばなそうな選択肢をもう一つ用意する方が、特製カレーを選ぶ人の数は増える。

なにか使って欲しいサービスがある場合は、こうした「おとり効果」を利用してみると、売り上げの増大につながるかもしれない。

参考文献: 自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80 (ブルーバックス)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?