【第89話】小さなこと
先日、売店へ向かって歩いていると、つま先が地面に引っかかってつまずいてしまいました。手足のしびれでつま先の感覚が麻痺しているので、気を付けて歩いていないと、こういうことが起こります。
ギリギリ転倒はしなかったものの、「何も無い平坦な廊下で、おれはなんで転びそうになるんだ」とネガティブな感情が一気に溢れてきて、イライラしながら、さらにスピードを落として歩き始めました。
ちょうどその時、後ろからガラガラガラと、看護師さんに押されるベッドが、近づいてきます。
そのベッドには、中学生くらいの男の子が横になっていました。上一点を見つめ、呼吸を補助するためか、鼻と口には管が通されています。そんな彼を見ながら、看護師さんとベッドの側を歩くお母さんがこんな話をしていました。
「今日は指がいっぱい動いていて、機嫌が良さそうですねー!」
「ホント、最近は右手がよく動くんですよー!」
その会話を聞いた僕は、たかがつまずいただけで1人ネガティブな感情になっていたことが、急に恥ずかしくなりました。
手足のしびれは、治療中の対策やこれからのリハビリで改善が見込めます。僕の悩みは、本当に小さなことでした。
すごいタイミングでそのことを教えてくれた、名前も知らない少年に感謝しながら、僕は売店までしっかりと歩いたのです。
0.1まで下がっていた白血球の数値が少しずつ上がってきました。この白血球も、前回の記事をお読みいただいた方が、「0.01の状態で1週間過ごした」とご自身の経験を教えてくださいました。
僕は、白血球の数値がそんなに下がることさえ知りませんでした。僕の悩みは小さなこと。そう思うだけで、気持ちが楽になります。皆さまもぜひ!
2024.3.25
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